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革命ガ始マリマシタ  作者: XICS
船出と始まり
11/72

ダーケスト

 勇気が目の前で狙撃されて早々と脱落したのを見て、恵良は戦慄した。彼の名前を叫ぶことすらできなかった。賢のSWが装備しているスナイパーライフルは、《蓮華》のものよりも威力や射程距離が違いすぎることを実感した。

 しかし彼女が何よりも驚愕したのは、勇気は――勿論恵良も――相手のロックを外そうと動きながら接近していたのに簡単に動きを捕捉されて撃墜されたことだ。こればかりは機体の性能ではなく、パイロットである賢の技量が高いことが見て取れる。

 恵良が戦慄して《燕》の動きがおかしくなったのを、賢は見逃さなかった。彼はコクピット内で表情一つ変えることなく照準を恵良に定め、彼のSWはスナイパーライフルの引鉄を引いた。

 しかし、恵良の《燕》はもう賢のSWを目視できるところまで近づいていた。スナイパーライフルの銃口を向けられていることに気付いた恵良はブースタを垂直方向に急速に吹かし、ロックを外そうと試みた。狙い通りスナイパーライフルのロックは外れ致命傷を免れたものの、膝から下の左脚部をビーム弾によって抉られた。機体を襲う振動とGに彼女は呻きながらも、目をしっかりと開けて今倒すべき相手を見据える。

「この距離なら――!」

 恵良の《燕》はビームライフルをグリップ、賢のSWとの距離が七〇〇メートルになるまで近づいた後、三発発射する。しかしそれはビーム弾を軽々と横移動だけで避け、スナイパーライフルからショットガンのような武器に持ち替えた。《燕》もビームライフルをマウントしビームソードをグリップ、そのまま一直線に突進する。恵良は、この距離なら狙撃はされないと踏んだ。四〇〇、三〇〇、二〇〇と、二機の距離は縮まっていく。しかし、賢のSWは全く動こうとはしない。

 恵良の《燕》はそのままビームソードを突き立てて突進した。彼女が吠える。

 しかし、突如賢のSWが恵良の視界から『消えた』。恵良が唖然としながらビームソードをマウントしようとするが、彼女の真後ろにSWの反応が出ていた。賢のSWは《燕》の後ろに一瞬で回り込んでいた。

 それからの動作は一瞬だった。賢のSWがショットガンのような銃を《燕》の背部につきつけると引鉄を引いた。一回の発射でビームの散弾が目標の胴を鉄くずに変え、メインブースタとジェネレータを燃え上がらせた。中にいた恵良は衝撃で悲鳴を上げ、シミュレータのモニタは元のブルースクリーンに戻った。

 二人は、一機の狙撃特化機体に、なす術もなく撃墜された。



 早々に撃墜されて唖然としていた勇気は、『着水』して画面が真っ青になった時に我に返った。そして今の自分の技量では全く相手になっていないことを実感させられた。

 第3部隊に所属していたときは、模擬戦では《蓮華》の狙撃など全く問題なく躱していた自分が、たった一発で撃墜させられたという事実が心に突き刺さっていた。『ナンバーズ』との数多の戦闘経験と強化された機体は伊達ではないと、勇気は痛感した。

「これが……討伐部隊の実力――」

 勇気が呟き、拳をギュッと握りしめる。

 勇気が呟くと、まるでそのつぶやきに呼応したかのようにスクリーンが大海原を映し出した。彼が驚いてスクリーンを見つめると、目の前には先ほど勇気が撃墜させられた賢のSWが浮遊していた。隣には恵良の《燕》もいる。彼の無線に、賢から通信が入る。

『二人ともまだまだですね。まあ、最初はこんなものでしょうか。恵良さんはまあまあ捕捉できていたと思いますが……少し油断してましたね』

 賢の言葉から、自分が撃墜された後すぐに恵良も撃墜されたことを勇気は知った。二人があっさりとやられても、賢の口調は穏やかであった。

「……賢さん」

『何でしょうか?』

 勇気は賢のSWをモニタ越しにじっと見つめる。額からは一筋の汗が流れている。

「もう一度、いや、自分たちが賢さんを撃墜できるまで手合わせをお願いします」

『いいでしょう。積極的ですね』

『私も、お願いします!』

 勇気の言葉に、恵良も呼応する。

『二人とも積極的ですね。ただ二人ともやる気があるのはいいですが、ばてない様に気を付けてくださいね』

 賢は苦笑しながらそう言うと、乗機を全速力で退避させた。再び、二人の訓練が始まった。



 賢がSWを退避させてから数分経っても、勇気は動きだしていなかった。恵良も同様に、彼の動向を窺って《燕》を動かしていない。たまらず恵良は彼に通信を入れる。

「勇気さん……、どうしたんですか?」

 勇気は俯きながら賢が言ったことの意味を考えていた――なぜ恵良は『まあまあ捕捉できていた』のか。彼は恵良が通信を入れて少し経ってから通信を返した。

「恵良さん――どうやって捕捉したんですか?」

『えっ……』

 勇気の問いかけに、恵良は口を噤んでしまった。あの時は賢を追いかけるのに必死になっており、戦略も何もない状態で突っ込んでいったことを自覚していたからである。それでも、何も返さないのは失礼だと思い、彼女は勇気に通信を入れる。

「そ、それは――、無我夢中で追いかけていたのでどうやって捕捉したのかはあまり……覚えてないです」

 恵良の答えを聞き、勇気はまたも俯いて考え始めた。今までの模擬戦で行っていた彼の方法――第3部隊時代の訓練通りに行っていた――は通じず、唯々捕捉して撃墜しようと考えて必死に相手を追っていた恵良は少しだけだが自分よりも長く生き残り、何より賢と肉薄した。

「……分かりました。今度は連携せずに一人一人で行きましょう」

『……は、はい! でも、どうして』

 恵良の問いを無視し、勇気は《燕》のブースタを吹かして上空へと飛び立った。自分一人だけで立ち回れば、何かが見えてくるかもしれない――彼は闘いに関するヒントを得た気がして、限界間近まで《燕》のブースタを吹かしながら賢をレーダーで探し始める。

「ちょ、ちょっと――!」

 恵良は呼び止めるが、勇気は止まらず恵良の《燕》からどんどん遠ざかる。憮然とした表情をしながらも、彼女は彼に何か考えがあると思い、別行動を取ることにした。

 このとき恵良は、勇気のことを無意識に信用していた。彼女の中に、勇気についての何かが芽生えかけていた。



 勇気はレーダーで賢のSWを捜索しながら、先程の一戦で自分が撃ち抜かれたことを思い出していた。今までの訓練はもう通用しないことは、『ナンバーズ』のSWとの初戦闘とその一戦で漸く彼の身に染みた。『ナンバーズ』のSWは日本軍のSWとは比べ物にならない力を持っていることを知らされた。しかし彼は、臨機応変に対応すれば、低スペックなSWでも『ナンバーズ』のSWに一矢報いることができることも経験していた。実際、彼の行動がなければ、『3』の腕部と火器を落とすことはできなかった。

――今度は同じ間違いはしない。

 勇気が操縦桿を強く握り、ペダルを踏む力も強くなる。勇気はその場その場で動きを変えることを第一に考えようと決めた。

 すると、勇気の《燕》のEセンサに反応が現れた。センサを確認すると、賢のSWの反応が二時の方向五〇〇〇メートル先に現れている。彼は一直線に賢のSWのある方向へと《燕》を前進させた。しかし、今回は前回よりも慎重にレーダーを確認しながら前進している。勇気は賢のSWとの距離を確認しながらビームライフルを取り出し、スコープを覗いて賢のSWの姿を確認する。スコープで確認すると、うっすらとだがそれを確認することができた。

「――構えてる!」

 Eセンサに反応があった時に勇気は感づいていたが、賢のSWはスナイパーライフルを構えてスコープを覗き込んでいた。彼の《燕》はライフルのスコープを覗きながら勢いよく飛び出した。この時彼はライフルのスコープで賢のSWを捉えてはおらず、それがグリップしているスナイパーライフルの引鉄を捉えていた。

 スナイパーライフルから射出されるビーム弾は、見えてからでは無傷では回避できない。そこで勇気は、引鉄を引く指の動きを見て相手の攻撃を避けようと思い至ったのである。ライフルのスコープという小さい視野で相手のSWの指の小さな動きを見極めるという無理難題に近い芸当を、彼はやろうとしていた。無謀だと彼自身も思っていたが、考え付いた策はこれしかなかった。

 勇気の《燕》と賢のSWとの距離がどんどん詰まっていく。勇気はスナイパーライフルにかけられた指から視線を放さずに突進していく。勇気の額から汗が滴り落ち、唇は真一文字に結ばれている。

 すると、賢のSWが構えているスナイパーライフルの銃身が少しだけ持ち上がった。それと同時に、引鉄を引く指がわずかに動き始めたのを、勇気は見逃さなかった。

――来る!

 勇気は《燕》のブースタを垂直方向に吹かし、機体を上昇させる。強烈なGに顔を歪ませながらも、ライフルのスコープで賢のSWを捉え続ける。

 勇気の思惑通り、スナイパーライフルの引鉄は引かれ、刃のように鋭い光の弾が銃口から飛び出した。それを見抜いていた彼は、乗機が撃ち抜かれることなく内心ガッツポーズしてブースタを全力で吹かせた。勇気の《燕》は、賢のSWに撃墜されることなくどんどん距離を詰めていく。

「この距離なら――!」

 勇気は《燕》のビームライフルのスコープを覗く構えはそのままに、射撃体勢にいれた。ぐんぐん二機の距離が近づいていく中、《燕》はビームライフルを三発発射した。賢のSWは、スナイパーライフルのリロードに時間がかかっているのかそれをマウントし、もう一方の射撃武器を取り出して勇気の攻撃を横移動だけで避ける。単純な動きで攻撃を避けられ距離を空けられた彼は、賢のSWの機動力に再度驚きつつもビームライフルをマウント、ビームソードを右手に持ち、ブースタを全力で吹かしながら突撃する。

 再び二機の距離が縮まる。互いの距離が八〇メートルになった途端、勇気は機体を左に大きく移動させ攪乱を図った。すると賢のSWが散弾銃を両手で持ち、引鉄を引いた。ビームの散弾が賢のSWの眼前で大きく拡散し、花火のように光る。そのまま正面にいたらスクラップになっていただろうと思うと、勇気の肝は凍り付いた。しかし、彼は意識を賢のSWに戻して再び突撃する。

 勇気がビームソードを、賢のSWのコクピットを切り裂くようにして右から左に薙いだ。それを賢のSWはブースタを後方に吹かして対処する。彼の一撃は、賢のSWが大きく後退したことで失敗した。

「――くっ」

 しかし、その直後勇気の無線から大きく吠える声が聞こえてきた。何事かと思いレーダーを確認すると、賢のSWの真後ろに恵良の《燕》がビームソードを大きく振りかぶっているのが確認できた。振りかぶられたビームソードは、そのまま賢のSWの頭上に振り下ろされる。

 賢のSWは間一髪のところで左腕に搭載されているシールドを展開、恵良の攻撃を防いだ。ビームソードがシールドに干渉した瞬間、大量の火花とともに轟音が巻き散らかされた。

『今です、勇気さんっ!』

「あっ……分かりました!」

 二人は個人プレイで賢に立ち向かっているはずなのに、偶然が重なりまるでチームで追いつめているかのようなプレイになっている。

 恵良が作ってくれた賢の隙に勇気はつけこもうとした。すかさず彼は《燕》のビームソードを再度展開、賢のSWのコクピットめがけて振り下ろした。

 しかし、勇気の《燕》の視界を、散弾銃の銃口が遮った。彼が避けようとした瞬間、引鉄が引かれ散弾が再び発射される。しかし、賢のSWは散弾銃を片腕のみで支えていたので、発射の衝撃で銃身が大きくぶれて弾の大半は《燕》の頭上をかすめた。それでも数発は《燕》の頭部に命中し、頭を大きく抉った。

――ここで怯んだら……負けだ!

 撃たれた反動は少ない。勇気は躊躇わず機体を賢のSWが真正面に来るように移動し、ビームソードを振り下ろす。

 しかし、寸でのところで賢のSWが恵良の《燕》を無理やり押し返し、左腕を振り上げた。展開式のシールドが勇気の《燕》の手関節に当たるところにぶち当てられ、ビームソードはその衝撃で手から離れてしまった。手から離れたそれはそのまま青い海の底へと沈んでいく。賢のSWは勇気の《燕》が怯んでいるうちに急上昇し、またもスナイパーライフルを構える。真正面には、勇気の機体が捉えられていた。

『大丈夫ですか!?』

「……まだ戦えます。それよりも、あれをどうにかしないと――」

 勇気は息を切らしながら恵良に応答する。彼の視線の先には、スナイパーライフルの引鉄にかけられている指があった。彼はそれを睨むように見つめている。

 その時、恵良の《燕》がチャンスとばかりに飛び出した。今度はビームライフルを構えている。恵良はそれをごく至近距離で放とうとした。銃口はがら空きのコクピットを向いている。

「これで――終わりっ!」

 恵良がビームライフルの引鉄を引こうとする。それに気づいたのか、賢のSWは急きょ目標を彼女に変えた。

 賢のSWの頭とスナイパーライフルの銃口が恵良の《燕》のコクピットを向いた途端、恵良の《燕》は光弾で撃ち抜かれた。

 まるで早撃ちのガンマンのような動きだったが、弾はぶれずにコクピットを貫き、目標を海へと落とした。恵良はここでリタイアとなった。

「恵良さんっ! くそ……っ」

 勇気は、レーダーで落ちていく恵良の《燕》を確認することしかできなかった。

 しかし、これで勇気に対する隙ができた。それを見逃さなかった勇気はビームライフルを二発賢のSWのコクピットに向けて発射した。賢のSWはそれを咄嗟の判断で右腕で受け止めた。光弾を食らった右腕は、持っていたスナイパーライフルとともに大破し爆発した。その衝撃で賢のSWは大きく吹っ飛び、あわや着水するかと思われるような高度まで落下する。

「食らえぇっ!」

 勇気が大きく吠え、さらにビームライフルの引鉄を引く。しかし、賢のSWもしぶとかった。着水するギリギリの高度まで落ちた後急速に方向転換し、勇気が放った一撃をまだ残っているシールドで防いだ。この一撃でシールドは大破してしまったが、賢のSWは散弾銃を構えて勇気から逃げるように飛び出した。

 勇気も諦めてはいない。全力で引く賢のSWに対し、勇気も正面からビームライフルを突きつけそれを追う。《燕》に残っているエネルギーは残り少ない。勇気はこの一撃にかけるつもりで引鉄を絞り始める。

 しかし、遅かった。

 勇気が賢のSWの目前まで飛び出した時、それの散弾銃の銃口は、一瞬のうちに勇気の《燕》のコクピットに突き付けられていた。勇気が呆然としているうちに、散弾銃の引鉄は引かれ、《燕》は木端微塵になってしまった。



 撃墜された勇気は、ブルースクリーンになったシミュレータの中で天を仰ぎながら愕然としていた。それは恵良も同様で、二人は自分たちの実力のなさを再びまざまざと見せつけられていた。二人は息が切れ、大粒の汗を流している。

 すると、シミュレータに再び先程の戦場が映し出され、賢の無線が二人の耳に飛び込んできた。

『二人とも、お疲れさまでした。これだけ捕捉できれば、ナンバーズと戦うときにもある程度は対応できると思います。まあ、勝てなければダメですけどね』

 二人は賢に元気のない返事を返す。

『でも僕のSW、《ダーケスト》に量産型のSWでこれだけついていけるとは……。正直凄いと思いました。これなら、雪次や礼人にもついていけるかもしれませんね』

 賢は二人に惜しみない賞賛を送った。しかし、二人は素直には喜べなかった――その証拠に、この賞賛に二人は無線で反応しなかった。返事のない二人を心配した賢は、再び無線を入れる。

『どうしましたか? 大丈夫ですか』

「……もう一回お願いします」

 勇気は賢にそれだけを伝えた。しかし、賢は勇気からその言葉だけであらゆる心情を汲み取ることができ、感心させられた。

「私も……私ももう一回やりたいです! お願いします!」

 恵良も賢に無線で訴えた。賢には、二人の無線から彼らの必死さが伝わっていた。早く先輩たちに追いつきたい、強くなりたいという焦りも伝わっていた。

『そんなに焦らないでください。また身体を壊したら元も子もないでしょう。それに、僕もかなり疲れたので休みたいですし……。まずは少しだけ休みましょう。それから訓練を再開させましょうか』

 二人の無線に、賢はにこやかに応えた。二人はヘルメットとシートベルトを外し、はい、と大きな返事をした。



 少しの休憩時間の間、賢のSWである《ダーケスト》はシミュレータから消えている。賢はシミュレータから出て休憩を取っているが、二人はシミュレータ内で休憩を取っていた。休憩の間、二人は無線で会話をしている。

「勇気さん、どうしてさっきは連携しないで一人でいったんですか?」

 恵良が勇気の先程の行動の理由を尋ねた。

「……一人で行動すれば、何か得られるものがあるんじゃないかと思って。そう思って個人で行動することにしました」

『そうだったんですか……。それで、何か見つかったんですか?』

 恵良の質問に、勇気の言葉は詰まった。思い返せば、彼女が自分より長く生き残った賢との最初の模擬戦のように、自身もその場その場で無我夢中になって状況に対応したことしか記憶に残っていなかった。彼はしばらく黙りこくってしまった。

 恵良は返事のない勇気が心配になって、無線で彼を心配する声をかける。

「あの――大丈夫ですか? 私、変なこと訊きましたか?」

 恵良の声で我に返った勇気は、彼女に無線を飛ばす。

「……恵良さんのやってたことは、正しいと思いました」

『え?』

「やっぱり、個人でもチームでも、臨機応変に無我夢中に相手を追い続けるしか、敵に勝つ方法はないんだって思いました。あ、後、恵良さんと連携した方が、俺も安心して相手に闘いに臨めて攻撃できるってことも分かりました」

 勇気の顔には、微笑みが浮かんでいた。自分が抱えていた疑問がうっすらとだが晴れた気がしたのだ。一方で恵良は、彼が発した後半の言葉に顔を赤く染めていた。

『わ、私なんかじゃ……まだまだ勇気さんが安心して闘えないんじゃないかと……』

「そんなことないです。恵良さんがいなければ、賢さんをここまで追い詰められませんでしたから。とても感謝してます」

 勇気の感謝の言葉に、今度は恵良が黙りこくってしまった。彼女の頬は一層赤く染まっている。

『……どうしたんですか?』

「な、何でもないですっ!」

 勇気の問いかけに、恵良は無駄に大声で反応した。彼は、なぜ彼女がこんなに大声を出しているのかが分からなかった。

 すると、二人の《燕》の正面に《ダーケスト》が現れた。賢が休憩から戻ってきたのだ。二人はヘルメットを被りシートベルトを締める。二人は一瞬で、訓練の時の真剣な顔に戻った。

『さて、休めましたか? それでは、また模擬戦を始めたいと思います。全力で向かってきてくださいね』

 二人は賢に大きく返事をした。




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