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革命ガ始マリマシタ  作者: XICS
戦いの始まり
24/72

『5』との死闘

 雪音の通信に、討伐部隊の三人は愕然としながら上空を眺めていた。ついに奴らが来た――その事実だけでも、身体が震えそうになっている。

 とりわけ、《ライオット》の中の勇気は自身の興奮を抑えきれなくなっていた。操縦桿を握る力が強くなり、呼吸も荒くなる。『5』の場所が分かれば、今すぐにでも飛び出してあいまみえたいと彼の心が強く訴えている。

 するとまたもや、雪音から通信が入った。今度は勇気だけに向けて通信が飛ばされる。

『勇気、どうした? 息が荒いぞ』

 無線越しでも、雪音には勇気が興奮していることが伝わっていた。彼はハッとした顔で無線の方を向く。

「い、いえ、何でもありません! それよりも、奴は――」

『今場所を特定している最中だ。焦るなよ、お前の悪い癖だ』

 雪音に焦っていることを指摘され、勇気は少し意気消沈したような声色で返事をした。

『分かればいい。お前は横須賀の隊長をメガフロートまで送り届けてくれ』

「分かりました」

 雪音との通信が切れる。勇気は気を取り直してフッと息をつき、メガフロートまで機体を進ませる。日本を混乱させている元凶を、なんとしても倒さなければ――彼の頭には、それしかなかった。



 雪音は《オーシャン》の中で目まぐるしく作業をしていた。キーボードを叩き、カメラで周りの状況を確認したり、周りの兵士に指示を出したりと、現場の兵士よりも動いているのではないかという位に働いている。

 しかし、艦の中でキーボードを叩いているだけでは埒が明かないと判断した彼女は、賢に通信を入れた。ブツリという音とともに、通信が繋がる。

「賢、スナイパーライフルを出してくれ」

「分かりました。それで何をすればよいのですか?」

 《ダーケスト》を待機させている賢は、格納していたスナイパーライフルを構える。

『スコープで、できるだけ遠くまで覗いてくれないか?』

「分かりました」

 そう言って賢は、《ダーケスト》のスナイパーライフルを覗き込み、スコープを絞って遠くを見ようとした。しかし、相手が狙撃したと思われる位置を見当づけて覗いても、敵機は確認することができなかった。

「ここでは無理ですね。相手が狙撃のポイントを変えたのかもしれませんので、場所を変えます」

『頼んだ。あまり近づきすぎると奴に狙撃されるから、気を付けろよ』

「分かりました」

 通信が切れる。《ダーケスト》は、先程の射線上を進み始めた。ブースタを吹かしながら、賢は勇気と恵良に通信を入れる。

「僕が奴の居場所を探します。恵良さんは僕についてきてください。勇気君はここに残ってください」

 その言葉に、すぐに勇気が反応した。彼の乗機は今、第1部隊の隊長をメガフロートまで無事に送り届けたところだった。そこに送り届けられると、隊長はハッチを開けて、待機していた救急車へと運ばれた。

「どうして……自分は残らなければならないんですか?」

「勇気君は見たところ、演習でかなり動きましたね。機体のエネルギーの消費が激しいと思うので、力の温存の意味でも残ってほしいんです。勇気君は狙撃機体が大好物ですが、ここはぐっと我慢してください」

 賢の言葉に、勇気は機体のエネルギー残量を見た。彼が確認した残りのエネルギーは、総量の七五パーセントであった。確かに少し動きすぎたのかもしれないと、彼は数字を見て思った。

「分かりました。残ります。気を付けてください!」

『ええ。必ず『5』を引きずりおろしますよ』

 そう言い残し、賢は通信を切った。間髪を入れずに、勇気の下に雪音から通信が入る。

『残れ、と言われたのか?』

「はい。賢さんは恵良を連れていきました」

『ちょうどいい。艦に戻れ。エネルギー補給と装甲の点検を行う』

 分かりました、と勇気が返事をすると、通信が切れた。勇気はすぐに、《オーシャン》へと乗機を進める。ここで一時離脱するのは悔しいが、先輩と恵良を信じるしかない――勇気は歯を食いしばった。



 

 待機指令が下された勇気。その一方で、賢に追随することになった恵良も戸惑いの表情を浮かべていた。訳も分からず、賢に通信を入れる。

「私が……ついていくんですか?」

『そうです。恵良さんには奴が見つかり次第突撃してもらいます』

「突撃?」

 恵良は賢の言葉をおうむ返しした。賢がコクピットの中で頷く。

「そうです。恵良さんの機体の機動力を活かして相手をできるだけ地上付近まで誘導してください。勿論、僕も援護します」

 恵良は少し戸惑い、はい、と返事をした。しかし、返事をしたはいいが彼女の戸惑いは消えるどころか増していた。訓練ではなく実戦で、今まで行ったことのない狙撃機体との連携をぶっつけ本番で行うのだ。彼女は一気に口ごもってしまった。

 しかし、賢は笑って恵良に通信を入れる。

「大丈夫ですよ。自分の腕を信じてください。僕も恵良さんの腕を信じていますから」

 賢の言葉に、恵良は力なく返事をするしかなかった。それでも彼女は、今は実戦だからやるしかないと決心しようとしていた。しかし、踏ん切りがつかない。

 すると、また通信が入った。今度は勇気が恵良に通信を入れた。

『恵良!』

「……勇気。どうしたの?」

『俺もすぐに追いつく。気を付けて。それと、今の恵良ならやれるさ、絶対に!』

 通信を聞いたのか、雪音から賢のプランを伝えられたのかは恵良には分からないが、勇気は彼女が今やることを分かっていた。彼の励ましを聞いて、恵良はいつの間にか微笑んでいた。

「……ありがとう、勇気。私、勇気が来るまでは無事でいるから。その間にあいつを倒しちゃってるかも」

『う、うん!』

 勇気から少し照れている様子が感じられる返事が飛んできた。彼が返事をした後、通信は切れた。

――私なら……できる。やれる!

 恵良は少しだけ自信を持つことができたように感じていた。その気持ちを背負ったまま、彼女は賢についていく。



 賢と恵良が機体を上昇させると、待機していた千歳基地の第2部隊と猿ヶ森基地の第1部隊が二機に追随して飛び出した。しかし、その部隊の《燕》は討伐部隊の二機を追い越し、どんどん高度を上げていく。さらにメガフロートの方を振り返ると、横須賀基地のSW部隊が続々と帰艦していくのが見えた。

 それを見た雪音が、他の艦に通信を入れる。

「何故メガフロートをがら空きにするんです? ここは防衛の要諦でしょう?」

 すると、《鷲羽》で指揮を執っている新が通信に答えた。

『今いる《剱》と《蓮華》でここを守るつもりだ。それに、補給が終わった横須賀の部隊をここで防衛させる』

「そうですか。それならよいのですが――」

『どういうつもりだ!?』

 突如、無線から怒声が響き渡った。声の主は、横須賀の《鷲羽》の艦長であった。

『我々の部隊のことを勝手に決めるな! 我々の部隊は私の判断で動いてもらう!』

『これ以上SWがいなくなればここの守りが薄くなる。それに、隊長不在では動き辛かろう』

『私が指揮を執る。何も問題は無い。我々の部隊は『5』を追う』

 横須賀の《鷲羽》の艦長が一層声を張り上げる。その言葉に、雪音がため息をつく。

「お言葉ですが、私も横須賀の部隊はここの守りをしていた方がよいかと思います」

『何だと!?』

「先ほども申し上げた通り、ここは防衛の要諦です。私は奴らが国会議員がターゲットだと判断しましたが、ここを狙わないとも限りません。ここの地下には原発が眠っているようなものですから。どうにか、ここの防衛を厚くしたいのです。私の部隊の灰田もここに待機させて防衛させます」

 雪音は彼女なりに下手に出て、横須賀の《鷲羽》の艦長を説得しようとした。しかし、彼女の眉はひくひくと痙攣しているように動いている。怒りを堪えているのだ。その艦長はというと、低いうなり声を少し上げた後、了解した、と苦いものを飲んだ後のような唸り声を上げて彼女の指示に従った。

 雪音は返事を聞くとすぐに通信を切り、勇気に無線をつなげた。

『灰田勇気であります!』

「勇気、少し予定が変わった。『5』は恵良と賢に任せて、お前はもしもの時のためにここに待機してくれ。何せ突然の襲来で現場が混乱しているんだ。すまんな」

『……分かりました。隊長の命令とあらば』

 勇気の残念そうな声色の返事を聞くと、雪音は通信を切り椅子に座った。そして虚空を見上げ、大きくため息をついた。

「……馬鹿が」



 賢と恵良のSWは、高度五〇〇〇メートルまで上昇していた。《ダーケスト》に搭載されている狙撃用のレーダを駆使し、『5』の居場所を突き止めようとしている最中である。その前には、二人とともに『5』の撃墜をしようとしている千歳基地の第2部隊と猿ヶ森基地の第1部隊の《燕》がビームライフルを構えながら進んでいる。地上付近に待機している《剱》に搭乗している隊長に警戒するように命令され、武器を構えている。

 しかし、なかなかレーダは『5』を捕捉しない。SW部隊は、『5』を探して上空を彷徨い続ける。次第に隊員たちに焦りが募り始める。

 それでも、賢と恵良は焦らずに黙々とレーダを使って探索していた。賢は『ナンバーズ』の狙いが国会議員たちであることを踏まえて、彼らについていくように移動していた。そうすれば、『5』ともかち合う可能性があると考えたからである。さらに《ダーケスト》は、いつでも相手を撃ち抜くことができるようにスナイパーライフルに手を掛けている。

 賢が息を殺してレーダを眺め続けて空を巡航していること三分、ついにそれが反応した。《ダーケスト》のEセンサーが、熱源反応を感知して断続的に鳴り響く。

――降りてきたか……。

 賢はその場にいるSWを全て制止させる。

「……見つかったんですか?」

 恵良が恐る恐る賢に尋ねる。

「ええ。二時の方向六〇〇〇メートル先に、微かな熱源反応が出ました。おそらく奴でしょう」

 途端に恵良の顔が引きつり、動悸が激しくなる。しかし、賢がそれを見抜いているかのように恵良に通信を入れた。

「ここで飛び出せば危険です。奴もすでに気付いている筈です。まず僕がスナイパーライフルで牽制します。その後に、飛び出してください」

「わ、分かりました!」

 恵良の声は緊張で震えている。その横で、《ダーケスト》がスナイパーライフルを構えた。

 賢がスコープを覗き、最大まで絞る。そこに映ったのは、既に地上方面にスナイパーライフルを構えている『5』であった。スコープを覗いて獲物を捉えようとしている。

 賢は一回深呼吸をして、心を落ち着ける。彼はスナイパーライフルの引鉄を引くボタンにそっと指を載せた。

 しかし彼の心の中には、何か引っかかるものがあった。ここから地上のものを感知することができるレーダを搭載しているのに、自分たちにはまるで気づいていないかのようにそこを動いていないのである。そこで彼は、一旦構えを解いて恵良を含む全SWに後退するように《ダーケスト》の手ぶりで伝えた。

『どうしたんですか?』

「一旦全速力で大きく下がってください。できるだけ大きく動きながらというのも追加でお願いします。皆さんにも伝えてください」

『……分かりました』

 恵良は賢の意図が分からないまま、無線を弄って《燕》にチャンネルを繋げた。

「皆さん、賢さんからの指令です。全速力で、できるだけ大きく動きながら距離を取ってください」

 恵良が通信を入れると、了解の声が無線に矢継ぎ早に飛んできた。そして、スラスタから大きな音を立てて《燕》の連隊が全速力で蛇行しながら後退する。訓練されているので、動いている時の息はぴったりである。



 すると、『5』がスナイパーライフルを構えたまま、一瞬で身体ごと此方を向いた。その一瞬後、銃口が光った。

 しかし、『5』の不意打ちは《ダーケスト》のシールドによって防がれた。その一撃で、シールドは粉々に砕け散った。賢は恵良と《燕》の部隊を陽動に使ったのだ――『5』がこちらに気付いていることは彼は承知の上で、《燕》と《ウォリアー》のスラスタの音と発される熱で『5』の注意を引き、一撃を誘った。

 そして彼は長年狙撃特化の機体に乗っているので、スナイパーライフルのリロードが他の銃に比べて長いことも熟知していた。それを踏まえて、彼は次の手を考えていた。

「今です、恵良さん。突っ込んでください!」

 賢が大きな声を張り上げた。

 賢は『5』のリロードが終わる前に、恵良を突っ込ませようと考えていた。スナイパーライフルが少しの間使えないうちに、一気に決着をつけようと彼は考えていた。

 恵良は、分かりました、と返事をした後、『5』と一気に距離を詰めようと《ウォリアー》の背面の追加ブースタを吹かした。身体がシートに押し付けられ潰されてしまいそうな感覚に陥りながらも、恵良は呻きながら目標の所へと加速する。

 《ウォリアー》は両手に専用のビームソードを展開した。刃の色は青みがかった白で、《陰陽》の専用ビームソードの刃の色と似ている。

 六〇〇〇メートルが一瞬にして縮まる。相手の姿が見えた頃には、恵良はビームソードを振っていた。

「これでぇっ!」

 恵良が叫びながら《ウォリアー》の剣戟を『5』にぶつける。電流が流れたような音が周りに響き渡る。

 しかし、その一撃はたった一本のビームソードによって止められた。二本の刃を、左腕一本で抑え込んでいる。

「くっ……!」

 恵良はやむなく後退した。すると、恵良の無線に賢が通信を入れた。

『離れてください!』

 恵良が賢の方を見ると、《ダーケスト》が距離を縮めてスナイパーライフルを構えていた。

 《ウォリアー》が射線から逸れたその瞬間、賢が引鉄を引いた。一筋の光が、『5』を襲う。

 しかし、その超速の光弾を、『5』は軽々と避けた。恵良が驚きで目を見開いていると、《ウォリアー》にスナイパーライフルの照準が向けられた。彼女はロックを外そうと、背部追加ブースタも使って横に移動し、相手の視界から消えようとする。

 しかし、『5』は躊躇いなく恵良を撃った。極太の青白い光線が、天に向かって伸びる。しかし幸いにも、ロックが外れたせいか彼女には当たらなかった。

 その時恵良は、撃った時の反動で『5』が少しの間硬直していることに気が付いた。すかさず彼女は敵の後ろに回り込み、斬撃を加えようとする。

――今度こそ!

 しかし、その考えは甘かった。『5』は恵良が後ろに回り込んだと分かると機体を一八〇度反転させ、その勢いで既に展開していたビームソードを振り回し、《ウォリアー》の剣戟を受け止めた。破裂音のような音が聞こえたかと思うと、《ウォリアー》は吹き飛ばされた。

「ああっ!」

 恵良は短い悲鳴を上げながら機体を制御する。しかしあろうことか、彼女を追って『5』がビームソードを展開したまま追撃しようとしてきた。恵良の顔面は蒼白になり、必死に機体を制御して姿勢を元に戻し、反撃としてブースタを吹かして『5』を迎え撃つ。

 しかし、横槍が入った。《燕》の部隊がビームライフルを一斉射し、恵良を援護しようとしたのだ。彼女は一旦距離を取って落ち着こうとする。

『恵良さん、避けてください!』

 突然、賢から通信が入った。恵良は『5』がいるところの延長線上を見上げた。そこには、スナイパーライフルを構えた《ダーケスト》が待機していた――太陽を背にしているので、光によって目視が難しくなっている。

 恵良が避けると同時に、《ダーケスト》のスナイパーライフルの引鉄が引かれる。『5』の反応が、少し遅れた。



 『5』は光弾を避けようと右にずれようとしたが、それは左の脇腹を大きく抉った。敵はバランスを崩し、きりもみ回転しながら落下した。その様子を、《燕》の部隊の中にいる兵士たちは茫然としながら眺めている。恵良も、自然と頬が緩んでいた。

「ダメージを、与えた――」

『まだ終わりじゃないですよ。追いましょう!』

 賢の通信で、恵良は一気に現実に引き戻された。彼女は賢に大きく返事をして、『5』めがけて突進していった。それに《ダーケスト》と《燕》の連隊も続く。



 『5』は一〇〇〇メートルほど落下した後すぐに姿勢を制御して元に戻り、超速で本土の方へ進んでいた。ビームソードはスナイパーライフルに備え付けられ――左腰部の武器を格納するところが諸共吹き飛んだためである――、今『5』はそれを構えている。バチバチと左の損傷部から電気が走っているが、何の影響もないかのように直進し続ける。

 すると、地上から光線が伸びてきた。メガフロートで待機していた《蓮華》が、スナイパーライフルを放ったのだ。しかしそれに臆することなく、『5』は構えたスナイパーライフルの引鉄を引いた。

 青白い光線が、一機の《蓮華》の頭部を吹き飛ばした。首なしのSWが、勢い余って空しくその場に倒れる。

 さらに、それの威力は衰えることなくメガフロートに着弾した。特殊なコンクリートを溶かし、抉る。幸い中枢部までには届かなかったものの、それを見ていた周りの者は雪音と新以外戦慄した。

「……空に上がったもの達は何をやっている」

 新が苛立った声で呟いた。それを無線で拾った雪音は、新に返す。

「どうやら、もうすぐ来るみたいですよ」

 雪音はレーダを確認していた。白い点の塊が、赤い点に向かっているのが分かる。その中で飛び抜けて速い点がいた――恵良のSWだろうと、雪音は推測した。

 『5』がもう一度スナイパーライフルを発射しようとしたその瞬間、《ウォリアー》がそれめがけて突っ込んできた。『5』はビームソードの展開のタイミングが遅れ、展開した時には間一髪で斬撃を防いでいた。

 電流が流れる音とともに、両機がつばぜり合う。しかし、弾き飛ばしたのは『5』だった。のけ反った《ウォリアー》に、追撃を加えようとする。

「負けるかぁっ!」

 恵良は叫び、すぐに機体の姿勢を元に戻すと、追加ブースタを点火して『5』の斬撃を避けた。左に回り込んだ《ウォリアー》はその勢いのまま敵に向かって二本のビームソードを振るう。『5』もすぐに恵良の方へ向き直り、ビームソードで迎え撃つ。

 一合、二合、三合――何十合と剣戟を重ねる。空中で蛍のように飛び回り、光の刃をぶつけていく。恵良はヒット・アンド・アウェイを忠実に守り、剣戟をぶつける毎に位置を変えて相手を攪乱していこうとした。『5』は、狙撃特化機体とは思えないような近接攻撃で恵良に立ち向かい、重力粒子による超出力で彼女を翻弄している。

 その合間に、賢と《燕》の連隊は彼女らの方を迂回してメガフロートに到着していた。メガフロートめがけて狙撃やビームライフル斉射はできないからである。《燕》の連隊の兵士たちは、この光景を固唾を呑んで見守ることしかできなかった。対して賢は、隙を見つけ出して狙撃せんとスナイパーライフルを構えて、猟師の如く獲物を見つめている。

 すると、横須賀基地のSW部隊が補給を終えて《鷲羽》から飛び出してきた。

『後れを取るな! 全機突撃せよ!』

 横須賀基地の《鷲羽》の艦長が、威勢よくSW部隊に指示を出した。その中でも、特に好戦的な横田が早々にビームライフルを取り出し、『5』めがけて撃ち始めた。

「白田さん、俺も助太刀するぜ!」

 しかし、彼の銃撃は全弾外れ、援護どころか恵良の集中力を切らしてしまった――その銃撃に、彼女は巻き込まれかけた。短い悲鳴を上げながら、彼女は体勢を立て直そうとする。

 しかし、遅かった。横田の銃撃を躱したことによって、左ががら空きになっていた。そこにビームソードが振り下ろされる。



 《ウォリアー》の左腕が、ビームソード諸共虚空に舞った。




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