ちきゅう
ある女の近くに、具合の悪そうな老人がいた。
女は見かねて声をかけた。
「おじいさん、大丈夫ですか?」
老人は答えた。
「大丈夫じゃ。ちょっと質の悪いウイルスにかかってな。放っておいたらそのうち死滅するじゃろう」
「それはいけません。そんなことではいつまでもよくなりませんよ。病院に行きましょう」
女は老人を病院へ連れて行った。
医師は老人を診察すると、
「これは大変だ。随分侵されている。すぐに処置しなければ」
老人にそう言った。
老人は医師にも同じことを言った。
「じきに治る。放っておいて大丈夫じゃ」
「大丈夫ではありません。ちょうど良い薬があります。ウイルスだけを確実に殺す薬です」
医師は、拒否する老人に薬を飲ませた。
その日、地球上から人類だけがいなくなった。