例え、歪んだ愛だとしても
やっと投稿に慣れてきました、四作目です。
よろしくお願いします。
『好き』
そう伝えたら、きっとこの関係も崩れてしまうのだろう。
突然だが、私には親がいない。
私が生まれてすぐ、両親は事故で死んでしまい、私は両親の友達夫婦により育てられた。
その親の友人、言いにくいから、お父さん、お母さんと呼んでいるが。
そのお父さん達には、私と同い年の子供がいる。
東雲 柚。いわゆる、幼馴染みってやつだ。
育ててくれたお母さんも死んでしまい、最近はお父さんも家に帰ってきていないので、私はほとんど、柚と同居のような状態になっている。
そう悪いものでもない。
お互いに頼り、支えあう関係。
ただ、一つだけ問題がある。
いや、そんな大した問題ではないのだが。
柚が、私に依存、というか、少しばかり歪んだ愛情を注いでくることと、
その、なんというか、私がそんな歪んだ柚の事が好きだという、誰にも言えない問題が。
「萌、学校行くぞ?」
「待って、すぐ行く!」
今日も何時ものやりとりが始まる。
毎日恒例の、二人で話しながらの登校。
「柚、今日は何食べたい?」
夕飯の話、今日の授業の話。
そんな在り来たりなことを話しながら学校まで行くんだ。
校門についたら、今年は柚とクラスが離れてしまったから、ここでお別れ。
「じゃあね、柚。また放課後。」
「今日も他の男と話すんじゃねぇぞ、萌。」
ああ、まただ。
最近ますます増えてきた、柚からの歪んだ愛情の言葉。
そんなものも嬉しく感じてしまう私がいて。
「その歪んだ愛情、いい加減私以外の誰かに向けてよね。」
でもそれを隠すように、私は憎まれ口をきく。
それでも余裕綽々に笑って、お前だけにだよ、なんて言ってくる柚の事が、私はきっとどうしようもなく好きなんだろう。
放課後。
柚の言った通りに、今日も男子とは話をしなかった。
いや、別に柚に言われたからって訳じゃない。
私自身が、柚以外の人と話したくなかっただけ。
「これってまるで付き合ってるみたいだな。」
二人だけの帰り道。
急に柚がそう言った。
跳ね上がる私の鼓動、でも平静を装って、ほんの少し勇気を出して言ってみた。
「みたい、じゃなくて、付き合ってるの。」
私の精一杯の好意。
辺りを漂う少しの沈黙。
柚は笑いながら、そっか、なんて。
「でも、あんま束縛すると、私浮気するかもよ?」
相手の反応が知りたくて、そう悪戯気に言ってみれば、柚は予想以上の回答をしてきた。
「まぁ、その時は。」
「お前が俺の事好きなうちに殺してやるよ。」
さらりと吐かれたその言葉に、目を見開く。
そんな私を、柚は面白そうに笑いながら言った。
「だから、萌は俺の事だけ好きでいればいいんだよ。」
なんて、柚らしい言葉。
じわり、と頬が熱くなるのを感じ、隠すように顔を背ける。
「ほんと、柚って歪んでる。」
呆れたようにため息をついてそう言えば、笑いながら、知ってる、なんて。
まあ、そんな歪んだ言葉で喜んで照れてしまっている私も歪んでるんだろうけど。
「なら、ずっと離したりしないでよね。」
「当たり前。」
こんな関係も、悪くはない。
お互いに依存して、確かめ合って、捕まえ合って。
ずっとずっと、寄り添って生きていくんだ。
例え、それが歪んだ愛だとしても。
ありがとうございました