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革命ガ始マリマシタ  作者: XICS
戦いの始まり
23/72

襲撃

 猿ヶ森のメガフロート上空。三隻の《鷲羽》と討伐部隊の航空艦である《オーシャン》、そして猿ヶ森基地に所属している《燕》が十機、《蓮華》が五機、《剱》が一機待機している。猿ヶ森基地からは第1部隊が軍事演習に参加しており、残りの部隊は武器庫の近くで演習を視察している『日本自由の会』の議員の警護に回されている。

 それに続いて、横須賀基地の《鷲羽》から発進した第1部隊の《燕》六機、《蓮華》三機、《剱》一機が現れた。さらに後ろから、千歳基地の《燕》六機、《蓮華》三機、《剱》一機も現れた。また、賢の《ダーケスト》は一番後ろに待機している。

 最後に、勇気の《ライオット》と恵良の《ウォリアー》が合流した。彼らが《ダーケスト》の後ろに並んだところで、猿ヶ森基地所属の《鷲羽》に搭乗している新からオープンチャンネルで号令がかかる。

『これから合同演習を始める。これは、このメガフロートに『ナンバーズ』が襲撃することをを想定して行うものだ。心して臨んでほしい。それぞれの艦のクルーも、演習に参加してもらう』

 コクピットの中の勇気と恵良が緊張した面持ちで頷く。

『この中で行うものは、兵士同士の模擬戦闘だ。討伐部隊の三機を『ナンバーズ』の機体だと想定し、チームで戦え。討伐部隊の三人は、この訓練の中でより一層技量を磨いてほしい』

 新の言葉を聞き、勇気と恵良の顔が引きつった。これだけの人数を相手にしなければならないのか――二人はため息をつきそうになったが、ぐっとこらえる。

 二人にとって初めての、他部隊との戦闘が始まった。



 まず討伐部隊は、横須賀基地第1部隊と交戦した。第1部隊と討伐部隊が、それぞれ散開する。

 三機が散開すると、《オーシャン》の中にいる雪音から通信が入った。三人は無線に注目する。

『相手は量産型だが、こちらも《剱》と《蓮華》の改造型であることを忘れないようにしてほしい。機体のスペックとお前たちの腕を過信しないように動いてくれ。それと私は指示を出すが、基本的には自分たちで動いてくれ』

 雪音の言葉に、三人は、了解、と声を大きくして返事をした。

 勇気が目の前の十機のSWを見つめる。これから今まで経験したことのない、三対一〇の戦いが始まろうとしている。勇気はつばを飲み込んで喉を鳴らした。

『勇気君』

 突如、賢から勇気に向かって通信が入った。彼は慌てて無意識のうちに背筋を正す。

「はい! 何でしょうか?」

『先程恵良さんにも同じことを通信を入れて話したんですが、緊張しないでください。僕が後ろから援護しますから。それに、勇気君には恵良さんがいます。きっと大丈夫ですよ』

「は……はい、ありがとうございます!」

 勇気は賢に大きく返事をした。彼が返事をすると、賢からの無線は切れた。

 そうだ、きっと大丈夫だ、あの二人が俺のそばにいれば――勇気の心は少し落ち着いた。操縦桿を握る力も、少し緩んでいる。

「行くぞ」

 勇気は凛とした顔になり、そう呟いた。



 先制攻撃は、横須賀の部隊が行った。《剱》が右腕を挙げると、六機の《燕》が一斉に飛び出した。ビームソードを展開している三機が前列をなして、ビームライフルを構えている残りの三機が後列をなしている。対して、討伐部隊の三機は動こうとしない。

 すると、前列の三機が高度を下げた。そこから出てきたのは、ビームライフルの引鉄を引こうとしている後列の三機だった。さらに、奥の《蓮華》もスナイパーライフルを構えて撃とうとしている。ビームライフルの銃口が見えた瞬間、《ライオット》と《ウォリアー》はブースタを吹かして上空に移動し、《ダーケスト》はより後方に下がった。

 案の定、三機のビームライフルは放たれた。光弾は空を空しく切り裂く。

 勇気はまず、待機している三機の《蓮華》に目を付けた。遠距離攻撃を早めに潰しておけば、それらに辟易することなく戦うことができると考えたからである。彼は《ライオット》のブースタを吹かし、全速力でスナイパーライフルを構えたまま動かないでいる《蓮華》の懐へと突っ込もうとした。

 勇気が《蓮華》三機へと向かったことを確認した恵良は、ビームソードを構えて突っ込んでくる三機の《燕》に対処することを決めた。海面すれすれまで高度を下げた三機は、そのまま恵良に向かって突っ込んでくる。恵良は、臨むところだとばかりに《ウォリアー》のペダルを踏み込みそれらに向かっていった。

 後方に下がった賢は、ビームライフルからビームソードに持ち替えた後列の三機を牽制するために、スナイパーライフルを構える。彼の予想通り、後列の三機は動きが制限されて《ダーケスト》をジリジリと牽制するようになった。

 最初に反撃を仕掛けたのは勇気であった。量産型の数倍のスピードで《蓮華》三機と《剱》のもとに突っ込む。《蓮華》はスナイパーライフルからビームソードに持ち替えざるをえなくなり、その隙をついて勇気は切り伏せようとする――実際には武器だけを攻撃して無力化するだけだが――。

「今だ!」

 《ライオット》は一機の《蓮華》に急接近してそれが持っているビームソードを叩き落そうとした。しかし、《ライオット》の目の前に、《剱》が立ち塞がる。勇気が放った一撃は、《剱》のビームソードによって防がれた。数秒つばぜり合ったあと、《ライオット》は敵を弾き飛ばした。しかしその隙に、三機の《蓮華》は後退しスナイパーライフルを構え直していた。

「くっ……」

 勇気は眼前の《剱》を睨むように見つめる。その《剱》も同じく、彼のことを警戒しているかのように動かずに正面に位置している。

 勇気と横須賀基地第1部隊隊長との戦闘が、新たに始まろうとしていた。



 そのころ恵良は、ビームソードを展開している《燕》を二本のビームソードと持ち前の機動力でいなしていた。翻弄しているのはいいが、相手の武器を叩き落すタイミングが掴めず彼女も困っている。気を抜けばいつ倒されるか分からないので、相手をヒット・アンド・アウェイで翻弄することしかできないでいる。

「相手も弱くない……。タイミングが全然掴めない――どうすれば……」

 すると、一機の《燕》がビームソードをマウント、ビームライフルをグリップして引鉄を引いた。恵良はその一瞬の出来事に気付きブースタを右方向に吹かして回避するが、別の《燕》が《ウォリアー》に向かってビームソードを振り下ろした。恵良はそれを一本のビームソードで受け止めて弾き飛ばす。しかし、攻撃はこれでは終わらず、またしてもビームライフルの光弾が飛んでくる。彼女はそれも避けるが、彼女が周りを見渡すと、いつの間にか、ビームライフルをグリップしている《燕》が二機に増えていた。

「一人で三人は……まずかったかなぁ」

 恵良は少し息を切らして周りを見る。《ウォリアー》は三機の《燕》に周りを囲まれた。さらに残りの三機もビームライフルを構えながら彼女のもとへ近寄ってくる。

 《ウォリアー》が飛び上がって、六機を振り切ろうとした瞬間、三機の《燕》が作ったサークルの中心を狙ったかのように、《蓮華》が放つものよりも太い光弾が飛んできた。敵はそれを避けるために、蜘蛛の子を散らすように広がった。

「……賢さん!」

『僕もいることを、忘れては困りますね』

 恵良の顔が自然と驚きの表情を作る。賢の《ダーケスト》は味方にも気付かれず、はるか上空を飛んでいた。彼女が賢と合流する。

「撃つときには一言言ってくださいよ! 当たりそうになったんですから……」

『申し訳ありません。次からは気を付けます』

 謝りながらも、賢は笑っていた。恵良はそんな先輩にため息をつきながらも、気を取り直して《燕》の軍団を見下ろす。

「恵良さんは機動力を活かして突っ込んでください。今度は僕は相手を撃ちながら牽制します。どうやら、構えているだけではだめだったようです。撃つときには、ちゃんと予告します」

「分かりました!」

 《燕》のビームライフルの攻撃を避けつつ、二人は作戦を話した。



 勇気と第1部隊隊長の争いは熾烈を極めているが、優勢なのは勇気だった。彼のSWの動きはただ機体性能を前面に押し出しているだけではなく、きちんと自分の技量も上乗せされているような動きである。剣戟でも、一合、二合、三合――何十合となされているが、勇気はしっかりと相手の動きを読み、敵の攻撃を弾き飛ばしている。《蓮華》は援護するが、まるで当たらない。五発外した時点で、その三機は艦か隊長に命令されたのか、恵良と賢の方を向き始めた。

 それを勇気は見逃さなかった。彼はビームソードの剣戟で《剱》を弾き飛ばすと、ブースタを目一杯吹かし、矢のように三機のもとへと突っ込む。

「そこだ!」

 勇気が叫び、《蓮華》の眼前まで迫る。そしてビームソードの刃を消し、発振器を《蓮華》の手首に勢いよく叩きつけた。手部は損傷こそしなかったものの、構えていたスナイパーライフルは自由落下し、飛沫しぶきとともに海の中へと消えた。

 さらに勇気は、次の標的を見つけ同じように無力化しようとする。一機の《蓮華》が、至近距離で無理矢理スナイパーライフルを構えて命中させようとしていた。彼はそれに目を付け、ビームソードを再展開、スナイパーライフルの銃身を真っ二つに切り裂いた。《蓮華》は慌てて手を放して後退、斬られた武器はその場で爆発四散した。

「次だ!」

 勇気は自らを鼓舞するように独り叫んだが、そこを《剱》がビームライフルで横槍を入れた。彼はそれを着弾すれすれで躱すと、光弾が飛んできた方へ方向転換した。

「……勝負だ」

 勇気は呟き、標的を《剱》に変更した。ペダルを踏みつけ、勢いよく目標の方へと飛んでいく。その隙に三機の《蓮華》は、恵良と賢を相手にしている六機の《燕》と合流しようとブースタを吹かした。



 恵良は賢の援護を受けながら六機の《燕》と戦闘している時、勇気の方にも注意を向けていた。彼の乗機が、《蓮華》二機のスナイパーライフルを叩き落したからである。更にその後の《剱》の攻撃を華麗に避けた光景を見て、彼女は内心で舌を巻いていた。単機で狙撃部隊と隊長機に突っ込み、見事に敵を弱体化させている。いくら機体の性能差があるとはいえ、彼女には彼の芸当を真似することができる自信がなかった。

――勇気って、やっぱりすごい!

 恵良が頭の中で微かに勇気のことを考えていると、二機の《燕》ががら空きの《ウォリアー》に向かって突っ込んできた。彼女はそれに気づき、慌てて二本のビームソードを振り回して応戦する。見事に二機を弾き飛ばしたが、彼女はため息をついた。

 すると、賢から通信が入る。

『恵良さん、どうしたんですか? 大丈夫ですか?』

「す、すみません! 大丈夫です。いけます!」

 恵良は心の中で反省した――戦闘に集中しなければ……。

 しかし、これで恵良の心に火が付いた。自分も頑張って、先程の勇気と同じくらいに活躍しよう、と。

――勇気、私も負けられないから。お父様に認めてもらうために……! 



 《剱》は迎撃態勢を取っていた。ビームライフルは腰部にマウントしており、左腕の内蔵シールドと右手に持ったビームソードを展開している。勇気が近づいてくると分かると、彼のワンテンポ遅れて飛び出した。

 《ライオット》と《剱》の距離が殆どゼロになる。両者が、ビームソードの一撃を繰り出した。

 何かが破裂したような音とともに、互いの一撃がぶつかる。

 数秒のつばぜり合いの後、押し返したのは《ライオット》だった。《剱》がのけ反ると、勇気は機体を巧みに操ってその背後へと回り込んだ。その瞬間、《ライオット》はビームソードをマウントしてビームライフルをグリップ、相手のビームソードを右手ごと撃ち抜いた。《剱》の右手は爆発四散し右腕が消失、本体のバランスが崩れる。

「これで――!」

 勇気の攻撃は止まらない。今度は武器を切り替え、ビームソードをグリップして展開。そのまま《剱》の頭部を薙ぎ払おうとする。

 しかし、相手もやられてばかりではいなかった。まだ展開されていたシールドで、勇気の攻撃を防ぐ。しかし、《剱》はそのまま海に叩きつけられんばかりに吹き飛んだ。着水しないように、ブースタを噴射して堪える。

 勇気は攻撃を絶対に外さないようにと、《ライオット》を急降下させてビームソードをグリップ、《剱》を無力化させようとする。《ライオット》はグングンと速度を上げ、隻腕の《剱》へと近づく。

 しかし、ここでまたしてもビームライフルによる横槍が入った。放ったのは、一機だけ隊を離れた《燕》であった。勇気がハッとしたような顔でそれを見つめる。第1部隊隊長も驚いているのか、機体を動かしていない。

「どういうつもりだ……?」

 勇気が呟くと、突然無線に通信が入った。繋がった時の音から、彼はこの無線がSWから繋げられたと察した。恵良か、賢か――彼は一瞬考えたが、声の主は勇気が想像していなかった人物だった。

『よお』

 勇気はギョッとした顔になって無線に耳を傾けた。声の主は、昨晩恵良に絡んで彼に止められた横田であった。

「……なんで、貴方が」

『やっぱり、お前だったか、灰田勇気。決まってんだろ? お前をぶっ潰しに来た』

 昨晩恵良と接していた時とは正反対の声色である。寧ろ、勇気を蔑むような目で見たときに発した言葉の声色であった。

 横田の顔は、怒りで歪んでいた。勇気のことを、心底憎らしく思っているような顔である。

「てめえみてえなゴミが討伐部隊にいることが気に入らねえ! 何ならここで沈めてやらぁ!」

 その様子を見て、第1部隊の隊長も困惑していた。

『横田、下がれ! 陣形を崩すな!』

 しかし、彼は隊長の命令を無視して勇気の方へ突進していった。ビームソードを構えて、ブースタを全力で吹かしている。隊長の《剱》は仕方なく、回り込むようにして右に移動する。

 勇気は、横田が放った『ゴミ』という単語に引っかかっていた。心臓をグサリと刺されたような感触が彼を襲い、集中力を奪う。

「……どうして。どうして俺のことをいきなりゴミ呼ばわりするんですか!? なんで――」

「知りたきゃ教えてやるよ! てめえはなぁ――」



 その時、空が光った。

 それと同時に、回り込んだはずの《剱》が頭部を吹き飛ばされて落下していた。



 その場にいた者すべてが、唖然としていた。

 勇気と横田は、その一瞬の出来事に目を疑った。それと同時に、勇気は周りを確認した。

 上空には一機も確認できない。先程の閃光で、横須賀の部隊と討伐部隊の残りは何が起きたのかもわからずに戦闘を停止し、ただ上空を見上げている。ということは、《剱》を撃墜した犯人はこの中にはいないと彼は結論付けた。

 確認が終わると、勇気は急いて方向転換し、自由落下している《剱》を救助しようと《ライオット》を加速させた。どんどん水面に迫る《剱》に、《ライオット》は手を伸ばす。

「間に合え……っ!」

 《剱》が着水しかけたその瞬間、《ライオット》はそれが展開していたシールドの縁に手をかけた。そして、指でしっかりとグリップする。掴んだことを確認した勇気は、すぐさまブースタを垂直方向に噴射させる。ペダルを潰れんばかりに踏み込み、自分もろとも水没するのを防ごうとする。

 勇気が叫びながら引き揚げた結果、なんとか隊長も彼も無事で、水没を防ぐことができた。周りからは――横田と雪音以外からは――大歓声が巻き起こった。



 勇気のことが気に食わない横田は兎も角、雪音は手がふさがっておりまともにその現場を見ることができず、歓声を上げなかった。管制室のレーダーを見ながら、キーボードを物凄いスピードで叩いている。

 すると、レーダーに三つの点が表示された。一つは微動だにせず、残りの二つは尋常ではないスピードで日本へと向かっている。雪音がすぐさま放送をオープンチャンネルに切り替える。

「喜んでいる場合じゃないぞ。ついに……奴らが現れた」

 雪音がマイクに向かって叫ぶ。彼女の声に、その場の全SWが反応した。

「『ナンバーズ』が出現した。さっきの奴は狙撃特化型の『ファイブ』だろう。あと二機が、本土に進出しようとしている。私が今すぐ横須賀に連絡を入れるから、お前たちは『5』の撃墜に専念しろ。いいな?」

 横須賀・千歳・猿ヶ森の隊員から、ウォークライの如く呼応の声が上がる。討伐部隊の三人は雪音に対して、了解、とこれまでにない大きな返事で応えた。それを確認した後、雪音は横須賀基地に連絡を入れる。

「『ナンバーズ』が出現した。二機向かってくる。おそらく『2』と『フォー』だ。本土に進出されないように、うちの烏羽と星含むSW部隊を出してくれ」

 雪音はそれだけ連絡をすると、先程光ったところを凝視して考えた。

――奴は、何を狙撃しようとした……?

 雪音はすぐに、撃墜される前の《剱》の方向を確認した。すると、その時の《剱》はちょうど内陸の武器庫を背にしていることに気が付いた。そして彼女はフッと息をついた。

「狙いは……国会議員か」

 武器庫の近くでこの軍事演習を視察している国会議員たちを狙撃して殺す――そういう算段であると、雪音は想定した。狙撃しようとしたら偶々《剱》が射線上に来て、頭部を撃ち抜かれた、そして光弾の勢いが殺がれて、地面に着弾までには至らなかった――彼女は推察した。すぐに彼女はオープンチャンネルで事態を知らせる。

「奴らの狙いは、この軍事演習を視察中の国会議員たちだ。先程の演習で武器を失ったものは、彼らの警護に回れ」

 雪音の叫びを受け、《蓮華》二機が武器庫へと向かった。

――また現れたか。今度こそは……

 雪音は拳を握りしめ、空を見上げていた。



 雪音の一報を受けた横須賀基地は、騒然としていた。出撃準備をする兵士たちと、SWの整備に追われるメカニックたちでてんやわんやになっている。

 その喧騒の中、礼人と雪次は既に自らのSWに乗り込み、出撃準備を終えようとしていた。二人の表情は、いつになく固い。

「……相手は『2』と『4』らしい」

 雪次が礼人に通信を入れる。それに礼人は、静かに反応した。

「俺たちが初めて戦った野郎どもか」

『ああ』

 礼人は、心の中で沸々と闘志と復讐心を燃やしていた。今の彼は、傍から見ると落ち着いて見えるが、中身はダイナマイトのように今にも爆発しそうになっている。

「潰してやる。俺たちが必ず」

「同意だ。やるぞ」

 二人は静かに操縦桿を握った。

 離陸はもうすぐであった。



 高度一万メートルを超える上空。SWのレーダーならば届かないような場所に、それはいた。

 細い体躯で刺々しい見た目をした漆黒の機体。モノアイは不気味に赤く光っており、機体の全長に迫らんとする長さを誇る、まるでバズーカのような砲身を持つ大型のスナイパーライフルを右腕で抱えている。左肩部には、白い太文字で『5』と書かれてある。さらに左腰部には、ビームソードの発振器のような形をした筒状の物体をぶら下げている。

 『ナンバーズ』の『5』である。

 それは先程、この位置から反動の強い射撃武器で地上の人間を狙撃しようという人間離れした技をやってのけようとした。結局、思わぬ邪魔が入り失敗してしまったが。

 そしてそれは、狙撃に失敗したので、位置を変えようと大きく動き始めた。これだけ重厚なスナイパーライフルを抱えているにもかかわらず、『2』や『3』と同じくらいの速さで動いて狙撃のポイントに移動し始めた。



 赤い一つ目が、再度不気味に煌めいた。




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