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旧 リック&レイド  作者: アール・ワイ・オー
第一章 シュヴァリエ聖騎士国 十騎士偏
15/24

グリンペレー到着


ライラは自分の屋敷で外の様子を眺めていた。


ここグリンペレーは神樹ゴッドツリーがある事で有名な町だ。


シュヴァリエの更にその先の海を越えた場所にある魔界。

そこから発生する高密度の魔素は瘴気と呼ばれ、人体に悪影響を与える。

その瘴気は海を越え、シュヴァリエやリンドベルンのあるこのアルグラン大陸にまで影響を及ぼす程の物であった。


だが、ゴッドツリーには不安定の魔素を吸収し、空気中の魔素を安定させる性質がある。

故にこの大陸に住む人々は、ゴッドツリーのおかげでこの地に住むことが出来ていると言っても過言ではない。


魔素を安定させる以外にも、その葉は病の特効薬になったり、モンスターが嫌う波長の魔力を分泌するなど様々な面で人々を守っている。


しかしここ数年、そのゴッドツリーの様子がおかしかった。


幹から枝、その葉の先まで神々しく黄金の光を放っていたゴッドツリーだったが、その光が徐々に弱々しくなっていったのだ。


光が弱くなった後、最初に起きた変化はモンスター達の凶暴化だった。

五年前起きた人々と、モンスターを率いた魔族の戦争、人魔戦争の折魔王が倒された事により、魔族に使役されていたモンスター達の大半は狩られ、その数を減らした。

生き残ったモンスター達も魔族の影響が無くなった事により戦争時に比べれば大人しくなり、ここアルグラン大陸ではゴッドツリーにより弱体化する為殆ど問題視されていなかった。

しかしゴッドツリーの輝きが弱まり始めたこの数年、モンスター達による被害が増加し始めていた。


それだけではなく、魔界の一番近くに位置するシュヴァリエの人々が瘴気の影響を受け始めた。


濃い魔素を取り込むと体内の魔力のバランスが崩れ、並の人間では最悪魔力が暴走し、死に至る場合すらある。


十騎士であるライラ・オルスト・アウルニッヒは、土属性と水属性を使い自ら編み出した魔法、植物魔法を得意とする。


この魔法は土属性と水属性、両方のバランスを崩さない様に魔力をコントロールしつつも同時に扱う技術があり、尚且つ性質を変化させる繊細な技術がなければ使う事が出来ない。


その上、同じ水と土の両属性が使えたとしても、人によって魔力の性質が異なるため植物属性に適した魔力を持つ者は限りなく少ない。その為この世界で植物魔法を扱えるのはライラだけだとされている。


ライラはシュヴァリエの十騎士の一人だが、植物魔法によりゴッドツリーの調子を安定させる為、年中グリンペレーに居るのだった。


元々ゴッドツリーの管理を任されていたライラは、人魔戦争以前からここグリンペレーに居を構えてはいたが年中身動きが取れないと言う事はなかった。

それがここ数年は離れる事が出来ず、シュヴァリエにすら戻る事が出来ていなかった。


ライラはここ数年のゴッドツリーに付きっきりの業務で疲れが溜まったのか顔に疲労の様子が出ていた。


彼は机の上のグラスにワインを少しだけ注ぐと、一口だけ口に含み味わう様に飲んだ。

暫くし、ワインを飲み干すと椅子に座り瞳を閉じた。

そして昨日起きた出来事を振り返り、如何したものかと思案を巡らすのだった。






グリンペレーに着くとシェリアは昔の事を思い出し、少しの間感傷に浸っていた。


「懐かしいな。かれこれ10年ぶりくらいになるのだな。思えば青春時代の殆どはここで過ごしたのだった。辛い事も沢山あったが楽しい日々だったと今なら思える」


「そう言えばここは、シェリアが騎士を目指し修行した場所なのでしたね」


シェリアが独り言を呟いていると、リリアラが思い出した様にシェリアの言葉に反応したのだった。


「ええ、私の剣の師匠は父やシュヴァリエ騎士団四番隊副隊長であるネービス殿なのですが、魔法は全てライラ様に教わった様な物ですから」


シェリアがそう言い終えると同時に後ろから何者かに肩を叩かれた。


シェリアが振り向くとそこには今正に話に出てきたネービスの姿があった。

縦長の顔に深い皺がいくつか刻み込まれており髪は白髪が入り混じった単発の赤髪、そして見るものを驚かせるであろう高身長に鍛え上げられたがっしりとした体、 彼は見るからに百戦錬磨の騎士と解る風貌をしていた。

シェリアの記憶より少し老けて見えたがその覇気は衰えてはいない様だった。


「やはりシェリアお嬢ではないか! 」


ネービスは心底驚いたという顔をしていた。


「お嬢がこの町を出て以来だから10年ぶり位になるな。最後に見た時より別嬪になっていたから直ぐにお嬢だとわからんかったわ!」


ワハハハハハ、と大きな声で笑うネービス。


シェリアは10年振りに会ったネービスに昔とちっとも変わってないと思った。


「ネービス殿!お嬢は辞めてくれと昔から言っているではないか!」


「お嬢はお嬢なんだから仕方ないであろう。・・・しかしこんな所で一体なにをしておいでで?お嬢は巫女であるリリアラ様の護衛騎士になった筈だろう?ん?そこに居られるのは、まさかリリアラ様!?それにそちらはレムネリア様の御息女であられるラムネーゼ様ではありませんか?!お嬢これは一体どういう事なので?」


ネービスはシェリアにまくしたてる様に質問をぶつけてきた。


「ネービス殿一旦落ち着いて欲しい。聞きたい事があるのは解るのだが、私達をライラ様の下にお連れしていただきたいのだ。その時に全て話そう。本当は再会を喜びあいたい所なのだが、貴方の言う通り私達は本来ここに居る筈のない人間、その事から後の事については察する事ができるだろう」


シェリアがそう言うとネービスは苦虫を噛み潰した様な顔になった。


「どうやらただ事ではなさそうだな。昨日の事と言いシュヴァリエで今何が起きてておるんだ? 」


ネービスは溜息を吐いた。


「昨日の事?此方でも何かあったのか? 」


シェリアはネービスの言葉に疑問を投げかけた。


「そうだなぁ。どちらにせよお嬢達の話も聞かなきゃならん。どうせ話をするのならライラ様が現在居られる屋敷に着いた後にしよう。では案内するから着いてきてくれ。そちらのお連れさん達も御一緒で? 」


ネービスがそう言うとシェリアは頷きお願いする、と一言だけ言い頭を下げた。



屋敷へ向かう道中カシムは疲れ果て眠ってしまったラムネーゼを背負い、シェリアはリリアラの手を握っていた。


リリアラは気丈に振る舞ってはいたがやはり彼女も最悪の未来に恐怖を感じていたのだ。

ここグリンペレーに着いてからその恐怖心は強くなっていた。

もしライラに助けを求め、万が一にでもライラが騎士王やデスサイス側に下っていたとしたらという不安がその恐怖心に拍車を掛けたのだ。


リリアラはそんな自分の気持ちを察して、安心させようと手を握ってくれたシェリアの温もりを感じ、心が少し楽になったような気がしたのだった。


「リリアラ様大丈夫です。ライラ様ならきっと力になってくれる筈です」


「そうですね。少しネガティヴに考えすぎていました。シェリアには助けられてばかりですね。いつも私の為にありがとうシェリア」


リリアラがそう言うとシェリアは「それが我が使命ですから」と言いながら耳を赤くさせ俯いた。


リリアラは「シェリアって昔から本当に褒められるのは慣れていないですね」と小さく呟いた。







一行がライラの居る屋敷を目指して歩いて最中、リックがネービスに尋ねた。


「ネービスさんに聞きたい事があるんだが少しいいか?」


「どの様な内容かは解らんが答えられる範囲ならば答えよう」


「ネービスさん達ライラ率いる十番隊は話に聞く限りここ数年はグリンペレーを離れていないって事であってるよな?」


「その通り。我等はこのグリンペレーから動いてはいない。それがどうかしたのか? 」


リックはそれを聞くとうーんと唸り少し考えた後口を開いた。


「なら聞いても無駄かもしれないな。・・・いや、やっぱり一応聞いてみるか。十騎士の一人、アルセリオスが今何処で何をしているか知ってたりするかい?あいつは俺の友人なんだけど半年程前にこの手紙がきて以来音信不通なんだよ」


そう言いネービスに手紙を渡す。

ネービスは手紙を読み始めると難しい顔をしながらこれは「間違いなく十騎士の印。だとするとやはり・・・」と呟くと手紙をリックにかえした。


「この話なんだがどうやら先程儂が言っていた昨日の件と関連がありそうだ。この話もライラ様にする必要があるな。この先の話も屋敷に着いた後でするとしよう」


ネービスはそう言うと少し歩く速度を上げ屋敷を目指し始めた。



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