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第五十四話:黒少年と金髪の殺し屋



【月影・ブラフマー衝突、数時間前】




「をい、やしろぉ?俺は帰りたいんだけどぉ?」



金髪をオールバックに決めた黒革のジャンパーを来た男が隣にいる少年に話しかける。




「……月影さんは、俺たちに民間人を救出するように言った」




話しかけられた社という少年は金髪オールバックの男に一言そう言うとさっさと商店街を歩いていく。



なんとも愛想の無いガキだ。金髪オールバックの男はため息をつき社のあとを着いていく。




あぁ、それにしても何の因果か。何ゆえに自分が元いた組織に敵対しなければならないのか。金髪の男はゴールドのライターの蓋をカシャンカシャンと開けたり、閉めたりして商店街の中を歩く。




カルロス=オジエット。

それが金髪の男の名前である。

鼻が高く小綺麗な顔なのだが、つねに締まりのない顔をしておりどこか飄々としているこの男。実は最近までテロ犯罪組織『crown』の殺し屋として活動をしていた男である。

が、ひょんな事にある作戦任務中に月影と出くわしてしまい、その任務を阻止されてしまう。組織にて任務を阻止され失敗してしまうという事はどういう事か、カルロスは知っていた。そのため、任務を失敗したカルロスが組織に帰れず困っていると、事の原因である月影から自分の下で働かないか、という申し出が出てきたのだった。


まぁ、どうせ行く宛などないこの男。月影の提案にかなりの高給取りで了承したのだが…



(はぁ、やっぱやめときゃ良かったかなぁ?いくら、儲かるからって直属の上司がガキって……)




こんな燃え盛る商店街で誰が生き残っていようものか。さっさと帰ってビールでも飲みたいぜと金髪の男、カルロスは再び大きくため息をつく。




「兄はきっとここら辺にいるです。柚子も早く見つけるです」




「……わかった」



おや?とカルロスの眉がピクリと上にあがる。声のする方向には少女が2人。黒というより藍に近い色の髪をしたピンクのトレーナーを着る少女と淡い水色の髪をした赤いトレーナーを着る少女。



(なんとも社の勘は鋭いね。まだ逃げ遅れた民間人がいるとはね)



やれやれとカルロスは何やらキョロキョロと周りを見渡している2人の少女に近寄っていく。




「ヘイ、リトルレディ達。ここは危険だ。俺と一緒に避難所まで避難しな」




「外人さん、日本語上手なのか下手なのか分からん喋りですね」




「……夏樹探す……邪魔しないで」




カルロスの胡散臭い日本語に警戒心マックスの少女2人。それもそのはず、何者かの襲撃で燃え盛る街中。怪しい外人に胡散臭い日本語で喋りかけられたとしたら、誰だって警戒をするというもの。むむむっとカルロスを睨み付けてくる2人の少女。




そんな2人にやれやれ、大人のレディなら口説きながら警戒心を解くんだが、とカルロスはポリポリと頭のてっぺんを掻く。




「……あぁー、そうだ。やしろぉー、やしろぉ。民間人がいたぞぉい」



「……仲間呼んでます」



「……やる!」




「んっ?やるって?ヘイ、ブルー・リトルレディ?何を…ゴッォ!?」




それは魔王の一撃!2人の少女を見つけたカルロスだったが、自分に警戒心マックスなので代わりに社を呼ぼうとした瞬間。カルロスの腰の下辺りにきた強烈な一撃。攻撃をした水色の髪の少女にとって、まだ幼い故にそんな事は与り知らぬといった所なのだろうがカルロスが受けた強烈な一撃、その場所を…男子、其所を急所と言う。



水色の髪をした少女の一撃はあまりにも理不尽かつ無遠慮きわまりない一撃であった。地面に転がりこみバタンバタンと股を閉めながら膝から下の足を打ち鳴らすカルロス。要は金的を喰らって悶絶中なのだ。ゴロゴロと地面を転がり回るカルロス。地面、商店街、空、地面、商店街、空、地面、商店街、空と交互に交互にカルロスの視界に入ってくる。




一段落して、うぐぐっ…と地面に顔を埋めて唸っているカルロス。先ほど視界に入ってきた商店街の商店『八百屋・加賀』という名前が頭から離れない。いや、そんな余計な事はどうでも良いのだが、あまりの痛さにそんな余計な事でも考えていないと気が狂ってしまいそうなのだ。




「柚子、よくやったです!さすが、空海家の三女です!」



「むふぃ…頑張った」



少女2人は何やら誇らしげに語らっているが、大事な大事な男の象徴に無遠慮な攻撃を加えられ悶絶しているカルロスにとってもはや、それは冗談では済まされる事ではなかった。




「なにをしている、カルロス?」




と、そんな2人の少女とカルロスの前に黒い服を着た少年が現れる。社である。彼はなにやら地面に顔を埋め、尻を空に向けて、くの字の体勢で腰の後ろ辺りをトントンと叩いているカルロスに軽蔑の視線を送っている。



「新手です」

「……新手?」



「違うっで、いづでんんだろぉ?リトルレディ達、俺らはマジで君らを助けに…」



「……カルロス、小さな子にまで手を出したのか?だから、こんな警戒心を抱いているのか?変態なのか?カルロスなのか?」



「ォォォオイッ?なんだ、なんで変態の後に固有名詞で俺の名前がきた?なんだ変態とカルロスは同義語なのか?もしくは類義語なのか!?」




カルロスは未だ腰引ける出で立ちで少女2人と黒少年に突っ込みを入れる。だが、社はそれを全く無視して2人の少女に話かける。




「……君たち、この男の言うようにここは危険だ。少し遠いが避難所があるから俺達と一緒に行こう」




カルロスは今までに見たことの無いくらいの笑顔な社の顔に驚愕する。なるほど、これが世に言う営業スマイル?そんな事をカルロスが考えていると気付いているのか、いないのか、社は構わず2人の少女に笑顔で避難するよう促す。だが、少女達は一向にうんとは言わない。




「……私達にはやるべきことがあるです。兄である空海夏樹を探すです。だから、まだ避難なんて出来ません」



「……夏樹知る?知らない?」




どうやら、この2人の少女は探し人がいるようだ。よく見ると所々に怪我や汚れが目立っている。よほど走り回ったのだろう。彼女たちの腕に持たれるお揃いのクマの人形も燃える街のすすだらけであった。




「空海、夏樹だと?」




と、いきなり、聞き覚えのない声が社とカルロスの後方から聞こえる。その声に社とカルロスは一斉に後ろを振り向く。



「くっくくく、貴様ら空海夏樹の関係者だな?くはっ、くははは、運がいい。俺は運がいいぞ。あのバケモノを取り逃がした責任でブラフマー様に殺される所だったが…くくく、貴様らを殺せば俺の命は助かりそうだなぁ?」




そこに居たのは黒服ミリタリー仕様の男。体に大量の手榴弾を掲げ、手には軍用ライフルが構えられており、こちらを見る顔には暗視ゴーグルが身に付けられていた。この桜台大間市を襲う謎の集団。いや、戦争を望むブラフマーが街に放った殺戮者たちの1人。






ここに奇妙な出会いが重なる。




月影の指示で街の人間を避難させていた社とカルロス。そこに現れた夏樹を狙い敗北した黒ミリタリー服の殺戮者。そして、藍色の髪の少女と水色の髪の少女、空海柊と空海柚子。




話が思わぬ所で交差した。




こんにちは。



話は月影達の物語より時間が戻っております。




さて、第五十四話目です。黒少年と金髪の殺し屋。覚えていらっしゃいますでしょか?いつかの殺傷通り魔事件の時の社くんと犯人であったカルロス(その時は、まだ名無しだったけどこの人)。いつの間にやら仲間になっていたようですねぇ。



そんな彼らが出会った2人の少女。そして、その出会った場所は?更に、この後一体?





とりあえず、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。





『八百屋・加賀』とは、夏樹がよくお世話になっている女将さんがいるお店の名前…。実は3回目の登場。一回目は夏樹の休日編で、そして、この話が3回目。あれ、2回目は…?



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