SILLY
『救命手術。』関連の話。
人間は愚かだ、身勝手で浅はかだ、もはや生かす価値はない。
神は決行した、人間のみを殺すと。
病原体をばら撒き七日間が経った。
人間はチリも残さずに崩れた、だがその中に一人だけ生き残った奴がいた。
神は思った、奴一人だけでは何もできまい、放置しても構わないと。
更に興味もあった、人間は世界にたった一人になった場合どうなるかに。
神は奴の行動を観察し始めた。
奴はタガが外れたように暴れた、発狂し、笑い、万引きをし、裸体になり、物を壊し、家を燃やす。
人間とは複雑な社会を構築する生き物、その枷がなくなった時は本能に従うらしい。
だが奴は燃える家を見て一気に静かになった、神は人間の心情に干渉できないため、奴が何を考えて炎を見ているのか分からなかった。
神はとりあえず観察する、すると奴は何かを思い立ったのかいきなり走り出した。
そして街に火を放った。
最初は小さな火でもそれは徐々に移り行き、七日後には町全体を燃やし尽くしていた。
神はそれでも驚かずに観察し考察した。
おそらくここは奴の生まれ育った場所、それを跡形もなく燃やし尽くすとは、奴にとってここは憎しみの地だったのだろう。もしくは思い出の場所を燃やすことで踏ん切りをつけたかのどちらかだ。
どちらにせよ、面白い行動。
神はいつの間にか奴に夢中になっていた。
奴の次なる目的地はとある研究所だった、町外れの孤立した研究所、ここは燃えずに残っている。
奴は様々な武器を持ち、その中へと歩んで行った。
そして聞こえる破壊音、ガラスの割れる音、機械の壊れる音、機関銃の銃声。ありったけの破壊活動を研究所に行った。
その後、奴はやはり研究所に火を放った、メラメラと焼けていく研究所、炎が取り巻き焼き尽くす。
次はどこを燃やすのか、神は期待していた。
だが奴は予想だにしない行動に出た。
奴は焼ける研究所の中に突っ込んで行ったのだ、灼熱の炎の中悶え苦しむ奴、しかしなぜかその顔は笑っていた。
神は奴の狙いが分かった、ただ単に死にたいのだ。
あれほど自然を食い潰し繁殖してきた人間が、最後は自殺をする。どこまでも愚かだ、愚かで無様だ。
なので神は奴を生かすことにした、生かしてずっと観察することにした。
奴は戸惑うだろう、だがそれもまた一興。
死にたくても死ねない人間は一体何をするのか、神の長く楽しい人間観察が始まった。
続く、かも?