逃避行
つたない文章ですが、楽しんでいただければ嬉しいです。
少女は森の中を走っていた。
その表情は険しく、余裕が全く無い。
暫くして少女が森を抜けた後、後ろから一人の女性が同じように森から抜け出してきた。
その女性は鎧に身を包み、剣を帯刀していた。
「リリアラ様ご無事ですか?! 」
女性の問いに少女リリアラは荒れた息を整え、汗を拭いながら答えた。
「ええ、何とか襲撃もされず無事に森を出れました。シェリア、あなたのお陰よ」
「ご無事で何よりです。追手もここまでは来ていないようなので、予定通り国境付近のカシカ村まで行きましょう。既にカシムとラムネーゼ様は村に到着している筈ですので」
シェリアと呼ばれた騎士風の女性はそう言うと辺りを警戒し、不審な物が無いと判断すると歩き始めた。その後をリリアラも付いて行く。
暫く時がたち、空が赤く染まってきた頃リリアラとシェリアはカシカ村に到着した。
「道中、モンスターも出ず追手も付いてきている様子もなかったので早く村に着く事ができましたね」
シェリアは深く息を吐くとそう言った。
「そうですね。ラム達も無事だといいのですが」
リリアラがそう言い終えるのとほぼ同時に村の方から声が聞こえてきた。
「リリアラ様~シェリア~」
声がした方からシェリアと同じような格好をした青年が二人の下にやってきた。
「二人とも無事な様でよかったです。追手は上手く捲けたようですね」
「カシム貴方も無事で何よりです。貴方の様子を見るにラムも無事な様ですね」
「ええ、ラムネーゼ様もご無事ですよ。今は村の中に居られるので案内しましょう」
カシムは二人を連れて村に入り一軒の宿まで案内した。
リリアラが案内された部屋に入ると小さな影が飛び込んできた。
「リリアラお姉さま~会いたかったのです~っ」
リリアラに飛びついてきた少女は、涙目でそういった。
その少女はリリアラよりも幼く齢12才位であった。
リリアラはあやす様に少女の頭を撫でながら言った。
「私もラムに会いたかったですよ」
リリアラが笑顔でそう言うと、少女もはにかんだ笑顔になった。
日が完全に沈み、辺りが夜の闇に支配された頃、カシカ村の宿の一室に三つの人影があった。
「なんとかここまでは無事に辿り着けましたがこの先どうしていくかですね」
最初に三人の内の一人カシムが口を開いた。
「当初の予定通りこのまま国境を抜けリンドベルンへ入るのが一番いいだろう。あそこにはライラ様が居られる。あの方に事情を説明し、協力してもらうのが一番いいだろう」
シェリアがそういうと苦々しげにカシムが答えた。
「・・・・・・俺もそう思ったがそう上手くいくとは思えないんだ。我々がライラ様に助けを請う事など相手もお見通しだろうし、追手もこのまま何もしてこないなんて事もないだろう。それにラムネーゼ様はまだ幼い。ここまでは何とか来られたがこの先道がさらに険しくなる。気丈に振舞っては居られるが相当疲労が溜まっている事は側めで見ていて分かる」
「だからと言ってこのまま何もしないのでは、それこそ捕まえてくれと言っているようなもの! 明日にはここを立たなければ追手に捕まるのは確実だ! 」
「シェリア落ち着いて下さい。ここで言い争っても何の解決にもなりません。カシムの言う事も分かりますけど行動しなければ捕まるのも事実です。ラムにも辛い思いをさせる事になると思います。ですがあの子は強い子です。何より自分の所為で私達の足を止める事になどなれば自分を責めるでしょう。私達は歩みを止める事はできませんけど考え無しに現状を打開する事も難しい、なので今日はゆっくり休み明日リンドベルンを目指しながら対策は考えましょう。休む時間も次いつ取れるか分からないんですから」
リリアラはそう言うとラムネーゼが眠る向かいの部屋へ戻っていった。
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