シュヴァリエの闇
レイド達一行が草原を後にしようとしている時騎士達もまた撤退しようとしていた。
指揮を取っていた副隊長二名が倒れた以上これ以上の戦闘は不可能と判断しレイド達を追う事は出来ないと諦めたのだった。
国境の谷へ着いたレイド一行はこの谷に流れる川の上流にある村へとやって来た。
この村にも小さいがきちんとした宿がありそこの一室でベッドにカシムを寝かし一行は腰を落ち着けていた。
「一体今この国で何が起きているんだ?」
リックはリリアラ達三人を見、尋ねた。
「それについては私が話そう」
壁にもたれかかりまだ少し辛そうにしているシェリアが答えた。
「まずここに居られるリリアラ様とラムネーゼ様について話しをしておこう。このお二人はシュヴァリエに取って無くてはならない存在光の四巫女なのだ」
「四巫女って言うとシュヴァリエ東西南北に結界を張りシュヴァリエを守るというあの四巫女か!?」
リックは驚き声をあげる。
「ああその四巫女であっている。私とそこに寝ているカシムはリリアラ様とラムネーゼ様を守る巫女御付きの護衛騎士なのだ」
リックは驚きの表情を直そうとせずとぼけた顔をしたまま話を聞いていた。レイドは目を瞑り静かに聞き入り、ルナは何の事かさっぱりわからないという表情をしていた。
「この国に異変が起きたのは半年前の事だ。
理由は不明だったが騎士王様が、一定以下の魔力しか持たないものを王命で徴集したのだ。
極秘の仕事をさせるという事で集められたもの達は外部と一切の接触を禁じられた。
その事に民衆は皆疑問に思ったが、騎士王様のこれまでの実績と人徳で得た信頼が皆を深くは考えさせなかった。
そこから事が動いたのは今から一ヶ月前の事だった。
騎士王様に呼ばれ私とリリアラ様は王城にやって来ていた。
呼ばれた内容は暫くの間王城に居てくれとの事だった。
結界を張る役目は暫くしなくていいと言う内容に私も流石に不審に思ったが、巫女の負担を減らす技術を開発しているからその為だと言われ私はリリアラ様達の負担が減るならと納得したのだ。
リリアラ様も役目を放棄すると言う事に直ぐには頷けないで居られたが、王命である以上反発できない上自分達の為だと言う騎士王様のお心を無下に出来ず、私達は暫く王城で暮らす事になったのだ」
リリアラは何かを思い出したのか辛そうに話を聞いていた。
「謁見の後私達は先に来られていた、南の巫女様レイチェル様と西の巫女のルルリーゼ様に出会った。巫女様達は結界を張る職務上、年中持ち場である神殿から離れる事ができない。
なのでこの時の様に揃うことも滅多に無いのだ。巫女様達は皆久々の出会いで色々話に花をさかされていた。
するとルルリーゼ様が王城なんて滅多に来れないのだから皆で散歩しようと仰られたのだ。
こうして私達は散歩する事になり、色々と王城を散策していたのだがここで事件が起きたのだ。
現四巫女の中でも最も神聖魔法の力が強いレイチェル様が庭園の付近から何か強い負のエネルギーを感じると仰られたのだ。
そして私達はレイチェル様の誘導の元最も負のエネルギーが強いとされる所まで行った。
そこには大きな騎士の像が建てられており、それ以外は特にこれといったものはなかったのだがレイチェル様は、その騎士の像の下から負のエネルギーが溢れ出していると仰った。
リリアラ様とルルリーゼ様も近くに来たお陰か確かに感じると仰られ、私と他二人の巫女様を守る護衛騎士で像を動かす事にしたのだ。
そして騎士像を動かした私達が見たものは地下へ続く階段だった」
シェリアは深呼吸をし続けた。
「降りた先は壁に設置された蝋燭によりほんのりと明るく、物凄く広い空間が広がっており鯖の匂いと何やら酷い異臭が立ち込めていた。
進むと呻き声の様な物が聞こえ、私達は声のする方へとむかった。
そこには鎖に繋がれ魔道具により魔力を吸われる人々の姿があった。
辺りには白骨化した遺体や干からび骨と皮だけになった物も沢山あり、余りの光景に私はそれが現実か夢か区別すらつかなくなっていた。
リリアラ様は凍りつきレイチェル様とルルリーゼ様も嘔吐を堪えるので精一杯の様だった。
直ぐ様まだ生きている人達の救出をしたかったが此処は危険だと私の本能がいっていた。
他の二人の護衛騎士達もそう思ったのか、巫女様をこんな所には居させる訳にはいかないと思い脱出を試みた。
しかし出口の手前で思わぬ人物が現れた所為で脱出は簡単なものではなくなってしまった。
その人物はこの国の騎士達の頂点であり憧れでもある十騎士の内の一人首狩りのデスサイスだった」
「おいおい此処で十騎士が出てくるのかよ」
リックは頭が痛いとばかりに額を押さえた。
「そうだ。本来この国を守る最強戦力であるはずの十騎士がこの陰惨な事件に少しでも関わっていると言う事が私達に動揺を与えた。出来れば私達と同じ様に偶然この場所を発見したと思いたかったけど彼の態度を見ればそうじゃ無いとわかった。彼は言った。この場所を見られたからには唯で帰す訳にはいかないと。私は絶望した。幾ら巫女様の護衛騎士とはいえ十騎士は実力の桁が違う。彼はその名前の由来にもなっている神器デスサイスを振りかざし攻撃して来た。しかし巫女様達が結界を張りその攻撃はしのぐ事が出来た。だがデスサイスは神聖魔法を打ち破る魔道具を持ち出してきたのだ!しかし巫女様達達は諦めず立ち向かった。だか魔道具の効果で結界が破られその時の攻撃でルルリーゼ様とレイチェル様はお怪我を負ってしまわれた。こうして絶対絶命の窮地を迎えた時ルルリーゼ様とレイチェル様が私とリリアラ様にこう言ったのだ。私達が全力で結界を張りデスサイスを閉じ込める。その間に貴方達は逃げなさいと。怪我を負った自分たちでは逃げれたとしても直ぐに捕まってしまう、だから無傷のリリアラ様に逃げろと仰られたのだ。それを聞いていたルルリーゼ様とレイチェル様の護衛騎士達も自分達は巫女様を守る為に存在している。だから役に立たないとわかっていても最後まで盾になる使命があると言い、残るという意思を示したのだ」
シェリアは涙を必死に堪えながら話を続けた。
「そうして私とリリアラ様は地下から脱出し地上へ抜け出る事が出来た。私達は城を出る為城門へ向かった。するとカシムとラムネーゼ様が騎士と揉めている姿を見かけた。私はリリアラ様を一刻も早く安全な場所へお連れしたかったから見ぬふりをし通り過ぎようとした。しかしリリアラ様が少しの時間でいいから何があったのか聞きましょうと仰られたのでカシムに声をかけ話をする事にした。事情は伏せたが一刻も早く城を出なければいけない事を伝えるとカシムは何かを察してくれたのか一緒に城を出てくれると言ってくれた。城を抜け城下町に出て来た私達は人混みに紛れながら話をした。カシムとラムネーゼ様はデスサイスに用があり彼に会う為に色々としていたと言う事だった。私達が見かけた時頼み込んでいたのは騎士王様にもお願いしたが断られたのだけれど、どうしても会う必要があった為デスサイス直属の部下であるあの騎士にお願いしていた所だったらしいのだ。何故彼に会う必要があるかのかと問うと返ってきたのはラムネーゼ様のお母様、先代の北の巫女様であられたレムネリア様を連れ去ったのだと言う衝撃の内容だった。しかし私達もデスサイスの行いをこの目にしている為普段では信じられないこの内容も直ぐに信じる事ができた。その話を聞いた後私達は何故逃げる様に王城を出たのか理由を説明した。カシムとラムネーゼ様もレムネリア様を連れ去ったというデスサイスの事は信用していなかった為私達の話も直ぐに信じてくれた。そうして私達は王都を出る事を決め四人で隣国リンドベルンに居られる十騎士の一人ライラ様に助けを求める事にしたのだ。そうして私達は騎士達に指名手配されながら半月以上かけて漸く此処まで辿り着けたという事だ。これが私達の知るこの国で起きている事の全てだ」
シェリアは言い終えるとリックを見つめ再び口を開いた。
「今度はこちらが問うてもいいか?」
リックは静かに頷いた
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