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第五十三話:理由



 月明かりが映える。静まりかえった街中で2人の殺人鬼が真っ正面で向き合っている。恐ろしく冷たい空気は肌を刺すほどで、あまりにも重かった。



「死んだはずの男が今さら何の用で生き返ってきた、月影?」




 月影とブラフマー、全く対象的な2人である。




「償い…ですかね?」




「償い?」




 月影の言葉にブラフマーは眉をひそめる。



「えぇ、私が組織でやってきた行いに対しての償いです。全てが償えるとは思いません。いや、一生をかけても償えないかもしれません。だけど、これが今の私に出来る精一杯の生き方…」




「……それはつまり、裏切りと…いうことか?」




「えぇ、そう取って貰っても構いません」




 そう言い、ゆっくりと月影はブラフマーのもとへと近づく。

 と、ギラリと輝くブラフマーの剣がそれを静止させる。



「それ以上、近づくな!近づかれて貴様のナイフの餌食にされては堪ったものではないからな」




 たん、と足を浮かせブラフマーは後ろへと下がる。が、次の瞬間、月影の持つナイフがブラフマーに襲いかかる。3メートルは離れていたはずなのに、月影とブラフマーの間合いは一瞬にしてその距離を縮める。




「ふふっ、私のナイフを剣で受け止めるとは…」



「くくく、なんとも早業だな月影?」




 ギリギリと拮抗する2つの刃。そして、鋭く高い音と共にお互い、その場から離れる。




「ナイフ一本で剣とやり合おうなんて、さすがに組織のボスだっただけはあるな月影?」



 今度はブラフマーが剣を大きく振り下ろす。月影は襲いかかる剣に合わせ、身をよじり避けるが、バキィンという音と共に振り下ろされた先の地面が抉れる。




「ふふ、貴方は私がボスである事に不満がある派閥だったで、しょっ!!」




 剣を振り下ろした反動で動けないブラフマーに今度は月影がナイフの刃を立てる。




「っぐあ!!」




 しかし、その鋭く突き立てられた月影のナイフも、即座にブラフマーが剣を地面から上げたため、剣に当たり弾かれる。からからからんと走るように地面を滑るナイフ。ブラフマーはナイフを無くした月影に重く鈍い光りを放つ剣を向ける。




 勝敗の決定か。剣のブラフマーに丸腰の月影。黙せずブラフマーがすら笑いを浮かべる。



「USS」



「あっ?」




 ふいに月影が何かを呟く。それは、この国の言葉ではない。英単語。月影は弾かれたナイフを取りに行く訳でもなくブラフマーに向かい呟く。




「面白いことを思いつく。合衆国の船が、しかも、戦艦が核弾頭をぶら下げて、この国にぶつかれば。もはや、冗談では済まない。一体、貴方は何が目的なのですかね、ブラフマー?」



 『USS』



 これは、とある大国の戦艦の通称。そして、その国は強大で壮大で世界の中心たる国。その国が動けば、世界が動き、世は荒れる。その国の行動は常に他の国に多大な影響を及ぼすものなのだ。




「そう…。そして、その国の戦艦が他の国にぶつかるという意味。それは、何を意味するものなのか…」



 ゆっくりと息を吐きながら月影は問い掛ける。ブラフマーの瞳に真っ直ぐに瞳を重ねて。すると、その月影の言葉にブラフマーが答える。グニャリと歪めた笑顔で月影に答える。




「まずは、1つ。国の歪みは世界の歪み。例えば世界の中心たる大国の戦艦が、70年もの時間を平和に費やした凡国に、理由なき襲撃をしたとしたら?」




 ゆっくりとブラフマーは剣を己の腰の鞘へと収める。




「例えば、それが情報を操作された偽りの真実だとしても…。例えば、それがテロリストによるものだと理解出来たとしても…。船が街に衝突したのは真実。疑いは、確実に信頼を蝕む!」




 瞬間、ゴゴゴォォオーン!! という果てしなく大きく爆音が響く。地面が地鳴りを上げて大きく揺れる。商店街から見えるのは真っ赤に光る夜空の明かり。先ほどまで月明かりで照らされていた街は、再び一気に紅く燃え上がる炎の光りに照らされることとなる。



 どうやら、この街の近くの港から炎は上がっているようだ。月影はその真っ赤に光る夜空に、ここに来る前に見た『原爆を積んだ船』のニュースを思い出す。




「当然、合衆国は否定をするだろう。事故、あるいは、他国の策略だと…。だがそれは、やがて世界に染り、疑心暗鬼を生む。そして、疑心暗鬼はやがて、被害妄想へと拡大する。……この国の、凡国として制裁されるべき真は『戦争をしなかったこと』だ。70年もの時間を自分たちだけが、争いから逃れようとした。時には金を出し、時には争いの終わり始めた戦後に兵を送ったりして、体裁だけを整えていた」




「だから、合衆国の船をぶつけたと?しかし、それは貴方の勝手な言い分でしょう?たとえ、自分たちだけの世界にしろ平和を貫くということは…」




「くくく、だが、凡国はその事について承諾済みだがなぁ?」




「……つまり?」



「凡国は気付いたのさ、戦争には経済的価値があると。犠牲者としての立場を理由にしたなぁ。第一の被害者である故に疑いは他国へと向けられ、始まった疑心暗鬼の戦争に富みを貪る。凡国のお偉いさんは、戦争が良い商売になることを知っていた。だが、平和を貫くと決めた以上、自らは戦争が始められない。そこで、凡国は被害者になる事にしたのさ…」



 ブラフマーはケタケタと笑い声をあげて饒舌に語り出す。



「この戦争ならば凡国…陽ノ本は戦争をしないという名目を貫く事が出来る。疑いは常に合衆国へ、さらにはラシアや北朝選。容疑者など、そこら中にいる。次はどの国が襲われる?一体、どの国が首謀者なのか?疑心暗鬼に駆られた世界は自ずと相手に牙を剥く。それに、乗じて陽ノ本は利益を貪るが疑いの目は常に他にある。ふふふ、まぁ、起きてしまえば、火種なんて些細なことに過ぎないがな……」




 燃える夜空は真っ赤に光り。見上げれば、映える事を許されなくなった月明かり。それを黙して見上げ月影は思う。




(戦争が世の常になれば、被害者である国民は陽ノ本が戦争で利益を貪るとしても、それが戦争をする事とは感じられない訳か…。しかし、そうまでして、戦争を惹き起こして、お前は何がしたいのだ、ブラフマー!?)



 月影は空を見上げたまま瞳を瞑る。それは、熱くなった目頭が月明かりを歪ませるから、気持ちを落ち着かせ大きく深呼吸をするため…。




(もはや、これは正義を成す為のテロでは無いのですね……ブラフマー?)




 悲しみは仲間だと思っていたからこそ。涙は止められなかった己の無力さに、月影は再び前を向きブラフマーに笑顔を向ける。




「ならば、ここで殺すが私に出来る最後の行い!さよならです……ブラフマーッ!!」



 武器を持たずに走るは月影。それを鞘に仕舞った剣に居合い構えで待ち受けるはブラフマー。



 交差するのは、一瞬。シュオン! という音は軽く、ブシュンという音は重く生々しかった。



「かっ……くくく、だから、お前が嫌いなんだよ俺は…月影ぇ…」


「……私は嫌いではなかったですよ、ブラフマー……」




 ボタボタと大粒の滴が月影とブラフマーの間から地面へと落ちていく。そして、それは次第に流れへと変わり。次の瞬間、弾けるような音と共に赤い液体が辺りに飛び散る。



 倒れたのは月影。だが、血を流すのはブラフマーであった。彼の首には彼が持っていた剣が深々と刺さっている。




 出来事は一瞬。まずは、月影がブラフマーと交差する際に剣を持つブラフマーの腕を掴み、それを一瞬引き下げる。そして、ブラフマーが剣を取られまいと己の方に力を入れた所で、一気にその腕と剣を押し上げブラフマーの首に押し当て、切り上げる。もっとも、ブラフマーは最後まで剣を離そうとしなかったため、剣は首を最後まで振り切る事なく途中で止まっているが…。




「ブラフマー。貴方はどうして…」



 立ったままに死に絶えていこうとするブラフマーに月影は優しい瞳で嘆くように言葉を投げ掛ける。しかし、その月影の言葉はもはや意識の混濁しているブラフマーには届いていない。




 夜空は燃え盛る何処かの炎で真っ赤に光り、月は厚く広い雲に遮られていた。もはや、月明かりは影を落とすことも許されなくなっていた。



こんにちは。お久しぶりです。




えぇと、もはやこれが精一杯としか言い様がございません(笑)



読んで分からなかった読者様。すいません!読んで面白くなかった読者様。すいません!とりあえず、まとめると…



ある平和な国の街に、合衆国、つまり核弾頭載せた某メリカの常用戦艦が衝突した事で世界は混乱し、戦争が始まるかも……と、その作戦を実行したのがブラフマー達という訳です。


そして、その街のあるその国は、ブラフマー達組織に利用された、または、利用したという所ですかね…。




……すいません、これが精一杯です!!(笑)もう少し面白く書けるよう頑張って努力致します。皆さま、どうか呆れずにもうしばらく私めにお付き合い下さいませ!!



それでは、この辺りで失礼致します。ありがとうございました。





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