アルセリオスの手紙
リックは五年前、共に戦った戦友の事を思い浮かべながら夜空に輝く星々を見上げていた。
その手には一通の手紙が握られており、この手紙こそが彼等がシュヴァリエに向かう事になった原因だった。
送り主は現十騎士であり、リックの友でもあるアルセリオスであった。
手紙は今から半年程前、まだリック達がこの大陸に着いて間もない頃に届いた物だった。
内容はシュヴァリエに近づくな、という奇妙な上に最後に暫く返事を返すなと不審な事が書かれていた。
手紙には事が落ち着き次第こちらから手紙を出すとも書かれていた。
リックはアルセリオスに何かあったのではないかと心配になった。
しかし彼はシュヴァリエ最強の称号、十騎士を背負う男。
その上過去、共に戦った中だからこそ、その強さを知っていたリックは彼の返事を待つ事にした。
しかし半年経過しても手紙が来る事はなかった。
元々大陸全土を周るつもりをしていた事もあり、リンドベルンへ来たついでに少しだけでも様子を見ようと、リックはレイドとルナに手紙の事とシュヴァリエへ向かいたい事を伝えた。
そしてリンドベルンを出、シュヴァリエへ入ろうとした時、リリアラ達巫女一行と騎士達の騒動を見かけ今に至るのであった。
リックはシェリアから聞いた情報を整理しながら今シュヴァリエで起きている事態について考えていた。
十騎士であるデスサイスが魔力の乏しい人々から魔力を奪っている事、そしてそれに騎士王が少なからずとも関わっている事。
それだけではなく目的は不明だが巫女の身柄を拘束しようという動きがあり、先代巫女であるレムネリアを連れ去った事からこの事柄についてもデスサイスが関わっている事は明白だった。
今の情報でわかった事は騎士王とデスサイスが何らかの目的の為に暗躍し、王やデスサイスの所業を知らないであろう騎士達は、王命により従い動いているという事だった。
リックはアルセリオスが何らかの形でこの事件に関わっており、それによって身動きが取れないのかもしれないと思った。
リックの知るアルセリオスという男は不正や悪の所業を見過ごせない人間であった。
アルセリオスが騎士王やデスサイスが行なっているであろう事に気付けば放っておく訳がなかった。
シェリアやカシムにアルセリオスの事を聞いたが、二人共アルセリオスは極秘任務を受けているという事しか知らず詳細も分からないという事だった。
アルセリオスの行方が分からないというのもあって彼等は国外にいるライラに助けを求める事にしたそうだ。
考えても埒が明かないと、リックは思考するのを辞めた。
グリンペレーへ向かいライラに出会い話をしてからでも遅くはないと思い、リックはテントの中へ戻って行った。
翌日、 一行はグリンペレーの一つ手前の町までやって来ていた。
ここフローリアは花の町とも呼ばれ、町中が花に包まれおり町の端には湖がある彩り豊かなリンドベルンの有名な観光名所の一つでもある。
レイドは町に入るなり姿を暗ませ、リックは食材を調達すると言い、商店街の方へ駆けて行った。
残されたルナ達は宿をとった後折角なので、と湖の辺りまでやって来ていた。
「ラムちゃん、良いもの作ってあげるから少し待っててね」
ルナはそう言うと辺りの花をいくつか摘み取り始めた。
摘み取った花を編み始め暫くした後、色鮮やかな花の髪飾りが完成した。
それをラムネーゼの頭に乗せてあげる。
「わぁ!可愛いです!ルナお姉ちゃんありがとうなのです。どうですお姉さま、似合っていますか? 」
目を輝かせてラムネーゼがルナにお礼をした後リリアラにそう聞いた。
「ええ、良く似合ってますよ!」
リリアラがそう言うとラムネーゼは心から嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
その様子を見ていたシェリアは感心していた。
「器用な物だな。私は生まれた時から騎士の家系という事もあり剣しか握ってこなかった。その為女子らしい事は苦手で、特にこういう細かい事は苦手なのだ」
「人はそれぞれ得意不得意があって当たり前だから落ち込む必要ないよ!それにシェリアさんは女性なのに私と違い剣を振るい戦えるじゃない。私はリリアラちゃんを守ろうとするシェリアさんは格好良いと思うな」
シェリアは不意に褒められ、褒められる事に慣れていないのか顔を赤くして「むぅ」と言いながら俯いた。
「シェリアは昔から不器用だからな」
カシムはそう言うと、ルナと同じ様に花を編みあっという間に腕輪を作り上げてしまった。
「カシム凄い! 」
それを見ていたラムネーゼに褒められカシムはとても嬉しそうにしていた。
「カシムさんって器用なんだね」
ルナはカシムとシェリアはいろんな意味で対象的だなぁ、と心で呟いた。
その頃レイドは薬草や毒草を購入する為やって来ていた店で値切りの交渉をしていた。
「もう少し安くならないか? 」
無表情の上、感情が読み取れない声で問いかけてくるレイドに店主は耐え兼ね等々やり取りの末半額にしてしまう。
しかし、この為にいつもルナの買い物に付き合わされる事を思い出し素直に喜べないレイドであった。
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