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第五十話:少年の思いと少女の思い





 ずっと昔の事だ。

 小さな頃、俺はなんで産まれてきたのか分からなかった。その頃の俺は、とにかく暗かった。残虐的であり、非情だった。ありちょう、セミやバッタ、小さな命を見つけては幼き俺はその命を無意に奪っていった。酷い時には猫や犬を傷付ける事もあった。幸いにして、命は奪わなかったものの最低の所業には変わりない…。



 何故にそんなに残虐であったのか。他人とも会話する事もなく、同じ歳の子ども達と遊ぶ事もせず。ひたすらに幼き俺は何かを絶望していた。




『夏樹!?あなた、何て事をしてるの!?どうして、こんなにか弱い虫たちを…!?』




 そう言い、幼き俺を叩くのは若い頃の母さんだ。美しく流れる金色こんじきの髪。真っ白でマシュマロみたいに柔らかそうな肌。優しい瞳で吸い込まれそうなブルーアイズ。とても綺麗な女性であった。



『母様、どうして叩くのですか?僕が弱いからですか?』



『違うわ!!夏樹、君が虫たちを虐めているから、お母さんはあなたのほっぺを叩いたの』




 あぁ、そうか。これは、昔の俺が非情に虫たちの命を奪っていったから。それを見た、母さんが俺のほっぺをおもいっきり叩いた時の記憶だ。




『……虫は、虫は弱いです。だから、強い僕がどうしようと勝手です。母様が僕を叩いたように…』



『っ、違う!!違うわ、夏樹!!誰も誰かを支配なんて出来ないの!!強いから弱い相手に何をしても良い訳ない、弱いから強い相手に逆らってはいけないなんて訳はないの!!』




 なんて虚ろな瞳をしてるだろう、昔の俺は…。まるで、この世の終わりみたいな感じだ。




『……母様、しかし、僕は強い相手にコレと同じ様な事をされました。逃げることも、逆らうことも出来ませんでした。それは弱い僕が悪いから、それは無力な僕が何も出来ないから…。その人はそう言いました。僕は何故あんな事をされたのですか?僕は虫と同じ、僕は僕に押し潰されて殺される。母様、僕は…』




『もういい!!……もう、いいの。ごめんね、母さんが謝るね?違うよ、君は弱くない。弱いのはあなたに何かをした人達。あなたは悪くない。だから、あなたは押し潰されたりしないの。ずっと、母さんがついていてあげるから、ね?虫たちは自由にしてあげよ?あなたは押し潰されない。だから、虫たちも押し潰されないの…』




 遠い記憶。遠い記憶だ。何故いまさらながら思い出すのだろう。まるで、誰かが俺に見せているようだ。でも、そうだな。誰も誰かを押し潰すなんて事は出来ない。命を奪うなんてしてはいけない事なんだ。




『優しく強い子になりなさい。誰かを傷付けるんじゃなく、誰かを守れる人に…』




 だけど、母さん。俺はあの時、既に…。逃げるために、生きるために…。だから、幼き俺はそこにいるんだ。



 ゴメンね、母さん。また、俺は虫を殺し始めたよ。それは守るため。それは大事な誰かを守るために…。やってはいけない事だと分かっているけど。でも、守るためには…。家族を傷付けない為には戦うしかないから。だから…。でも、やっぱり、駄目って言うんだろうな、母さんは…。




―――――――――

―――――――

――――

―――

――







「シバの部隊ですか…」




「はい。黒ミリタリー服を着込み、封印したはずの開発兵器を所持していました」




 純洋風の家なのに和室。和洋折衷な建築、いまや、それがマイホームを作る基準である。そんな基準な家の一室。ソファーに綺麗な黒髪をした男が寝かされている。



 身長は180前後、足が長く、やや小さめのソファーから大大的に足がはみ出している。スポーツをしているのか、無駄な贅肉がなく、堅そうな筋肉が付いていた。いや、真っ当なスポーツ選手よりも彼の体は筋肉の付き方が異常である。そんな上半身裸の彼はランという少女に濡れタオルで体を拭かれている。




「空海夏樹か…」



「はい。私達を助けたあと、急に倒れてしまって…」




 空海夏樹。それが、ソファーで寝かされている男の名前だ。さらりと耳までかかる伸びた髪は心地の良い香りを匂わせる。




「ビシュヌ様、この人は悪い人ではありません。だから…」




「大丈夫ですよ、ラン。その方を殺す理由はありません。組織はもう、私達とはたもとを分けました」




 金色の髪の女性、ビシュヌは金髪の少女、ランに優しく微笑む。



「そうですか、ビシュヌ。やはり、組織に留まる気にはなれませんか?」




 そう言い、夏樹に剣を向けるのは白マントを羽織る男。組織『crown』の幹部、三神と呼ばれる1人・ブラフマーだ。と、ランがそのブラフマーの剣から守るように夏樹の前に両手を広げ、立つ。




「ブラフマー、やめて下さい。今は、空海夏樹よりも、勝手な行動をしている『シバ』を探す事が先です」




「……ふっ、そうですね」



 ビシュヌのその言葉にブラフマーは剣を左腰のさやへと収める。




「しかし、探すといってもどうしたものか…。私の部下たちはシバの部隊に全て殺られてしまいましたし…」




 ブラフマーは、自分の部下たちが殺されたというのにその表情には一切の曇りがない。『虐冷のギロチン』。そんなブラフマーの態度にビシュヌは彼のもう1つの名前。つまり、異名を思い出す。



 いつだったか。ブラフマーは西洋の国の1つを潰す任務についた。作戦はなんら問題なく進み、最終局面に差し掛かった。だが、その時、潰される国の最後のあがきでブラフマーの部隊は全滅とはいかなかったが、半壊という大ダーメジを負ってしまう。その為、作戦は失敗。ブラフマーは撤退を余儀なくされた。



 彼は怒り、叫び、周りを破壊した。そして、残った全ての部下たちをその持つ剣で殺していったのだ。落とされたその剣はまるでギロチン。だから、『虐冷のギロチン』。残虐で冷酷。それが、ブラフマーという男だった。



「人数的には、この家の数だけ。では、私とビシュヌとガルシュは『シバ』探しと行きましょう。残ったランは、空海夏樹の監視・介護を…」




「分かりました。ガルシュ、ラン、良いですね?」




 そして、ランと夏樹を残してビシュヌ、ブラフマー、ガルシュの3人は家をあとにする。ランは、ガランとしてしまった部屋を見渡す。



 この国に来て1ヶ月程度。だが、幸せの時間であった。任務とは分かっていたけど、普通に暮らして、普通に過ごして、普通に眠って…。ランは、目映いばかりの日常という幸せを思い出していた。しかし、それも今日で終わり。ランの表情は少し、いや、とても悲しみに溢れていた。




 と、そんな事を考えながら、ふと、夏樹に目を向ける。




「ひゃ!?お、起きてたの!?」


「うぃ、何だろう?何で俺、上半身裸?…小さいのに、痴女?」




 パチンと心地良い音。ランが夏樹の頬を叩いた音だ。ランと夏樹。奇妙な2人はその後2〜30分、沈黙のまま見つめ合っていたのだった。




 こんにちは。

 ふぅ、祝・第五十話です。て、事で私も夏樹も小休止?上半身とはいえ少女に体を露にされる夏樹。大人なのに…(笑)




 第五十話目。ブラフマー、合流。優しそうな感じなのに残虐で冷酷って…味方にしては、嫌なタイプ?



 ランと夏樹、奇妙な関係ですね…。いきなり、平手打ちをされる大人・夏樹(笑)しかも、上半身裸なんですよね(爆笑)




 では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。




 話を早く進める為に、いくつかの話をボツにして省いてます。だから、展開が早めなのですが…、話的に大丈夫でしょうか?




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