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第三十八話:夏樹サンタ苦労す!?




 あわてん坊のサンタクロース、クリスマス前にやって来て〜、と。



 俺はクリスマスの街中でよく見掛ける人物特有の赤い服を着る。クリスマス前では、なくクリスマスだ。今は夜の12時を回っている。さぁて、ここからがクリスマス最大のイベントだぜっ!!




「真っ赤なおっはなの〜、トナカイ太郎さんはぁ〜、いっつも皆の〜、人〜気者〜っと。あははははは、空海家の風習ていつ見ても面白いよねぇ?」




 俺がバカデカイ白い包みを担いでいると、太郎はトナカイの格好をし笑う。




 空海家の風習。それは、空海家の親父・空海玄治うつみげんじが我が可愛い妹達の為に考案した。



 いわば、妹達を喜ばせる為のイベントである。誕生日は勿論の事、遠足や授業参観、節分、七夕、海の日、紅葉、クリスマス、正月…。ことあるイベントにて、我が空海の大人は子ども達の為に最大の力を持って最高の事をしなければならない。それが、空海家の風習。まぁ、ただ単に親父が妹達を楽しませてやりたいとやっていた事なのだ。



 そして、今回のイベントはクリスマス。パーティーは、先ほど終了した。次は、俺、空海夏樹にとって最大のイベント。妹達の部屋にサンタクロースとしてプレゼントを枕元に置いてくるイベントだ!!



「よ〜し、行くぜぇ…」



 このサンタクロース作戦は、実に難解だ。なぜなら、サンタクロースは煙突から入ってくる。そう、そのサンタ方式でいくと、俺は自分の家に侵入しなければならないのだ。無論、正面の玄関からではなく。裏手の庭から…。



「あははは、コレッて1歩間違えれば警察に捕まっちゃうねぇ」




 確かに。はたから見れば、この光景は異様であろう。いくら、サンタの格好をしていようと、間違いなくそれは空き巣か何かに見える事は必至だ。



「だが、ここは俺の家だ。何をしようが他人様には関係のないこと。それに、警察は俺だ!!」




 俺はそう言い、無駄に広い庭を走る。庭の景観は非常に綺麗だ。冬の為に彩る花々は少ないが無駄な雑草類は除去され、山茶花やサルビア等が咲き、綺麗にガーデニングされ、春を迎えるための用意が出来ている庭だ。




「さて、太郎よ。ここからが問題だ」




 俺は家のベランダにあるウッドデッキに片足をかけて二階に視線を向ける。




「さて…突入だ!!」


 俺は背中にプレゼント袋を背負って手すりづたいに上へと登る。高さは、ざっと3〜4メートル。何処かの高層ビルの高さよりはマシ、か…。俺は柊の部屋のベランダに体を乗り上げ、そんな事を考える。



「ピッ、ターゲット、ロック。任務リョウカイ。対人データロード。照合、確認中、確認、ターゲット・空海夏樹。ミッション開始」



「…………」



「………ゾニーのアインボ?」




 いや、それはどうか?確かに、人型ひとがたのロボットといえば、ゾニーのアインボだけど。こいつは完璧過ぎる。ゾニーのそれを上回っている。




 人型のロボット。柊の部屋のベランダにいた物だ。俺と太郎はお互いに顔を見合い、再び人型のロボットの方に視線を向ける。




「いや、アインボだよ。だって、二足歩行してるよ?あのメタリックボディで…。歩く度にガシャン、ガシャンて機械音もして…うわっ!?」



「いや、太郎。違うってそれは絶対違うって。いや、拳銃てか、ガトリングに見えるけど、まさか、本物なんて事はぁ…」




「アタック!!」




 機械音と共に銃撃音。ダララララララララララッと弾丸が俺の体の横を通って行く。ガシャン!!ズカン!!バキィン!!ベランダが破壊されていく。弾丸は本物。という事は銃とガトリングも本物!?



「ちっ、太郎!!外に飛べっ!!こいつ、本気で殺しにきてやがるっ!!」



 ベランダから勢いをつけて飛び出す。カガンと体に強い衝撃。そう易々と映画の様にカッコいい着地とはいかないものだ。体全体で地面を感じる。至る所がずきずきと痛む。



「ターゲット、確認…アタック!!」



「うぉぉぉおっ!?」




 ゾニーのアインボもどきが俺にガトリングガンを向ける。絶対的絶命…。マズイッ!?ウィーンとガトリングが回り出す。そして、



 パシュン…



「……ん、んんん?」



 弾丸が飛び出して来ない。一体これは?弾丸の代わりに飛び出してきた物。それは、旗だ。その旗には何やら文字が書かれている。俺はソロリとその文字の書かれた旗を見る。



「…ドッキリ大成功?」




 何じゃそらっ?何が何だって何だ?訳が分からない。意味が分からない。確か、俺が桜子、柊、柚子と妹達の枕元にプレゼント置いてくるイベントのはず…。断じてドッキリではない。


「おーっほっほっほっほ!!来たわね、夏樹サンタクロース」




 深夜の空海家・庭にオカマな高笑いが響く。




「だぁーれがオカマか!?まぁ、良いわ、どうかしら?その、ロボット。我が音薔薇財閥が技術の随意を決して作り上げた、介護用ロボットよ!!」




 介護用ロボットォオッ!?こいつがぁあっ!?んな、バカなぁあっ!?




「んな事より、どういうつもりだ、よし子?ドッキリだぁ?一体、何がしたいんだよ、お前は!?」




 高笑いの正体は音薔薇財閥・社長、音薔薇よし子だ。こいつは、なにやら全身アミタイツという気持ち悪い格好をしている。




「そんな事て…。まぁ、良いわ。何がしたいですって?うふふふっ、当然!?貴方の邪魔よ、夏樹!!その貴方が持っている妹達へのプレゼント、私が貰う!!」




 何考えてんだぁぁあっ!?馬鹿か?いきなり、何を言うとるんだ、こいつは!?




「という訳で、介護用ロボット・ガリレイ!!夏樹を倒しなさい」



「任務再登録、リョウカイ。ターゲット・ロック、アタック!!」



 よし子の命令に反応した音薔薇財閥のロボット・ガリレイはガトリングガンを再びこちらに向ける。




「ちっ、ふざけんな。このプレゼントは妹達のだ。どりゃぁあっ!!」




 ガギィーンとガリレイのガトリングガンを蹴り上げる。かなりの重量だ。しかし、そんな事は関係ない。妹達のプレゼントを枕元におく。それを、完遂する事が今の俺の任務だから。



 ガチャン!!



「はっ!?」




 奇妙な音が俺とガリレイの下から聞こえる。俺はソロ〜と足下を見る。ギザギザの刃。輪っかにそのギザギザの刃があり、その輪っかはガリレイの足を見事に挟んでいる。




「こ、こいつは、虎とかを捕まえる時に使う罠じゃ?」



「あ、馬鹿ガリレイ!!アンタが罠に引っ掛かってどうするのよ。それで、夏樹を足止めするはずだったのに…」



 ほほう、コイツで俺の足止めをねぇ。虎をも仕止める罠でねぇ。あは、あはははは…



「よし子ぉおっ、馬鹿か己はぁーっ!?何が足止めだ!?これじゃ、足止め所か、足が無くなるわ、ボケェッ!!」




 あぁ、涙が、涙が流れる。何で、何で俺の周りにはこんな奴らしかいなんだ?太郎とか、マジで何を考えてんのか分かんないし…ん、太郎は何処だ?




 俺はキョロキョロと辺りを見渡す。しかし、いくら探せど太郎はいない。



「あのトナカイ、逃げやがったなぁ…」



 もはや、涙どころか鼻水さえ、出てきやしねぇ。訳の分からん友人よ。大事な所で逃げやがった友人よ。



「お前ら何か大嫌いだぁあーん!!」



 俺は大声で叫ぶ。ありったけの不満をぶちまける様に!!




「ピピッ、ターゲット・ロック、アタッ…」



「うるせぇい、デク人形がぁあっ!?馬鹿やろ、馬鹿やろ、馬鹿ばかバカ〜!!」




「ピッピピ、ダメージ増加。制御不能。ターゲット・消失。付加付加付加付加付加…ブレイカー・アウト。機体ガリレイ、制御不能。回線遮断…グッドラック」




 俺はガリレイを破壊する。そして、プレゼント袋を背負い、二階へと上がる。涙なんか、涙なんか、出てないもん!!断じて、鼻水なんか出てないもん!!うにゃにゃにゃにゃにゃーーっ!!




「あらら、ガリレイがやられちゃった…」



「まぁ、良いんじゃない?これで分かったでしょ、よし子?」




「太郎…。そうね、貴方の推測…当たってるわ。夏樹、右側の目が見えてない。…まっ、とりあえず、データは取れたから良しとするわ。太郎、私、帰るわね」







―――――――――

―――――――

―――――

―――

――






 桜子は幼い頃から暗闇を怖がった。眠る時に電気を消すと、尋常ではない程に叫び、泣き、喚く。この娘のトラウマ。一体、何が彼女にあったのか…。桜子の部屋は小さな電球が明かりを灯していた。まるで、暗闇から彼女を守るように…。




「うにゃ…。にゃ?にゃにゃ?」




 まずいな。何かさっきのよし子との戦闘で声が『にゃ』とかしか出せなくなった!?まぁ、さして問題は有るまい。さて、桜子のプレゼントだが、確かオーディオ・プレーヤー…名前はアイ、アイ…アイ何だったけか?



 まぁ、良い音楽が聞けると良いな桜子。






―――――

―――

――




 柊は本当に寂しがりやな娘だ。1人でいる事を何よりも嫌う。そのくせ、1人で何もかもを背負い込んで、1人になってしまう。そんな、君がお兄ちゃんは、とても心配だ。でも、大丈夫だよね。桜子がいる、柚子がいる、凛も太郎もよし子も…。だから、俺が居なくても大丈夫だよね。


「ギギィ」



「にゃ!?」




 何だろう、今の声は?てか、声か今の?…ん〜、部屋には何もないな。何なんだ、今の?ん、人形?悪魔の人形か?こんなちっこい悪魔の人形なんて柊、持ってたかな?



 …まぁ、良いか。さて、柊のプレゼントはと…。お決まりだが、クマの人形だ。前から欲しがっていたからな、この人形。



 …最近のアニメグッズって高いのな。




―――――

―――

――




 柚子か…。まだ、逢って間もない妹。少し常識はずれな娘。コロッケを15個も平らげ、その手には似つかわしくない銃を持っている少女。彼女が一体何者なのか。分かりはしない。しかし、そんな事は関係ない。この娘は誰が何と言おうと、俺の妹だ。




 ん、しかし、この娘は何が欲しいのか…。とりあえず、柊とお揃いのクマの人形を用意しておいた。気に入ってくれると嬉しいんだが…。




 しっかし、マジで高いのな、今どきのアニメグッズって…。




―――――

―――

――




「にゃ、うにゃん」



「君は何を言いたいのかな?…ん、しかし、何だこの頭痛は?いたたたた、やめ、やめて、痛い痛い…」




 ん〜、まずいな。最後の仕上げとして凛にプレゼントをと思って凛の寝ている部屋に来たのだが、凛は酒の飲み過ぎによる頭痛の為か深夜にも関わらず起きていた。




「いたたた。とにかく、何だって君は私が寝ている部屋に忍び込んできたのかな?」




 滅茶苦茶、睨んでくる凛。

 かなりマズイ状況である。

 別に他意はなく、本当にプレゼントを枕元に置きにきただけなのだが…。しかし、本当にマズイ状況だな。弁解しようにも今俺は『うにゃ』とかしか喋れない訳で。はっ、待てよ。このまま弁解しなかったら、俺に変態の称号が!?



 マズイ!?いやいやいや、諸君が考えている以上にマズイ状況だ。てか、パーティーでの事を凛が覚えてるとしたら?………うわっ、今スゲェ、マズイ未来が見えた!?凛は空手有段者だ、あぁ、マズイよマズイよ、本当にマズイよ〜!?




「……君は本当に何を考えて私が寝ている…。私が寝て、私が…寝て」



 ん、何だろう。急に凛の顔が真っ赤に。あら、目線を外された?凛がうつ向いて、表情が見えない。ま、まさか、あまりにも怒り過ぎて、顔が真っ赤に!?




「君…私が寝ている所にやってきたという事は…だな。その、つまり、あの…」




 凛らしくない歯切れの悪い会話だな。何だろう、怒ってはない?ん、凛が顔を上げたぞ?




「君、その、コレはつまり、夜這いか!?」




 夜這い?…て、あれか?男が好きな女に思いを伝える為、もしくは、性的欲求をぶつける強行行為…の夜這い?誰が?誰を?




 …えぇと、この場合、男は俺で女は…




「うに、うにゃ…。うにゃぁぁぁぁぁあ!?」



「えっ?ちょっ、君!?何処へ?こら、そっちは窓だぞ!?あっ!?」




 あまりにも、予想外の事態に、この日、二度目となる二階からの紐なしバンジーをした、俺なのだった。




 こんにちは。

 すいません。約束の期日を守れませんでした。色々な事をしている内にこんな時間に…。本当に申し訳ございませんでした。




 とりあえず、第三十八話目です。夏樹サンタ苦労すです。ギャグです。くだらないですか?すいません、笑ってやって下さい(笑)



 ロボットが登場。何やらSF要素が膨れ上がってきました。そして、よし子と太郎の思惑。彼らは一体何をしようとしているのか…。



 そして、夏樹の何やら思いつめた感じ。一体何を考えているのか。コメディのサンタ編なのに、謎だらけの話に。



 さらに、気になる夏樹と凛の関係。バトルアクションラブコメディですから、ラブがないとね。…ラブかな?



 では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。そして、すいませんでした。




 空海家の事情。前にも書いたのですが、より詳しい話を…もうそろそろ作らないと(笑)

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