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第三十一話:日常という幸福




 朝ご飯て何だと思う?俺は今日1日を元気に過ごすための原動力だと思う。




「みゅう、にぃの玉子焼き…ちょうだい?」




 そう言われたので俺は柚子に玉子焼きを渡す。『みゅ、にぃ大好き』と柚子はにっこりと笑う。あぁ、なんて可愛らしい笑顔なのだろう。




「うっ、柚子めっ。…兄、私はそのウインナーを所望します」




 そう言われたので俺は柊にウインナーを渡す。『兄、大大大好きです』と柊が叫ぶ。あぁ、コレはコレで何やら可愛らしいな〜。



 何というか、幸せだ。こんなにも可愛らしい二人が自分を取り合っているのだ、幸せに感じない訳がない。神よ、いままで信じず馬鹿にしていて…ゴメンなさい!!あはははは〜っ、幸せ過ぎて鼻血出そう〜!?




「……出てるわよ、馬鹿兄。言葉も鼻血も…」




 あはははは〜っ?何かなぁ、桜子も僕の取り合いに参加を…




「黙れロリコン!!」


「ぶひゃあっ!?」




 あまりの幸せ空間に我を忘れている俺に桜子の鉄拳がズガンとささる。俺は椅子ごとガタンと真後ろに倒れる。鼻がじ〜んとする。あ、小学生時代のプールで鼻に水が入った時の感覚がする。つ〜んて、頭につ〜んて来るやつ…。



「…夏樹、君たちはこんな生活を毎日続けているの?」




 太郎が倒れたままの俺の顔を、覗く様にして言う。俺が『そうだよ』と起き上がり言うと太郎は。




「ふ〜ん、家族って変。朝から漫才をするんだ?」




 ……えっ、どういう解釈!?今の何処が漫才だったの?俺は太郎の顔をまじまじと見る。何やら太郎は『う〜ん』と唸っていた。何を考えているのやら…。




―――――――

―――――

―――

――




「だから、私は言ってやったの。…あんたじゃ、このプロジェクトを完遂させる事は出来ないわって…」




 午後になって我が空海家によし子がやって来た。彼…いや、彼女?あぁ、もう、よし子は何やら俺に用事があるとの事だが、桜子や太郎と話をしていて一向に用件を言ってこない。




「よし子さんてキャリアウーマンの鏡なんですねぇ…」




 桜子がよし子の話を聞いて何やら敬意の念をよし子に送っているが、桜子よ一つ間違いがある。…よし子はウーマンじゃない!!




「何か言ったかしら、夏樹?」




「いえっ…」




 相変わらず鋭いな…。前回言ったようによし子には『言ってはいけない禁句』がある。彼にその禁句を言おうものなら…。


「桜子ちゃん、よし子はウーマンじゃないよ。ただのオカ、ぐげっ…」




「おほほほほほほっ。あら、やだ、どうしたのかしら馬鹿太郎ったら…?」




 ……太郎の顔に血の気がない。何をしたんだろう、よし子のやつ?




「て、違う。よし子、早く用件を言え。一体、俺に用事って何だ?」




 俺はソファーに座るよし子を見る。相変わらず、毛皮のコートだの金のネックレスだの豪華でごちゃごちゃな服装だ。




「あら、そうだったわ。いや、何、別に深刻な話じゃないの。ただ、貴方、退院したじゃない?だから、クリスマスも近い事だし…」



 そう言いよし子は立ち上がる。そして、にっこりと微笑み。オペラ歌手の様に両手を挙げ言う。




「つまりは、パーティーをしましょうて事よん!?」



「パーティー?」




 パーティーねぇ。いやまぁ、クリスマスパーティーなら毎年、うちでもしてるけど…。




「なんだよ、何を考えてんだお前?」




「いやん、別に変な事を考えてる訳じゃないわよ?夏樹、貴方、ローズアリアって知ってる?」




 あぁ、駅前のケーキ屋だ。確か、桜子がそこのケーキが好きだったような…。でも、それが何なんだろうか。俺はくにゃっと首を傾げる。よし子の言わんとする事が分からない。一体、彼は何を言いたいのだろうか。




「うふっ、知ってるみたいね。実は、あの店は私のなの」




「えぇ、本当ですか?私、あそこのイチゴショートやモンブラン、大好きなんです〜!!」



 『きゃあー、うそー!?』と騒いでいる桜子。そんな桜子を見て俺は昔、よし子が語っていた夢について思い出す。大企業・音薔薇財閥の息子のため進路は既に決まっていたよし子。だが、幼き日の彼の夢は『ケーキ屋さんになること』だった。しかし、彼は親に反発する事もなくここまでやってきた。これは、彼なりの夢実現といった事なのだろう。俺はそんな考えに至り、物思いにふけてしまう。



 ローズアリアねぇ。…ローズは薔薇で、アリアは…アリアはオペラの用語だけど音って事かな?つまり、薔薇音、もとい、音薔薇か…。なるほど、気付かなかった。




「ん?で、なんでパーティーなんだ?」




「あぁ、つまりのつまりね。ケーキを買えって言ってんの!!」




 って、商売しに来たのかよ、コイツ!?…はぁ、何というか、ホント商売屋の息子だよ。




「あら?馬鹿太郎の口から泡が…」



「つおっ!?やべぇ、医者、医者医者〜っ!?」



「あら、夏樹、医者ならここにいるじゃない?馬鹿だけど、一応は医者てしょ、太郎は?」




 あぁ、そうか。何だ、慌てる事は…って、馬鹿ぁ〜っ!?




 とりあえず、救急車で病院に運ばれた太郎。1日入院して我が家に戻ってきたのだが…。彼が言うにはその時、夢の中で死んだはずのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会ったという事らしいのだ。…太郎よ、それは本当に夢だったのか!?

 こんにちは。

 いつの間にか、柚子を加えての日常に戻ってきました。しかし、空海家には通常という日常は無いらしく…(笑)




 さて、第三十一話目。よし子についての話になってますね。そして、ローズアリアとは音薔薇の事を指す様です。これは、意外と重要な設定でして『月影』と同じく至る所に出てくる名前です。





 では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。



 クリスマスシーズン到来。なのでここらで一発クリスマスな話を…?とりあえず、コメディ編、続きます。



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