第四十五話:弱者
まるで、岩をぶつけられたみたいだ。
夏樹は、ついに自分を殺しに現れたテロ犯罪組織『crown』の使者と名乗る男、修羅の拳を受け、ぐらついてしまう。
修羅の繰り出してくる攻撃の1つ1つが必殺の勢い。ガードをしたその奥からダメージが広がる。
(くそっ!?何だよ、この男の力は?パンチをガードする度に腕に感覚が無くなっていくじゃないか!?)
長袖のシャツを着ているため、外見では何ともないように見える夏樹の両腕。しかし、実際は修羅の異常な力による拳撃で真っ赤に腫れ上がっている。その為、両腕からは痛みの変わりにじんじんと熱が発せられていた。
「ふむ、中々に強い者よ…。私の拳は鍛え上げた鉄をも貫くというのに、貴様の両腕は全く貫くイメージが湧かない…。なんと、堅確な腕よな…」
修羅は、自分の拳を幾度も喰らったというのに、骨1つ折りはしない夏樹に驚愕の思いを露にする。鍛えに鍛え上げ己の拳は、どんなに強固な物も破壊出来ると信じていたというのに、と…。
(信じられん…。私の拳の方が痛みを感じているだと!?この男は、鉄をでも食しているというのか!?)
夏樹は修羅の拳の強さに驚き、修羅は夏樹のその強固なる体に驚愕する。お互いがお互いに畏怖の念を感じずにはいられなかった。
「確かなる、実感…か。ふ、ふっ、ふはははははははははははははは!!なるほど、空海夏樹…。貴様が私を最強へと導いてくれようぞ!!」
修羅から真っ直ぐに拳が飛んでくる。反応をした時には、すでにもう目の前。
「っがぁぁぁぁあっ!!」
夏樹は修羅の弾丸のごとき拳撃を避ける。しかし、やはり弾丸。ギリギリにかすっただけだというのに、夏樹の頬は赤く染まる。
「ふっ、はっ!?これをも避けるか。なんと俊敏な?では、これで…どうかっ!!」
下段、中段、上段!!修羅の三段蹴りが夏樹の足と腕にぶつかる。辛うじて上段の蹴りを避けたが、最初の下段と中段がまずかった。あまりの衝撃と痛みに夏樹の左足と腕が動かない。ビリビリとした痛みを残し全くの感覚が無いのだ。
(マズイぞ、マズイぞ、マズイマズイマズイ!!)
左足が動かない。その場から逃げる事が出来ない。夏樹は己の左足に必死に訴える。
(動け、次の攻撃が来るぞ!?動け、動け、動き、やがれっ!!)
必死にその場から逃げ離れようと左足を動かすが、夏樹の左足は全く言うことを聞かない。その間に修羅の凄まじき拳が夏樹を襲う。
「ふっはぁぁあっ!!どうした、どうしたぁ!!動きが鈍いぞ、空海夏樹ぃ!?」
修羅の拳が刺さる。ゴスッとみぞおちに拳が当たった瞬間、夏樹の内臓という内臓が悲鳴を上げた。夏樹は何度も嗚咽を繰り返す。『おえぇ』と胃からうす黄色の胃液が吐き出された。
「……貴様もか!?貴様も私と戦う相手では無かったというのか!?やっと、やっと己と同等に戦い合える相手を見つけたと思ったというのに…。貴様も他の弱者と同じだというのかっ!?」
修羅が叫びを上げる。最強を求めてこんな東洋のさらに東の島国にまで足を運んだというのに。そこにいた敵はやはり今までと同じ弱者であった。修羅は夏樹を睨み付ける。弱者を見下ろし、蔑むかのように。
「最後だ、空海夏樹。私は貴様を過大評価していたようだ。組織クラウンを退けたというのは、偽りであったか…。ふ、所詮、人は私を越えられはしない。さらばだ、弱き夏樹よ!!」
両膝を着き、右手で腹を押さえる夏樹。その夏樹に修羅の凄まじき剛拳が振り落とされる。虎や熊をも殺す、修羅の一撃。
夏樹はそれを防ぐ事が出来なかった。
「…任務完了。弱者よ、安らかなる眠りを…」
夏樹の首筋に振り落とされた修羅の手刀。夏樹は動かない。倒れることも、立ち上がることも、しない。夏樹は動かない。
「脳へと繋ぐ神経を切断した。じきに呼吸も出来なくなる。いや、もはや意識もないか…。そのまま、死に逝くがいい」
修羅は後ろへと体を向ける。この場所にもう目的はない。最強の二文字はこの場所にはなかった。そして、ブラフマーに言われた目的は遂行した。だから、修羅はその場を後にする。
ターゲット・空海夏樹…抹殺完了。
こんにちは。
ちょっと、戦闘シーンが少ないですかね?まぁ、技量的にしょうがないのかな?(笑)とりあえず、次のステップ的な話。
では、第四十五話目。つまり、次の話へのステップ的な話(笑)修羅、強いんだけど…私の足らない技量のせいで陳腐な物に(悲)
夏樹が修羅に敗北をしてしまいました。なんか一瞬にして負けた感じ?…一応主人公なのに、やられキャラ?夏樹の生死については今回は直ぐに分かります。一応、主人公ですから(笑)
では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。
空海夏樹、とりあえず、やられたら倍返しが基本な男…。