第二十五話:容疑者・黒少年
中学校近くで起きた殺傷事件を捜査している俺と太郎。ひょんな事から太郎の奴に火がつき只今、暴走中…。
「犯人はお前かぁぁ!?」
「きゃあああ!!」
「うわ?何だあんた?」
「な、何だぁぁ!?」
「犯人はお前かぁぁ!?」
「ひぃぃぃ」
「変質者だぁぁ!!」
「な、何者?」
「け、けけ警察ぅぅ」
出会う人、出会う人に『犯人はお前か』と襲う勢いで聞いていく太郎。てか、逆にコイツのが変質者になってるし…。
「犯人はどこだぁぁ!?」
「落ち着け…。大体の聞き込みは終わったから。お前が暴走してる間に…」
「だからっ!?」
「いや、だから…。大体の目星というか、容疑者というか…」
あまりの太郎の迫力に押される俺。太郎は昔から怒らせると恐い。しかも、その怒る基準が分からないため、俺も未だに扱い方が分からないのだ。
「はーんにーん?夏樹ぃ、行くよぉぉお!!」
と、とりあえず、俺達は、一応の容疑者を探しにこの場所を離れる事にした。
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「あれが一応の容疑者だ」
そう言い俺は道路向こうの少年を指差す。黒い学生服に黒い靴。彼は、あまり友人がいないのかよく1人で行動をしているとの事…。そして、最後の情報によるとナイフを…、所持している。
「いいか、太郎?まずは様子見だ。彼が、怪しい行動を取った所で…」
「むきゃゃゃやあ!!お前が犯人きゃあああ!?」
あー、うん。…皆はちゃんと人の話しを聞こうね?
「……」
「だんまりきゃぁぁあ!?制裁を受けりょょょっ!?」
ズダダダダと黒少年に向かって行く太郎。そして、ブワッと黒少年に飛びかかる!!クソッ、馬鹿太郎…怪我をさせたらこっちが犯罪者だぞ!?
「………!!」
「ぎゃあっ!?」
どうやら、俺達は犯罪者にならなくて済んだようだ。なんと、黒少年は飛びかかって来る太郎を交わし、逆に殴り飛ばしたのだ…!?
「……むけけっ?このっ!!」
「やめろ、太郎っ!!」
俺は、黒少年に再度、飛びかかろうとする太郎を呼び止める。
「それ…。ナイフだね?」
黒少年が手に持っているのは、鈍い光を放つナイフ。持ち方が妙に手馴れている。
「…何者?」
黒少年が俺達に問いかける。当然であろう。いきなり、襲われたのだ、怪しく思わないはずがない。
「俺は刑事だ。最近、ここらで起きている殺傷事件を調べている。…情報によると君はよく聖城中学のウサギ小屋に出入りしているらしいね?しかも、そのナイフを所持している。…正直に言おう、俺は君を疑っている」
黒少年の真っ直ぐな瞳。揺るぎない…。俺は、酷く率直な意見を述べた。犯人ならば何かしらの反応がある筈だが…。彼は、本当に真っ直ぐな瞳で俺を見る。
「君は、犯人じゃないのか?」
「………」
黒少年は俺の問いかけに答えない。ただ、俺をじっと見つめている。
「だんまりかい?夏樹と違って…、僕は優しくないよ?」
「ちょっ、待て!!太郎!?」
太郎は黒少年に殴りかかる。太郎はこれでいて強い。空手、剣道、柔術…。あらりとあらゆる武術を会得している。
「はぁ、ああっ!!」
太郎の拳が黒少年を捉える。ガスッという音と共に黒少年が後ろに下がる。
「………、っ!!」
「うわっ!?」
黒少年の反撃!!太郎の打撃で後ろに下がったと思ったが、違う!!黒少年が後ろに下がったのは、攻撃に反動をつけるためだったのだ!!ズバッと太郎の胸辺りが切れる…。
「ちっ…、ブランドなんだよ?この白衣…」
間一髪…。太郎は白衣を切られただけの様だ。バサッと白衣を脱ぎ捨てる太郎。
「本気で…、行くよ?」
「……承知」
そう言い二人は激しくぶつかり合う。太郎の拳が黒少年の頬に当たり、黒少年のナイフが太郎の腕を切りつける。両者、一歩も引かない。
「てぁっ!!」
太郎の回し蹴り!!ズドッと黒少年の横腹に食い込む…。
「ぐっ…!?」
怯んだ!?勝負が決定する。太郎の勝ちだ。黒少年の膝が地面に着き、手が横腹を押さえる。太郎はそれを見逃さない。『とどめっ!!』と太郎は黒少年に飛びかかる。そして…
「…不覚……が、甘い!!」
「なにっ!?」
瞬間、太郎の体が宙に舞う。なんという戦闘センス!?飛びかかってくる太郎を掴み投げたのだ。投げ飛ばされた太郎は住宅のブロック塀に体を打ち付ける。
「君…、凄いね。夏樹以来だよ…投げ飛ばされたのは…」
太郎は立ち上がる事が出来ない。強い、太郎をここまで追い込むなんて、並みの強さじゃない…。
「…感謝…しかし、貴方も強い…」
そう言い、黒少年は脇腹を押さえる。余程、太郎の回し蹴りが効いたのだろう。
「…立て、ますか?」
黒少年は太郎に手を差し伸べる。…どうやら、俺達は間違っていたようだ。この少年は、犯人じゃない。
無論、論理的な理由はない。だが、俺を真っ直ぐに見ていた瞳。いきなり、襲ってきたにも拘わらず太郎へのあの配慮…。この少年がウサギを傷付ける犯人な訳がない!!
…しかし、それでは犯人は誰だ?他に犯人の手掛かりは無い。どうやら、捜査は振り出しに戻ってしまったようだ…。
「えっ?君、犯人を知っているの?嘘?本当に?」
「肯定です…。俺は、犯人を捕まえに行く所でしたから…」
なんと?黒少年は犯人を知っている!?
「夏樹…!?」
「あぁ…。君、俺達も一緒に行って良いかな?」
「…承知!!」
そう言って、黒少年はコクンと頭を縦に振る。頼もしい限りだ。
「さて、少年の了承も得た…。振り出しから、一気にゴールといこうじゃないか!!」
すでに辺りは夜。闇夜に紛れ街外れへと消えゆく俺達。月明かりが道を照らす。まるで、俺達を祝福するかの様に明々と…。そう、不気味なくらい明々と…。
こんにちは。
前回、アクセス表示に不具合があったと申しましたが…。無事、直りました!!いやー、管理者さんに連絡した所、早々に直して頂けました。とても、仕事が早いです。私も見習わなければ…。管理者さん、ありがとうございました。
さて、第二十五話です。事件がもう解決しそうです(笑)たぶん、兄と新キャラの黒少年が、ぱぱーっと解決を…?
しかし、黒少年…。似てますね。え?誰にって、そりゃあ…。黒くて、ナイフを使う、アイツですよ。
まぁ、そこら辺の事情は次話にて…。
では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。
や、やっぱり、話構成が急展開!?き、気にしない方向で…(笑)