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第五十七話:交錯する者たちの戦場(3)『修羅と黒ミリタリーの男』




「ぐっぐぐ、うつみを…」




ずさりずさりと藍色の髪をした少女・柊に歩み寄るのは黒いミリタリー服を着た男。




「ふぅっ!?」




男はがしりと地面に倒れる柊を掴み上げると、その手に持つ刃を彼女の首に宛がう。




「死を…死を…死を…」




「ほう、グールがまだこの街に残っていたか…」




「……ぁぁあ?」




そんな黒ミリタリー服の男に髪を逆上げさせた鬼のような男、修羅が言葉を漏らす。



「!?」




そんな言葉を漏らした修羅に気付いた黒ミリタリー男は、柊に宛がう刃を下ろして、じっと修羅の方へと視線を移す。




「しゅら…しゅしゅしゅ…しゅらしゅら…しゅら…修羅らぁぁぁああっ!?」




常軌を逸したように男は声を荒げる。目の前の中国服の男に叫びをあげる。




「きさまが…貴様が、貴様が貴様が貴様が、空海夏樹に確実にとどめをさしておけばぁぁぁあっ!?」



黒ミリタリー男は掴んでいた柊を放り投げると、一目散に修羅のもとへと走り出す。片手に持った黒光りしたナイフを突き立てて修羅へと襲いかかっていく。




「あら、もう、躾の無いグールだわ?修羅様に近づかないでっ!!」




と、それを和服の女が制止する。女は和服の袖から赤い色の扇子を取り出すとおもむろに縦に振り落とす。途端、振り落とされた扇子から幾つもの鋭い刃。クナイが飛び出し、黒ミリタリー男の体に突き刺さる。




「ぐがぁぁあっ!?」




男はいきなりの攻撃に歩みを止め、その場に座り込んでしまう。それに和服の女が、さらにとどめをと扇子を高らかに振り上げる。




「待て、シャロン…」



だが、修羅がそれを制止する。言われた和服の女、シャロンはスパッと扇子を広げ、再び閉じると袖口へとそれを仕舞う。




「……いま、貴様、なんと言った?」




修羅は男を見下ろすと、先ほどの男の言葉を確認する。

空海夏樹にとどめをさしておけば?修羅にはその言葉が、どうにも気になった。空海夏樹とはブラフマーの依頼によりて抹殺を行ったターゲットの名前。先刻の折りに確かにとどめを差した相手である。それを、いま、この男は何と言った?とどめを、さして、おけば!?



「ぐぐっ…そうだ。貴様が確実にあの化け物にとどめをさしておけば…我らは任務に失敗せずに……みなもブラフマー様にも殺されずに…」




「……はっ?はは?は、はははははっ?」




修羅は不意に出てくる己の笑みに気付いていない。だが、修羅は黒ミリタリーの男の言葉に言い知れぬ恍惚感を感じてしまう。




生きている?死んでいない?奴は死んではいない!?度重なる拳を受け、尚も立ち向かって来たあの男。だが、最終的にはやはり鉄をも貫く拳にひれ伏し倒れた相手であった。だから、とどめを差した。高みをめざす好敵手では無かったと、とどめを差した。

だが、とどめを差し損ねた?確実に首から脳へと繋がる神経を、更には大動脈を切断してやったはずだというのに……生きている?効いていなかったというのか?あの無防備の状態で!?




「修羅様?」



言い知れぬ喜びにいままでに見たことのないような修羅の笑みにシャロンは不思議な表情を向ける。




「行くぞ、シャロン、7号!!我はいま真に戦える好敵手を得た。もはや、この街に留まる理由はない。くく、くははは、うつみ……空海夏樹ぃいっ!!」




さっそうとその場を去ろうする修羅にシャロンは戸惑いをみせる。何が修羅をこんなにも喜ばせているのか、シャロンには理解が出来ない。だが、それでも愛する者の笑顔は嬉しいものだから、彼女もより一層笑みを浮かべる。




「ぐぐっ、ま、待て…」




と、黒ミリタリーの男が傷付いた体を立ち上がらせ修羅たちを止める。



「ぐぐぐ、貴様……我を、グールと呼んだな?」




それは一体如何なる理由でそう呼んだのか。それを黒ミリタリーの男は修羅に問う。この中国服の男、何か知っている。自分が何者で何なのかを、この修羅という男は知っている。




「ぐぐが、貴様、我が何かを知っているな?……ぐぐっ教えろ、我は誰だ?我は何者だ?我は何故記憶を失った?ぐぐぐ、我らは一体!?」




『名も無き死霊たち』




そう名付けられた部隊は、皆同じ服で同じ格好。個を忘れた自分たちは、過去をも忘れてしまっていた。何故、組織で戦っているのか。何故、皆疑問を持たずに任務をこなしているのか。自分は知りたい。自分が何者で、誰だったのかを…。だから、聞いた。自分を聞きなれぬ名称で、グールと呼ぶ、この中国服の男に黒ミリタリーの男は問うたのだ。自分は一体、何者なのだ…と。






「あら、修羅様、珍しいわ、このグール。もしかして、自我を持つのかしら?グールは大抵、自我を持たず疑問を持たず、ただひたすらに戦うことだけに生き甲斐を感じるようプログラムされているはずなのに…」




「ぐが、プロ…グラム?」




この女は一体何を言っているのだろうか?プログラム?自我を持たず、疑問を持たず?

一体何を言っている?一体何の話をしているのだ?




「……がががっ、女、教えろ、我は何者だ?」




男はプログラムという言葉を話す和服の女に知っている事を話せと睨み付ける。それに対して、和服の女シャロンはころころと笑みを浮かべながら喋り出した。



「うふふ、組織『クラウン』の学者があまりにも人間には不釣り合いな兵器を作ったわ。ダイヤモンドカットの異名をとるチタネス合金のナイフ」



シャロンはその目線を黒ミリタリーの男が持つ、黒いナイフにへと移す。と、それに気が付いた黒ミリタリーの男がその手に持つナイフを見詰める。




「うふ、あまりにも切れすぎて使う者の腕さえも切断してしまうそれは処分されたわ。それから、ヴィーダルシューズの銃」



次にシャロンは黒ミリタリーの男が腰にかかげるあまりにも馬鹿デカイ拳銃に視線を移す。




「ヴィーダルというのは北欧神話でのフェンリルを殺した巨人の名前。その名前の如く巨大なその銃は人間が使えばその衝撃で体の半分を飛ばすわ。それに耐えたとしても撃ち放った後のその熱量は、人がそれを持つには肌が焼き爛れる覚悟がいるわね〜…」




楽しく饒舌に喋るシャロンは舞を踊るように声を高らかに上げる。




「でもね、それがただの人間じゃ無かったら?」




くるくると回るシャロンの袖がヒラヒラと舞い上がり、黒ミリタリー男の顔を覆い隠す。




「その学者は考えたの。なら、人を超える存在にならそれは使えるんじゃないかって…」




「ぐ、人を超える存在?」




顔を上げる黒ミリタリーの男に、シャロンはにこやかに笑いながら話を続ける。




「私達、アドバンスチルドレンって言うの…。それは、1万と2千分の1の存在。生まれながらに天才と呼ばれる私達は組織『ユニファイ』によって更なる高みを目指して訓練された」




ある者は1つの国を滅ぼして、ある者は幼き時に未開のジャングルへと放り投げられて、そして、全てはデータをもとに人が人を超える力を与えられた。




「諸説、人間の脳ていうのは、右脳左脳とは別の話に天脳と地脳という2つの存在があるの。顕在意識である地脳と潜在意識である天脳。うふふ、この2つの間には壁があってお互いを行き来するには不便な訳なの。主に私達が使うのは地脳の方で、天脳を使うにはかなりの労力が必要らしいわ。でもね、もし、その壁に関係なく天脳と地脳を使えるとしたら…」




とある脳医学の学者が言った。

人は無意識に己の能力を過小評価して脳の可能性に暗示し反抗をする。それは見えない壁となりて、人の持つ脳の力を押し込め、大半を機能させないようにしている。その壁によりて人は、顕在意識の地脳を使えても潜在意識の天脳を使えず。だが、天脳と地脳の壁を超えれるとするならば、人間の進化や学習の効率が大幅に上がるであろう。いや、もし、それを取り外す事が可能であるならば、人は約10%も引き出せない脳の力を100%引き出すことが出来るかもしれない…。




「そこで集められたのが、天才と呼ばれる子どもたち。私達はありとあらゆる場所から連れて来られ、脳の無限の力への可能性をと幾度に重ねられた実験によりその存在に近づけられた」




まさに、異次元アドバンスの世界を目指し生まれた子どもたち。ころころと笑うシャロン。それを腕を組みながら見ている修羅。そして、黙して2人の姿を見詰めている柚子。




「うふふ、まぁ、私達の事はいいの。それでね、組織『クラウン』の学者はそんな人間を超えた人間である私達に目をつけたの…」




「ふん。だが、我ら、そのような武器など使わずとも個体一個で国さえも落とす」



「でも、その学者は諦めなかった。自分の作った兵器を認めさせたかったみたい……だから、私達はある1人のお方のDNAサンプルをその学者に渡してあげたの…」




シャロンはゆっくりと黒ミリタリー男から離れると、ぴたりと修羅の体に自分の肢体を合わせる。



「学者は修羅様のDNAから新たな兵器を作り出したわ。人型に作り出したそれは、私達アドバンスよりもずっと劣るものの普通の人間よりは幾分かはマシな兵器。それに、人間で無いのだから、どんな危険な武器を持たせたって、どんな危険な任務を命じたって、自由。それに、作られたのだから、代えはきくし…ねぇ?」




そう、にこやかに笑みを浮かべるシャロンに黒ミリタリーの男は言葉を失う。それは一体どういうつもりだ?それは一体何が言いたいのだ?いまの話は真実なのか?

そして、もし、それが真実だとしたら、それは…




「ふん、つまり貴様が何者か…」




そんな呆然と佇む黒ミリタリーの男に修羅が面白くもなさそうに声をあげる。黒ミリタリーの男にとって、あまりにも残酷で、あまりにも信じがたい真実。




「貴様は、我のクローンだ…」





こんにちは。

やってしまったオオトリです。何をやったかというと、これでもかってくらいの突拍子もない設定をやってしまったのでございます。


修羅たちアドバンス(異次元とは訳さないのですけど)の正体。それは、天脳と地脳による人を超えた存在。

もはや、よく分かりませんね(笑)



天脳と地脳とは右脳左脳とは別のもので、地脳はいうなれば私たちが行う生活や第五欲求などを司る(?)場所。それに比べて天脳は私たちの潜在的にある能力を司る(?)場所で、まぁ、超能力や特異能力など人の信じられない可能性を秘めた場所という感じです…たぶん。

ただ、地脳と天脳の間には壁があり、簡単には行き来、出来ない訳で。私たちは顕在能力(常にはっきりと使える能力と解釈)の地脳は使えても、その壁により天脳が使えないという事らしいのです…が。壁が何で何がその壁に通るのか、私には理解出来ませんでした(勉強不足です、すいません)



例えば、それはシナプスやニューロンみたいな物で、そのシナプスやニューロンを通して地脳の能力を電気信号で体に伝えれるけど、地脳側からしか行けない天脳は、その何かの壁により電気信号が上手く伝わらず、その天脳にある潜在的能力が私たちには活用出来ない、といった感じではないでしょうか?


んー、言ってて余計意味が分かりませんね(笑)



とりあえず、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。



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