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第四十三話:迷い迷う男のお見合い!?





 また、世界は邪魔をする。逃げても逃げても逃げても、世界は俺を追いかけてくる。




 放っておいてくれ!!俺は幸せを見つけたんだ。ここを離れたくない。壊さないでくれ!!俺の居場所を!!



 ニュー・エントランスビルを爆破しようとしたテロ犯罪組織『crown』。俺は自分の世界を守るために戦った。何がいけない!?むしろ、己の自己満足で他人の幸せを破壊しようとする『crown』の方が悪いんじゃないのか!?なのに何故、世界は俺を不幸にしようとする?俺がお前に何をした!?




「あぁ、ちゃんとしろよ?何たって相手は上流階級のお嬢様なんだからなぁ」




 そう言うのは俺の仕事場の上司である。ヤクザ顔負けのヤクザ顔で、俺の親父とは昔ながらの友人である松居警部。両親が死んでからはことある事に親代わりに助けてくれたお方。そして、先日『おい、お見合いするぞ。はっ?じゃなくてお見合いだ。お前も良い年頃だ、嫁さんの一人も貰った方が良い』と言い強引にお見合いの席を設けたのだ。




「いや、松居警部?俺は別に結婚は…」



「ああああぁん!!?」




 怖ぇよ、あんたマジで怖ぇよ…!!松居警部は俺の主義主張は一切聞かずズカズカと奥の『鳳凰の間』へと向かう。



 松居警部は、ガラリとふすまを開ける。




「あ、ど〜も松居さん」



「あ、ど〜も。本日はお日柄も良く…」




 松居警部と『鳳凰の間』に先にいた眼鏡の中年男性はお見合いでお決まりの言葉を交わし合う。全く、良い気なもんだ。俺はそんな二人を見てため息をつく。そして、チラリと眼鏡の中年男性の横にいる女性に目をやる。



「お久しぶりですね、307号室の空海さん?」




「あっ…」




 そこに居たのは、太郎の病院に居た看護師の女性であった。




―――――

―――

――




 …気まずい。

 お見合いが進み、お決まりの『では、後はお若い二人だけで…』というシステムにてこの部屋には、俺と看護師の女性だけである。




 相良さがら 夕凪ゆうなさん、彼女の本名である。彼女の父親は有名な国会議員である。確か、外務次官だった気がする。…本当に上流階級のお嬢様じゃないですか、松居警部!?



「ふふふっ、空海さんたら私をお食事に誘って下さったのに一度もお食事しませんでしたね?」




「あ、いゃあ〜…すいません」




 気まずい。何か気まずい。食事に誘ったかな俺?…誘ったかも?あぁ、何だこのドキドキ?



 綺麗な黒髪を結い、うっすらと赤みが差した頬。ぱっちりとした目であるが、何処かやんわりとした眼差しである。十人が十人、彼女を見て美しいと言うであろう。




「妹さん達は、お元気ですか?」




「えっ?あっ、はい。元気一杯で困ってましゅ…」




 恥ずっ!!言葉を噛んじまった!!




「うふふふ」




 しかし、相良さんはにっこりと笑う。


「私、びっくりしましたわ。親に嫌々お見合いをさせられたんですけど…。まさか、空海さんがお相手だなんて」




 びっくりしたのは俺も同じ。まさか、こんな偶然があるなんて…。



 俺達のいる『鳳凰の間』はゆっくりと時間が流れる。最初に出せれた一杯のお茶はもう一滴さえ残っていない。緊張なのか俺の喉はカラカラだ。いい加減、足も痺れて、もはや感覚がない。




「あの、とりあえず、庭を散歩で…なっ!?」



 俺があまりの気まずさに相良さんを庭へと連れだそうとした、その時。いきなり、俺達のいる『鳳凰の間』のふすまが破られ、1人の男が飛んできた。




「いい加減にしろよ、貴様!?俺達はお前らとは違う!!貴様のその貪欲さが俺達の村を壊したんだ!!俺達は絶対に許さねぇ!!」



 『鳳凰の間』の前の廊下に数人の男達。全員が全員、頭に白いハチマキをしている。とある者は背中に『許すまじ兼元』という旗を背負っていた。




「ん、兼元?」





 俺はもう一度飛んで来た男を見る。




「ひっひ〜、たす、助けてくれ〜!!私だって、私だって知らなかったんだぁ〜!?まさか、作った工場から有毒排水やガスが出てくるなんてぇ〜っ!?」



 間違いない、あの兼元だ。国会議員・兼元かねもと 厚志あつし。ニュー・エントランスビル事件で月影達組織『crown』に暗殺されようとした男。狙われた理由は武器や麻薬の密売。その為に戦争国の戦争が激化、戦争国出身の月影達の怒りを買ったのだ…。




 そしてまた、この男は誰かの怒りを買ったのかっ!?



「…行きましょう、相良さん」




「えっ?でも…」




 俺は相良さんを無理に外へと連れ出す。助けないのかだって?あぁ、もちろん、助けない。俺はいま刑事ではない、一般人としてお見合いをしてるんだ。この男を助ける義理も義務も無い!!




「兼元、死ねぇ!!」



「なっ!?」




 俺と相良さんは『鳳凰の間』をあとにしようとした。しかし、その瞬間、白ハチマキの集団の1人が持っていたクワで兼元に殴りかかる。いくら何でもそんな農具で頭を叩かれた日には怪我だけでは済まない!?




「くっそがぁぁぁあっ!!」




 体が動いてしまう。頭では助ける価値も値打ちも無い男だという事が分かっているのに。俺は兼元を助けるべくクワで襲い掛かる白ハチマキの男の前に立ちはだかってしまう。


「貴様、邪魔するのか!?そいつは俺達の村を2度と住めないようにした男なんだぞ!?部外者が邪魔をするなっ!!」




「知らないね!!コイツが悪で最低な事は分かっている。だけど、だけど、アンタそいつで兼元を殴ったんじゃ、ここは血の海だ…。そんな事も分からないのかよ、アンタ達はぁ!?」




「それが何だ!?そいつは死んで当然なんだ!!爺さん婆さん、親父やおふくろ、子ども達だって汚染の影響で体を悪くしてんだ!!終いには村には住めないなんて…。殺さなきゃ、気が済まねぇ!!…そこを、どけぇえーっ!!」




「ちぃ、わからず屋がぁあっ!!」




 クワの鉄の刃を向け殴りかかってくる白ハチマキの男。ブワッ、と鋭い刃先が俺の顔を横切る。ぐさりと畳にクワが刺さり、男はもう一度クワを振りかぶる。




「俺達は、もうコレしかないんだぁぁぁあっ!!」




 悲痛の叫びと共に男はおもいっきりにクワを振り下ろす。しかし、俺はそのスピードに合わせて右手でクワを受け止めた。戦い慣れをしてしまった自分に呆れてしまう。相手が素人だからといって物凄い速さのクワを受け止めるなんて…。




「な、何なんだよお前!?何で邪魔すんだよぉぉおーっ!?」




 

 自分の攻撃をあっさりと受け止められた白ハチマキの男はグタリと地面にひれ伏す。悔しいのだろう。自分の居場所を奪った男が、それを気付かずに見ていた自分が、そして仕返しも出来ない己の無力さが…。




「お、おぉ、良くやった青年。は、はははは、褒めてつかわすぞ。私は国会議員の兼元だ。コイツらは金の為に村を売ったというのに逆恨みをして、私を襲ってきたのだ。全く、これだから無教養のサル共は…」




「うるせぇよ、クソ俗物が!!俺はアンタを助けた訳じゃねぇ。彼らを助けたたんだ。お前みたいなクソでも、殺したとなれば警察沙汰だ。少なくとも4、5年は喰らうからな。そんなの彼らが不憫だ。……覚えておけよ、俺はアンタを、絶対に、逮捕してやる!!アンタの悪事を洗いざらい調べて、二度と世間に出て来れないようにしてやる!!首を洗って待ってるんだな…」




 俺はキョトンと俺の顔を見ている兼元を睨む。これだけの惨事になっても未だ己の腐った心に気付かない兼元。この国が偽りの平和だと言った月影の言葉を思いだしてしまう。これが、俺の居場所?ここが俺の幸せを育む場所か!?……嫌になる!!




「ほら、アンタら、いくら怪我をさせてないていったって暴力をふるったのは事実。一緒に警察署に来てもらうよ…」




 はぁ、終わったな。松居警部には悪いけど、コレではお見合いはおじゃんだ…。何せ、父親と同じ国会議員をボロくそに言って、お見合いだというのに仕事してるんだもの…幻滅しない訳がない。まぁ、コレで良かったんだよな。俺はいま結婚してる場合なんかじゃないしな。




「相良さん、そういう訳ですので…それじゃ!!」




 俺は『crown』との決着を着けなきゃならない。…結婚なんてしてる暇なんて有りはしないんだ。




 そんな訳でその日のお見合いは中止になってしまった。後日、謝罪をと思っていたのだが…。俺は『crown』との戦いで全てを失ってしまうことになってしまう。




 こんにちは。

 えぇ、遅くなりましたが、感想・評価でのセキさんのリクエストを実行してみました。第十七話(かな?)の看護師の女性、名前を付けて再登場!!……え?もっと別のシチュエーションの方が良かったのでは?いえ、結構重要な役割ですよ彼女?まぁ、とりあえず、セキさんお待たせしました。彼女、また暫く出てきません(笑)が、また出します!!



 さて、第四十三話目です。お見合いです。ニュー・エントランスビル事件後、様子のおかしい夏樹を見て、ヤクザ顔上司・松居警部が気をきかせたといった感じ。ただ、またまた再登場の兼元によって全てがおじゃん(失敗)。しかも、何やら最後は暗〜い感じに…。




 とりあえず、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。




 月影さん、アンタ今どこにいるのよ!?




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