第九話:兄とコロッケ少女と…
1200円…。
いや、別にね。良いんだよ?
ただ、80円のコロッケにして…15個。お腹、壊さなきゃ良いんだけど…。
「ご馳走さま」
このコロッケ少女の服装は水色のシャツにピンクのスカートだ。別段、おかしな点は無いのだが…あれ、何かどっかで聞いたような?
「お礼する」
「え?お礼?…いや、別に良いよ」
どうやら、この少女はコロッケをご馳走して貰った代わりに何かお礼をしたいようだ。
まぁ、確に1200円は小遣いの少ない俺にしてみれば痛い出費だが、別に少女にコロッケを奢ったくらいでお礼だなんて…ねぇ?
「私、殺し屋…」
は?殺し屋?
「お礼…嫌い人殺す」
…つまり、お礼として君が俺の嫌いな奴を葬り去ると?
いやいやいや、君は何を言っているのかな?…て、何それ?妙に見慣れた物なんだけど?
「ん?…コレ、銃」
銃だね。うん、間違いなくリボルバー式の拳銃だね…
「て、駄目ぇぇえっ!!なんて物を持っているですか、君は!?」
意味がわからないよ…。何故、このような少女が拳銃などを持っているんだ?
「と、ととと、とりあえず、その銃はお兄さんに渡そうね?ほら、コッチ…こら、逃げるな」
俺が無理矢理に銃を没収しようとした所、少女は抵抗した。いやいやと頭を振り、一向に銃から手を離さない。
「なぁぁっ!!いい加減にしろぉぉっ!!お兄さん、本気で怒るからなぁっ!!」
子ども、お年寄り、女性には比較的に優しい俺だが、遂に憤怒した!!
だって、危ないだろ。こんな幼い少女が拳銃を持っているなんて、平和なこの国には有り得ない事なんだ!!
「だから、お兄さんに拳銃を…」
「…バン!!」
ぎゃあ、撃たれたぁ!?死ぬぅぅう!?
「て、んな訳がねぇだろ!!早く渡せぇぇっ!!」
この後…こんなやりとりが1時間近く続いたのだった。
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「はぁ、はぁ…な、なぁ。いい加減、渡さない?」
疲れた…。なんなんだこの子のこの体力は、ちょっと普通じゃないぞ?
「嫌っ。これ…大事」
大事って、拳銃だぞ?一体、どんな代物だってんだ。
「とにかく、そんな危険な物、人の多い商店街で…、!?」
何だ…!?少女とのやりとりで気が付かなかったが、いつの間にか商店街から人の気配が消えている…。
少女が拳銃を所持していたので、とりあえず裏路地に移動して話ていたのだが…。
その裏路地まで聞こえていた商店街の賑わいが、先程から聞こえなくなっていた。一体、何がどうなって…
「こんにちは」
!?、いつの間に…?
不意に声をかけられ俺は驚いた。声をかけてきた男は至近距離だったというのに全く気付けなかったのだ。
黒服の男…。温暖化が激しく、日中にて30℃を超す暑さだというのにこの男は汗すらかいていない。
しかし、さっきから気付けない事だらけだ。
静かさを保ったままの商店街に、気配すら感じられなかったこの黒服の男。
「ふふっ、どうかしましたか?」
「いや、別に…」
男は不気味な笑みを浮かべている。
刑事をやっていると何かしらわかる事があるのだが、この男は…ヤバイ!!
もちろん、理屈などは無い。ただ、俺の直感がそう告げるのだ…この男は危険だ!!
アラート!アラート!!アラート!!!…だと。
こんにちは。
第九話目です。話数だけ見ると『葉月君』を超しました…。息抜きが本気に?(笑)
さて、コメディなんですがシリアス路線に乗ってしまいました。
自称殺し屋のコロッケ少女と謎の黒服男…。
この話…兄が、というか空海家が大変な事になる予定です。ただ、行き当たりばったりなのでどうなる事やら…。
では、今回はこの辺で失礼致します。ありがとうございました。
コロッケ少女と黒服男の正体とは?
…しかし、コロッケ少女は無かったかな?(笑)