第四十話:最果ての敵
神などいない。世界は闇だ。全てが醜い。
「では、修羅よ、お願いしますね」
そこは崖の上にある古城。その一室に2人の男がいた。1人は白いマントを羽織り、左腰に剣をさしている男だ。
「……了解した」
もう1人の男は顔に傷があり、短髪を元々なのか、ぐわっと上へと上げる中国風の男だ。
「気を抜くなよ、修羅。何せこの男は魔神の息子だからな。甘くみていると……喰われるぞ!!」
修羅。それが、中国風の男の名前だ。白い肌に黒い道着を纏い、その筋肉は鋼の鎧の様に分厚い。
鋼の龍狼。修羅の異名である。限りなく『力』を求める男、修羅。これまでこの男は、3メートルを越す熊や人を主食としてきた樹海の虎などを倒してきた。だが、修羅にとってそれは、おままごとにも満たない事だった。熊など額の急所ごと頭蓋骨を砕けば事足り、虎など牙を折り爪を剥ぎ取ればただの肉の塊。
修羅は退屈だった。己を鍛え、鍛えたその先に最強の二文字が待っていると思っていた。しかし、現実は違う。『力』を手に入れた所で比べる者がなければ、それは意味を成さない。
修羅という男は分からなかった。最強とは何だ。武芸を極めればそれが最強か?いや、いくら筋力を鍛えた所で銃一丁にも敵うまい。では、野生の猛獣たちか?いや、人の貪欲の前には猛獣とて、金か食料へと変えられる。ならば、人が最強か…。しかし、武芸が出来ようとやはり銃一丁には敵うまい。修羅は分からなかった。最強とは何で、何を倒せば自分が最強になるのかを…。
世界を周り、最強と名をはべらす武術家達を倒してきた。しかし、修羅の圧倒的な『力』の前には彼らも赤児同然であった。修羅は貪欲に探し倒してきた。しかし、倒せば倒すほどに彼の心にある思いが過った。
『最強とは、こんなものか…?』
遂に修羅は国をも敵として戦い始めた。空を掻ききりながら飛ぶ戦闘機、陸を轟々と走る戦車、海を堂々と進む戦艦。地雷爆雷打撃銃撃斬撃毒殺絞殺。だが、最後に立っていた者は修羅という1人の男だった。
やがて、彼はとある組織の存在を知る。その組織が作る『力』。彼はその『力』に興味を抱く。最強を作る『力』。
「しかし、その組織さえも破壊する『力』があった。俺はソレと戦いたい。そして、知りたい。最強とは、何だ!?」
その2日後、修羅という男が極東の島国に密入国をする。最強の二文字を求めて…。
こんにちは。
第二幕・シリアス編始動…。
第四十話目。組織が動き始めました。手始めに送られる刺客・修羅。えっ?中国風なのに、何故に日本読みですかって?別段、意味はありません。そう、私が中国語を知らないからです!!(笑)
では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。
極東の島国。その国の名は……!?……。