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革命ガ始マリマシタ  作者: XICS
プロローグ
1/72

東シナ海にて

この小説はフィクションです。

 日本国防軍沖縄県嘉手納(かでな)基地。その滑走路上には三機の軍事用人型兵器、『スローター・ウェポン(Slaughter Weapon:SW)』が飛び立つ準備をしていた。《つばくろ》と命名されているそれらのコクピットには、この基地の精鋭である男三人が搭乗している。


「一体全体何なんだ? 中国の野郎どもが久々にやらかしたのか?」

 三機のうちの真ん中の機体に搭乗している男が、荒い口調で無線を入れる。

「詳しい情報は、所属不明の二機の人型兵器ということ以外入っていない。だが、俺たちはただ奴らを撃退するだけだ」

 三機のうちの右に直立している機体に搭乗している大柄の男は、先程の男とは対照的に落ち着いて状況を呑みこもうとしている。

「詳しい情報はそれだけ……。不気味ですね」

 左側に立っている機体に搭乗している眼鏡をかけた男は物腰柔らかに呟いたが、表情には少し焦りが見えている。


 男たちはモニタに映し出される情報を確認しながら発進の準備が終わるのを待っている。スクランブル発進なので周りもバタバタとしており、三人も例外ではない。

 漸く、全てのシステムがオールグリーンとなった。滑走路のの信号も全て緑色に灯っている。


烏羽うば礼人らいと、《燕》、出るぜ!」

黒沢くろさわけん、《燕》、出ます!」

ほし雪次ゆきじ、《燕》、出る!」

 滑走路を疾走する三機の《燕》が、ブースタからガスバーナーから炎が出ているかのような重低音とともに噴射炎を出して大空に旅立った。



 東シナ海上に浮かんでいるとある無人島を通り過ぎた辺りで、三機は一旦待機した。三人の中のリーダー格である礼人が、賢と雪次に通信を入れる。

「司令部の話だと、この方角から来るらしい。警戒しろよ」

『分かった』

『了解です』

 三人は《燕》のレーダを随時確認しながら、未確認機体の出現を警戒していた。スピードや武装の有無等がはっきりと知らされていない分、余計に緊張が彼らを襲う。

 彼らが無人島の上空で待機し始めて数十秒後、三機のEセンサがけたたましく鳴り始めた。三人が一気に未確認機体が向かってくる方向に注意を向け始めると、場の空気は不気味なほど張りつめ、三人の緊張はピークに達する。

「……見えました。尋常じゃない速度で此方に向かってきます!」

 賢がビームライフルのスコープを覗きながら通信を入れた。

「よし。奴らに上陸を許すな! 食い止めるぞ!」

 礼人が先んじて未確認機体に向かって突進した。賢と雪次は、了解、と叫び、彼に追随する。

 礼人が目標の二機を目視できるところまで、距離を詰める。すると、礼人は半ば愕然としながらそれらを確認した。

 二機のうち、一機は雪のように真っ白で、左肩部に『2』と黒い太文字で書かれている。腰部に装着されている武装は、礼人が確認したところライフルのような銃器とビームソードの発振器と分かった。

 もう一機は薄い黄色の機体色であり、左肩部に『4』と黒い太文字で書かれている。腰部に装着されている武装は、両方ともビームソードの発振器のような見た目をしていた。

 二機とも刺々しい見た目をしており、日本のSWとは異なりモノアイである――形に関しては、相手があまりにも速く動いているのでそれらの情報しか得ることができなかった。今まで見たことのない見た目に、三人は軽い悪寒を覚えた。

 そして三人が何よりも驚いたことは、《燕》よりも何倍も速い速度で、二機が水面を切り裂きながら此方に向かってくることだった。空気を切り裂く音がコクピットの中にいても不気味に響く。

 このままではすぐに此方に来てしまう――礼人は焦り、《燕》のペダルを踏みつけた。

「行くぞぉぉ!」

 礼人は目を見開き雄叫びを上げ、ビームソードの発振器からビーム刃を展開、そのまま未確認機体に突っ込んだ。

 みるみるうちに相手との距離が縮まる。

 白い機体との距離が七〇メートルになった瞬間、礼人の《燕》はビームソードを横に薙いだ。相手がこのまま突っ込んでくると彼は予測し、左から右へと振る。

 この速度で突っ込んで躱せる筈がない――彼は思っていた。

 しかし、彼の予測は外れた。

 白い機体は飛び跳ねるようにして上に移動し、彼の攻撃を躱した。敵は礼人が隙を見せたのにも拘らず彼を攻撃しようとせず、そのまま全速力で《燕》を引き離しにかかる。

「――くそっ」

 礼人は毒づき、機体を急停止、方向転換し、未確認機体を追い始める。

 礼人に追随していた二人は、彼の攻撃が外れたのを確認するとビームライフルで一斉に二機を狙い撃った。照準を合わせて何度も引鉄を引き、ターゲットを撃ち抜こうとする。しかし、二機は光弾が来る位置を分かっているかのような動きでスルスルと避け続ける。射撃の腕が嘉手納基地内で一番立つ賢でさえ、二機には当たるどころか掠りもしなかった。

「何だ……こいつらは!?」

 雪次が驚嘆の声を上げると、二機が彼と賢の《燕》の間をすり抜けた。その時にも敵はすれ違いざまに賢と雪次に攻撃は仕掛けず、ただ異様な速度で通り過ぎるだけだった。

 俺たちの壁をいとも簡単に突破されてしまった――三人は今まで感じたことのない焦りを感じながら、未確認機体を追い始めた。

 三人の頭の中は、焦りと恐怖で一杯になっていた。日本のSWこそが、日本軍の練度が最強であると思いこんでいたが、その考えが崩壊しかけていた。

 三機の《燕》と二機の未確認機体との距離はどんどん遠くなる。ついに二機は、近くの無人島に上陸しようとする姿勢を見せた。

――まずい!

 礼人は奥歯を噛み締め、機体のペダルを目一杯踏んで加速させる。未確認機体に日本の土を踏ませることは何としても避けなければならない――それだけを考え、どんどん離れていく二機を睨みつける。

 しかし、二機は無人島の上を極低空飛行で巡回し続けていた。上陸をしようと思えばいつでもできる筈であるが、何故かしようとしない。ビームソードやビームライフルの攻撃を軽々と避けたりそれといい、まるで三人を挑発しているかのような行動に、礼人の頭に血がさらに上った。

「この野郎があぁぁっ!」

 礼人は激高し、《燕》のビームソードを再び展開、そのまま二機に突っ込んだ。無線からの賢と雪次の静止の声には全く耳を貸さず、全速力で吶喊する。急にかかったGに彼は一瞬顔を顰めるが、叫び声をあげながら敵を倒さんと二機に突っ込む。

 すると、礼人の《燕》が突っ込んでくることに気付いた二機が彼のほうを向いた。その瞬間、彼はそれらの単眼と目が合い、何とも形容しがたい恐怖を感じ取った。背筋がゾクリとするが、彼は虚勢を張るように叫びながら《燕》を二機に突っ込ませる。


 その瞬間ニ機が蜃気楼のように礼人の視界から消えた。《燕》がその場で静止する。


「なっ――」

『礼人! 左右からくるぞ!』

 雪次が大声で礼人に呼びかけるも、時すでに遅し、であった。


 礼人が気づいたときには既に、彼の《燕》の左腕と右腕は白い機体にビームソードで切断されていた。更には、駆け付けた賢と雪次でも見切ることのできない速さで左脚と右脚も切断され、彼の《燕》は完全に無力化されてしまった。


「……嘘だろ」

 礼人が呟いた直後、金属がひしゃげる不快な音が聞こえると同時に、まるでカメラのフラッシュを眼前で浴びたような感覚に陥った。

 短い呻き声を上げ、彼が目を手で覆うと、モニタは黒く染まっていた。その瞬間、彼は起こったことを理解して絶望した。


 彼の《燕》の頭部は捻じり切られていた。暗転したモニタが、彼の絶望しきった顔を鏡のように映し出している。



 それは、今まで不敗だった日本のSWが完全に敗北したことを意味していた。最強の機動兵器が所属不明の敵によって、只のプカプカと浮かぶ金属の塊になり果ててしまったのだから。

 無力化された礼人は勿論、それを間近で見ていた賢と雪次も絶望の眼差しで未確認機体を観ている。機動力、出力ともに、日本のSWの比ではないことを思い知らされた。



「……くそっ!」

 呆然としていた状況から一転、雪次が我に返り、礼人を戦闘不能にした二機に立ち向かわんと《燕》のブースタを吹かす。それを見た賢も雪次に追随し、ビームライフルを構えながら未確認機体へと突進する。

 どんな相手であろうと立ち向かわなければいけない、倒さなければいけない――二人の頭の中にはそのことしか無かった。

 雪次の《燕》がビームソードを構え、白い機体に向かって振り下ろす。その横で賢の機体はビームライフルを構え、ターゲットの逃げ場を無くすために相手が逃げると思われる方向へと引鉄を引いた。

「食らえ!」

 《燕》がビームソードを振り下ろす。白い光の線が、空中に引かれる。

 捉えた――と思われた。

 しかし、雪次の視界からは白い機体はおろか薄い黄色の機体も消えていた。その様子は後方にいた賢も目撃しており、まるで瞬間移動のように雪次の《燕》の後ろに、それらはいた。


 その一瞬後、雪次の機体は礼人のそれと同じように解体された。ただの鉄屑と化した四肢が呆気なく落下し、頭部はカメラアイごと握り潰された。


 賢はそれを力なく見つめて、過呼吸のように息を荒げ始めた。残りは自分だけだ。

 賢は覚悟を決めたように《燕》のビームライフルを乱射した。操縦桿を握る手は震えているが、狙いは正確に絞っている。その筈なのに、当たらない。ロックをしているのに、敵は淡々とそれらを避ける。

 すると、敵が二機とも賢の方へと突進した。尋常ではない速さで迫りくるそれを、彼はフリーズした身体で見守ることしかできなかった。


 そして三機目の《燕》が、達磨のような格好にされて無力化された。


 これを以て、日本のSW最強神話は完全に崩れてしまった。後にこの事件を引き起こした人型兵器は、左肩部に数字が書かれていたことから『ナンバーズ』と名付けられ、日本の平和の脅威に指定された。





用語説明


『スローター・ウェポン(Slaughter Weapon:SW)』

戦車や戦闘機よりも高火力・高機動で、ビーム兵器や実弾兵器問わず様々な火器が使用可能な軍事用人型兵器。これを日本が先んじて開発したことにより、日本はアメリカと肩を並べる軍事大国となった。日本において、SWの開発・製造は『白金しろがね重工業』が独占している。

日本のSWは性能が他国のそれに比べて高く、兵士の練度は最高クラスである。故に戦闘力は高く、日本を軍事大国たらしめた一つの要因となった。


『国防軍』

正式名称は、日本国防軍。憲法が改正され、自衛隊からとってかわった。兵士の練度は高く、この存在とSWのおかげで、日本はアメリカから軍事的な独立を果たした。


ここで出てきた機体は、追々説明します。

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