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決着!合コンラリー/温子の才能

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 合コンラリーにエントリーしているのは、先の西東京国際大学のほかに、男性グループが天保大学、大洋商事、明星出版社の4グループ。

女性グループが、仁智大学、大正女子大学、武蔵野音楽大学、泉陽女子大学の4グループだ。

太陽商事と明星出版社は、いずれも、一部上場企業だ。

 温子は、このうち、明星出版社、天保大学、泉陽女子大学の面接を受け持つことにした。

太陽商事、武蔵野音楽大学を涼子が、仁智大学と大正女子大学を孝太と涼子で担当することになった。

太陽商事と、明星出版社は一流企業で、参加メンバーは、将来の幹部候補だということもあり、前回の合コンラリーでも、優勝を争っている。

僅差で優勝したのは、明星出版社だった。

今回も、優総候補の筆頭に挙げられている。

 第1ラウンドの、組み合わせと会場の発表は、一週間後だった。

孝太たちは、三日で、各グループの参加メンバーの面接を済ませ、データを温子に渡した。

温子は、残りの四日で参加メンバーのデータをもとに、第1ラウンドの組み合わせと会場を選ばなければならなかった。

温子のファイルを見ながら、孝太と涼子もアイディアを出したりして、手伝った。

ようやく発表の前日に、すべての組み合わせと、会場をマッチメイクすることができた。

 第1ラウンドは、7月1日。

組み合わせは、第一会場が西東京国際大学―泉陽女子大学でステージは“ウエストコースト”のパーティールーム。

温子が、最初にプロジェクトリーダーを任された時に、使った店だ。

第二会場は、天保大学―武蔵野音楽大学で、ステージは“F&N”のヴィップルーム。

そして、第三会場が、太陽商事―大正女子大学で、ステージは“東王ホテル”の展望ラウンジ。

最後の第四会場が、明星出版社―仁智大学で、ステージは、“フリーウェイ”という、レストランパブだ。

翌日、早速、各グループに、組み合わせと会場が発表された。


 組み合わせと、会場を受け取った各グループは、第1ラウンドの対策を練っていた。

とりわけ、前回最下位に終わった西東京国際大学は、早速、“ウエストコースト”へ視察に出かけた。

この会場は、基本的にはパーティールームで行われるが、盛り上げってきたら、ビリヤードや、ダーツで、アピールすることができる。

10人のメンバーのうち、リーダーで、ビリヤードでは全日本のランキングに入っている長瀬智之が、まず名乗りを上げた。

相手の泉陽女子大学は、名だたるお嬢様学校だ。

その辺も考慮して、中堅企業の社長の御曹司で、スポーツ万能の畑山和夫と、秀才タイプの景山裕人、あとの二人は、泉陽のみをターゲットに選ばれたちょっと不良っぽいが家柄はいい、丸山豊と榎田光一を選出した。


 いよいよ合コンラリーの第1ラウンドがスタートした。

合コンラリーとは言え、基本的には合同コンパであり、そこでいい人にめぐり会うことが目的なので、ポイントは、あくまでも二の次なのだ。

レフェリーは第一会場を良介、第二会場を望、第三会場を鵬翔晃、第四会場を高倉伸一が担当することになった。

西東京国際大学の相手である泉陽女子大学は、この第1ラウンドは様子見ということで、主力を温存してきた。

パーティールームの中央に置かれたテーブルの両側に、それぞれ5人ずつのメンバーが向かい合って座っている。

「それでは、今から第1ラウンドを始めます。お互いにいい人を見つけたら、積極的にアタックして下さいね。何よりも、ここで、素敵な出会いを見つけていただくこと。それが、このコンパのいちばんの目的なんですから。時間はたっぷりあります。それじゃあ、皆さん、存分に楽しんでください。」

良介が、開始の合図をすると、まず、西東京国際大学の方から自己紹介を始めていった。

泉陽女子大学は、さすがにお嬢様学校だけあって、主力を外していても、粒がそろっていた。

当の、西東京国際大学のメンバーは、相手が主力を外してきているとは思ってもいない。

泉陽のメンバーは、向かって左から、北村有子、河原めぐみ、上野沙織、斉藤真由美、森山恵子の5人。

序盤は、西東京国際大のメンバーが、泉陽のメンバーにそれぞれ質問をしたりしていたが、中盤からは、狙いを定めた特定の相手との会話が中心になった。

席を移動して、ツーショットで話し込むカップルもできるようになった。

長瀬は、得意のビリヤードを披露しようと、ホールに上野沙織を誘った。

それをきっかけに、丸山と榎田が、北村、森山を誘って、ダーツを始めた。

残りの四人は、パーティールームで談笑している。

 長瀬は、はじめに、トリックショットを披露すると、上野沙織は、感激して、「自分にも出来るかしら?」と、興味を示してきた。

長瀬は、手とり足とり、沙織に基本から教えた。

ある程度、球をつけるようになったら、ナインボールでゲームを始めた。

長瀬は、要所要所でわざとミスして、沙織に勝利を譲った。

沙織もそれには気が付いていたが、喜んで、機嫌がよくなった。

ダーツをしていた、北村有子と森山恵子も、ビリヤード台に集まってきた。

丸山が、「ペアマッチをしよう。」といい、三組で総当たり戦をやった。

当然、長瀬・上野ペアの圧勝だったが、他のメンバーも、お互いのペアとは、いい雰囲気になっていた。

ホールに出ていたメンバーは、一旦、パーティールームに戻り、再度、全員で会話を続けた。

次に、丸山と榎田は、河原めぐみと斉藤真由美にターゲットを絞って話を始めた。

どうやら、丸山と榎田はコンビでお嬢様を落としていく作戦のようだ。

長瀬は、完全に上野沙織に的を絞ったようだ。

沙織は、自分にだけ興味を示している長瀬に好感を持ち始めていた。

西東京国際大の他のメンバーは、それに気が付いていたので、長瀬が沙織からポイントを取れると確信していた。

最初、丸山達と一緒にいた北村有子は、畑山の御曹司という、立場に興味を示している。

丸山と榎田は、あとのラウンドには参加しないので、ここで、ポイントを取らなければならない。

もし、相手が自分たちに来なければ、ポイントは入らない。

したがって、最低でも、一旦、マイナスになったとしても、カップルを成立させて、プラス5ポイントを取らなければならない。

ただし、カップルになれなければマイナスポイントがそのまま後のラウンドに持ち越されることになる。

「さあ、みなさん、一旦、席に戻ってください。」

良介が終了を告げ、シンキングタイムに入った。

思惑通り、上野沙織が、長瀬に、電話番号を渡し、良介にナンバープレートを返却した。

さらに、北村有子が、畑山に電話番号を渡した。

続いて、森山恵子が、丸山に来た。

シンキングタイムが終わろうとするとき、榎田は勝負に出た。

後半、いい雰囲気だった、斉藤真由美に、電話番号を渡して、良介にナンバープレートを返却した。

そこで、シンキングタイムが終了した。

 良介は、結果を発表し、次のラウンドの発表日を告げた。

西東京国際大学は、この時点で、プラス10ポイントを得た。

この後の、プラス5ポイントを得た、三人が、相手の申し入れを受ければ、さらに、プラス30ポイントとなる。

但し、この後のラウンドで、どうしても気にいった相手に会った場合、10ポイントを捨てて、マイナス5ポイントを出してでも勝負をするかもしれない。

何しろ、最高の出会いを見つけることがこの合コンラリーの目的であるからだ。

この後のラウンドに参加しない、丸山は、森山恵子との交際を宣言して、二人は参加証を良介に返却した。

これにより、西東京国際大学は、1ラウンドにおいて、プラス20ポイント、泉陽女子大学は、プラス5ポイントを獲得した。

他の会場では、天保大学がプラス5ポイント、武蔵野音楽大学がプラス5ポイント、太陽商事がプラス40ポイント、大正女子大学がプラスマイナス0、明星出版社が、プラス35ポイント、仁智大学が、マイナス15ポイントを獲得して、終了した。


 第2ラウンドは、一週間後、組み合わせは、第一会場が第1ラウンドトップの太陽商事−泉陽女子大学で、ステージはディスコ&ゲームセンター“ラッキースター“のゲストルーム、第二会場は明星出版社−大正女子大学で、ステージは変装パーティーができる“カリヴィアンドリーム”、第三会場は西東京国際大学−武蔵野音楽大学で、ステージはミュージックパブ“Ms”、第四会場は天保大学−仁智大学で、ステージは和風レストラン“柔”の個室と決まった。

レフェリーは、第一会場を鵬翔、第二会場を伸一、第三会場を望、第四会場を良介が担当する。

 第1ラウンドを二番手に付けた明星出版社は電話番号をゲットした5人のうち、1人が交際宣言してメンバーから外れた。

残った4人のうちの2人と新規メンバー3人を加えた5人で第2ラウンドに挑む。

一方、大正女子大学は、二ラウンド続けて社会人グループと当たることになった。

大抵の女性グループは、社会人グループとの合同コンパで、いい相手を見つけたいと思っているので、大正女子大学にとっては、ここも勝負と言うことになる。

第1ラウンドで4人がナンバープレートを預けているので、この第2ラウンドはメンバーを総入れ替えしてきた。

 “カリヴィアンドリーム”では、入場の際に仮装しなければならない。

大正女子のリーダー高瀬里美はスチュアーデス、里中和泉は看護婦、宮原美鈴は女子高生、島田かすみはバニーガール、竹本由梨はエレベーターガールに扮して入場した。

既に入場していた明星出版社は、リーダーの三田村一樹がカウボーイ、吉田仁が警察官、南優がバーテンダー、小林洋一が侍、河本謙治が大工に扮していた。

レフェリーの伸一は裁判官に扮していた。

店内にはカラオケがあったので、序盤からカラオケ合戦で盛り上がった。

明星出版社は、ほとんどが営業マンだったので、あらゆるジャンルの曲を披露した。

第1ラウンドで、既に電話番号をゲットしている三田村と小林は余裕で他のメンバーを盛り上げた。

あとの3人は、歌より女の子を口説こうと、もうアピールをしている。

中盤を過ぎる頃には、ほぼ、それぞれの狙いがはっきりしてきた。

侍に扮した小林が、その発想も受けて、看護婦の里中和泉とエレベーターガールの竹本由梨の二人といい感じになっている。

警察官の吉田は、女子高生の宮原美鈴と、大工の河本はスチュアーデスの高瀬里美と、バーテンダーの南は、バニーガールの島田かすみとそれぞれ盛り上げっている。

端から見たら、何とも異様な組合わせだ。

そのまま、動きがないままシンキングタイムを迎えた。

 小林が、里中和泉と竹本由梨の二人から電話番号をゲットした。

南は島田かすみから電話番号をゲットしてそのまま交際宣言をした。

ポイントに余裕があったので、河本が高瀬里美の電話番号を渡すと、里美はそれを受けた。

明星出版社と大正女子大学の第2ラウンドは、ここで終了した。

 これにより、明星出版社はここでも30ポイントを獲得し、第1ラウンドと合わせて、65ポイントに延ばした。

大正女子大学は、プラス10ポイントを獲得し、トータルでも10ポイントとした。

 他の会場では、太陽商事が第1ラウンドの貯金を使って、お嬢様をゲットしまくった。5人全員が電話番号を渡し、5人ともカップルになった。

それでプラス25ポイント。

第一ラウンドのポイント合わせて、65ポイントになり、明星出版社に並ばれたが、参加メンバーはご満悦だった。

その恩恵にあずかり泉陽女子大学はプラス75ポイントを獲得し、合計80ポイントで、一気にトップにたった。

西東京国際大学と武蔵野音楽大学は二人ずつ電話番号を渡し合い、二組のカップルが成立し、共にプラス10ポイントを獲得した。これにより、西東京国際大学はプラス30ポイント、武蔵野音楽大学はプラス15ポイントとなった。

天保大学は、もはや、ラリーでの上位進出の望みが絶たれたと悟り、駆け引きを辞めて、純粋にコンパを楽しんだ。

玉砕覚悟で全員が電話番号を渡した。

その甲斐あって、3組のカップルが成立した。

これにより、天保大学は合計10ポイント、仁智大学は、55ポイントを加えて、プラス40ポイントとした。


 第3ラウンドは、第一会場は明星出版社−泉陽女子大学でステージが“F&N”のヴィップルーム、レフェリーは望。

第二会場は太陽商事−武蔵野音楽大学でステージが“ギャラクシー”メディアタワーのスカイラウンジでレフェリーは良介。

第三会場は西東京国際大学−仁智大学でステージがテーマパークレストラン“ベースボールカフェ”でレフェリーは鵬翔。

第四会場は天保大学−大正女子大学でステージがスポーツバー“エキサイト”でレフェリーは伸一。

 ここでも、泉陽女子大学は社会人グループに大モテだった。

ラウンドリーダーの小笠原かえでが3人から電話番号を受け取り、そのうちの一人と交際宣言をした。

残の4人のうち、1人も電話番号を受け取り、カップルになった。

もう一人は電話番号を渡して、これもカップルが成立した。

泉陽女子大学はこの第3ラウンドでも35ポイントを加算し、115ポイントとなった。

さらに、第1ラウンドで電話番号を渡した3人が西東京国際大学のメンバーと交際宣言をしたことにより、30ポイントが入った。

合計145ポイントで独走状態になった。

第4ラウンドは天保大学になるので、優勝は間違いないと確信した。

相手の明星出版社はプラス15ポイント。

更に、第1ラウンドで保留していたメンバーが二人交際宣言して、20ポイントを獲得し

合計100ポイント。

第1ラウンドで、電話番号をゲットしていた三田村が、小笠原かえでとカップルになったことで、仁智大学のリーダー栗原桃子が第4ラウンドからは復帰することができる。

武蔵野音楽大学も、太陽商事とのコンパに備えて、温存していた主力を投入してきた。

泉陽のように、お嬢様と言うわけではないが、音大生というブランドは社会人にとって、魅力があるのだ。

ここでは、5人全員が電話番号を受け取り、3組のカップルか成立した。

武蔵野音楽大学は、55ポイントを獲得し、70ポイントとした。

太陽商事は、ポイントをプラス5しか加えることができなかったが、今年のメンバーは、本当にコンパを楽しんでいるようだった。

今年こそ、上位進出を目指している西東京国際大学は苦戦していた。

この第3ラウンドでは、電話番号を得ることができず、勝負に出た3人が電話番号を渡したが、その場でカップルになることはできなかった。

逆に、第1ラウンドで榎田が電話番号を渡した斉藤真弓は、この第3ラウンドで明星出版社のメンバーと交際宣言したので玉砕した形になった。

第1ラウンドで保留していた交際権を行使してプラス30ポイントを獲得したものの、第3ラウンド終了時点で、プラス45ポイントにとどまった。

相手の仁智大学は、この第3ラウンドでプラス15ポイント、更に第1ラウンドで明星出版社のメンバーに保留されていた分が20ポイント入った。

これで、第3ラウンド終了時点で、プラス75ポイントとなった。

天保大学は、今回も、5人全員が電話番号を渡した。

そして、また、3組のカップルが成立した。

ポイントこそ、プラス5に終わり、合計15ポイントに低迷したが、カップルになったメンバーは換気の声を上げて喜んだ。

逆に、大正女子大学は55ポイントを加えて、ポイントをプラス65まで延ばした。


 最後の第4ラウンド。

第一会場は天保大学−泉陽女子大学でステージが“プリンスホテル”のプールサイドでレフェリーは望。

第二会場は明星出版社−武蔵野音楽大学でステージが、テーマパークの“セガタウン”でレフェリーは良介。

第三会場は太陽商事−仁智大学でステージが“CoCo”多摩川添いのフィッシング&レストランでレフェリーは伸一。

第四会場は西東京国際大学−大正女子大学でステージはディスコ“ニューヨークシティ”でレフェリーは鵬翔。

 既に、第3ラウンドまでに、どのグループもかなりのカップルが成立している。

社会人グループ相手に勝負をかける、武蔵野音大と仁智大学以外は消耗戦に入ったと行ってもいい。

天保大学は、お嬢様相手ということもあって、カップルになっていないメンバーの中から、最も、可能性が高そうなメンバーを出してきたが、お嬢様のお眼鏡にかなうものはいなかった。

例によって、5人全員電話番号を渡したが、今回ばかりはカップルが成立しなかった。

天保大学は、総合ポイントマイナス25ポイントで、最下位が確定した。

泉陽女子大学は、カップルこそできなかったが、25ポイントを加えて、総合ポイント170ポイントとし、二年ぶり2回目の優勝を果たした。

明星出版社は、5人全員アタックし、カップルが2組成立。

最終ステージは初のマイナスポイントで総合ポイント95ポイントは第5位。

武蔵野音大は、45ポイント加算して、総合ポイント105ポイントで第2位。

太陽商事は最終ラウンドプラス35ポイントで総合ポイント105ポイントの同点2位。

仁智大学は25ポイント加えて、総合100ポイントで第4位。

西東京国際大学は、最初のエントリーが少なかったため、最終ラウンドはメンバーを追加召集しなければならなかった。

これが幸いしたのか、3人から電話番号をゲットした。

もちろん、全員その場で交際宣言をした。

45ポイント加え、総合90ポイントで僅差の第6位だった。

大正女子大学は、最後、15ポイントを加えたが、総合80ポイントでブービーに終わった。


 最終ラウンドが終了した一週間後、“F&N”で表彰式と見事カップルが成立したメンバーのための、お祝いパーティーが開かれた。

合コンラリーにおける、CIPの収益は、各グループの参加費と、使用会場からの、売り上げのフィードバックで成立するが、利益は全て、このパーティーで使ってしまう。

従って、部員への報酬はないが、パーティーが慰労会を兼ねているため、皆納得している。

鵬翔は、西東京国際大学の彼女を連れてきていた。

むさ美のバザーの時、PRビデオに出演した小田切薫と江藤智子も招待されていた。

合コンラリーに参加したメンバーも、このPRビデオは知っていたので、二人が登場すると会場はどっと沸いた。

 薫と智子の周りには、「PRビデオを見て感動した。」とうい、カップルたちが集まっていた。

智子は、しきりに恐縮して、「モデルじゃなくて、プロデューサーがすごいの。」だと、説明していた。

すると、ビデオ撮った良介が注目され、人だかりが良介の方へ移動した。

良介は、調子に乗って、能書きを垂れている。

観葉植物に囲まれた、席で変装したあすかと一緒にいた望は、既にイライラしていた。

あすかは、落ち着くようになだめながらも、面白がっているようだった。

辺りに人がいなくなった頃、伸一は薫のそばへ行った。

「今日は、正真正銘のドレスコードだぜ!」

薫は、苦笑いしながら、「それは、それで、着る物に困るもんだな。」と言った。

伸一は、「なに言ってる!どうせ、それしか持ってないんだろう?」

図星だったので、薫は、顔を赤くして黙り込んだ。

 パーティーも佳境に入ってきたころ、良介が温子を紹介した。

「今回の、すべてのマッチメイクを担当した、我がCIPの新人、廣瀬温子を紹介します。」

温子は、拍手で迎えられた。

カップルたちからは、「素敵な場所を提供してくれてありがとう。おかげで、カップルになれた。」そんな言葉が、次々に飛んできた。

明星出版社のリーダーだった三田村一樹は、温子が大学を卒業したら、「是非、うちに来て欲しい。」

そう言って、名刺を渡してくれた。

 孝太と涼子は、オープンテラスの丸いテーブルに向かい合って座っていた。

既に、7月も終わろうとしている。

蒸し暑い夜だったが、時折吹いてくる、穏やかな風が心地よかった。

孝太は珍しく、ウォッカトニックを飲んでいた。

飲んでいたというよりは、テーブルの上に飾っていた。

涼子は、冷たく冷やしたアップルティーを飲んでいた。

ゆでたシュリンプと、オニオンリングフライをつまみながら、店内の様子を見ていた。

「温子はすごいね!」

涼子がうらやましそうに言った。

「もともと、あの手の才能があったのかもしれない。」

「そうね。」

「涼ちゃんも、ああいう風に注目されたいかい?」

「いいえ、私は遠慮するわ。どちらかと言えば、縁の下の力持ちでいい。」

「ああ、同感だね。俺も、目立つのは、ちょっと苦手だ。」

「だけど、孝太君は、このCIPを背負って立たなければいけないのよ。」

「いや、俺達の代になれば、温子が部長になった方がいい。別に女がなっちゃいけないってことはないんだ。」

「そうね!そのほうが、きっとうまくいくわね!」

「ああ!」

孝太は、ウォッカトニックをほんの一舐めした。

グラスの中には、もう氷は残っていなかった。

 店内に入るドアが開くと、仲の喧騒が聞こえてくる。

中から出てきたのは、望と、相変わらず変装をしたままのあすかだった。

「あら!あなた達、こんなところで二人っきりになって!」

二人を見つけたあすかが、冷やかしながら、近づいて来た。

望も、あすかにいくらこぼしても、張り合いがなかったので、ちょうどいい相手を見つけたと、目が輝いている。

孝太は、嫌な予感がして、席を立とうとしたが、望に両肩を押さえつけられて、動けなかった。

孝太は、ふと、“大学堂”での惨事を思い出した。

しかし、今日は他に、涼子もあすかもいる。

あの時のようなことはないはずだ。

いや、あって欲しくはない。

そんなことを、考えているそばから、あすかは、涼子を連れて店内に戻ってしまった。

「ちょ・・ちょっと!」

望は、既に、息が酒臭かった。

座っている椅子を、孝太の方に、じりじりと詰め寄りながら、不気味な笑顔を浮かべていた。


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