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第十七話:病院では、お静かに…




 病院って、退屈だ。何だこの退屈さ…。はぁ、さっきまでは桜子と柊がいたのに…。




―――

――




 超高層ビル、ニュー・エントランスビルを爆破しようとしたテロリストに立ち向かい、怪我をしてしまった俺。



 銃弾が3発貫通し、2発が体内に残っていたらしい。そして、ナイフによる軽傷及び脇腹の深い傷…。普通なら血液が足りずに死ぬという所なのだが…。



「やはり兄は無敵です!!」


 そう言ってニコニコと俺に笑いかける柊。


「私は信じていました。兄は…兄は、絶対に大丈夫だって…」



 そんな事を言う彼女だが…目の辺りが赤く染まっている。泣いてくれていたのだろう…。彼女の泣く姿が容易に想像できる。



「兄…?」



 柊が『どうしたの』と心配そうな声で話かけてくる。



「あ、いや…何でもないよ」



 言葉ではそう言っているが…心は違う。自分への苛立ちで胸がいっぱいだ。妹達を泣かさないと決めていたのに…。



「ちょっと、柊…。お兄ちゃんは疲れてるんだから…」



「うぃ…そうでした…ごめんなさい、兄…」



 しまった。また、妹達にいらん心配をさせてしまった…。



「じゃ、私達帰るから…。ゆっくり、休んで、ね?」




 そういって彼女達は、俺のいる病室を後にした…。



―――

――



 で、いまに至る…。


「退屈だ…。うぅー、桜子ぉ…柊ぃ…」




 寂しいよー。1人は嫌だよー…1人は…嫌だ…。



「ぃっよぉー!!なんだ空海?撃たれたってぇ?あはははっ、馬鹿だなぁ、お前」




 あまりの孤独感に鬱に入ろうとした俺。しかし、その瞬間ドッパーンと病室のドアが勢い良く開いた…!!



「ぎゃはははっ!!うけるぜっ、だから言ったろ、高橋?絶対、こいつ痛めに合うって?ぎゃはははーっ!!」



「駄目ですよ、黒田先輩…。静かにしないと、病院なんですから…」



 入ってきたのは、県警の捜査1課・強行犯係、黒田秋人…。俺の2年先輩でいやみな奴だ。


 そして、同じく1課・強行犯係の高橋君だ…。彼の方は、俺の3年後輩である。




「空海ぃーっ…。ぷっ、ぎゃはははははっ!!」



 マジでムカつく!!いくら2年先輩だからって笑いすぎだろ?



「病院内はお静かに!!」




 馬鹿みたいに笑う黒田さん。しかし、あまりの大声に通りかかった看護婦さんに怒られてしまった。はっ、良い気味だ…。



「いや…申し訳ない…。僕とした事が、病院で大声を出すなんて…。あぁ、なんて馬鹿な事を…」



 …確に、馬鹿だな。何だ、そのキャラの変わりようは…?



「…ところで、看護婦さん。どうですか?一度、僕とお食事でも…?」



 口説き始めたよ、この人…。てか、何しに来たんだよ、この人?


「お断りします。それに、今は看護婦ではなく、看護師です」



「あ…すいません」




 ぷーっ!?ぎゃははははははっ!?こ、断られてやんの…くっ、くはははははははーはっ!!



 看護婦…いや、看護師の女性は『では、お静かに』と言い部屋から出ていたのだが、その後に残された黒田さんの姿がかなり傑作で、笑いを堪えられずにはいられなかった。



「ひーっ、ひひひひっ…あははははははっ」


「テメ、笑い過ぎだろぉがっ!!」



 黒田さんが何か言っているが構わない。お腹が…お腹がよじれる…。


「まぁ、黒田先輩って署内じゃモテモテの部類に入りますからねぇ。フラれる所なんて、滅多に見られるものじゃないですし…」



 高橋君の言う通り。この腹黒の男のどこが良いのか、意外と黒田さんはモテる。本人もそれを鼻にかけ、よく俺に自慢をしていた。…が、フラれた…。ぷっ、ナルシストに『僕と一度、お食事でも…』とか言ってフラれてやんの…。これが、笑わずにいられるかっ!?



「がぁぁぁっ!!消去しろ!!今すぐ脳内からデリートしろぉぉぉっ!!」



 うわっ!?お見舞いの果物を投げてきたよこの人!?



「バナナぶどうにさくらんぼぉぉっ!!」



 果物の名前を叫び、それらを投げてくる黒田さん…。こ、この人、子供だ。



 バシュッ!!



「ぎゃはははっ!!りんごヒットー!!けーっけっけっ!!」



「ちょっ、黒田先輩?やり過ぎですよ?…空海先輩?だ、大丈夫ですか?」




 はっはっはっ…。いや、いや、いや…。何、何…。



「う、空海?」


「空海…先輩?」



 いやぁー、子供だなぁ…。りんごかぁ…。あははっ………。




「テメェ、ふざけんなぁっ!!この馬鹿がぁーっ!!いてぇよ、いてぇんだよぉぉっ!!てか、りんごって何だぁぁぁぁあっ!!」




 遂にぶちギレた俺!!りんごが顔面を直撃したのだ、キレない訳がない…。ベッドの上にズァァッと立ち上がり、黒田さんを見下す。



「う、空海…。待て。わ、悪かった。マジで!!マジで悪かった!!」



 今更…おっそーい!!あっはっはっはっ!!



「空海、悪かった、悪かったから…その、その、メロンをこっちに投げないでくれぇぇえっ!!」



 黒田さんの言う通り、俺の手にはメロンがある。実がギッシリで固いメロンだ。うふふっ、コイツは痛いぞぉー。あははははっ、りんごなんて比じゃないぜぇぇっ!!



「ひぃぃいっ、こぇぇっ!?空海の顔が笑ってるけど笑ってねぇぇえっ!!」



「うふふふふふーっ!!テメェを、テメェをぉぉ…何が何でも、デストローイ!!」



 俺は、ズォォッとプロ野球選手ばりに振りかぶる。ターゲット、ロックオーーン!!




「だぁぁぁっ!?た、高橋ぃぃっ、助けろ。俺を助けろぉぉーっ!!」



「無理です。…黒田先輩、成仏して下さいね」



「高橋ぃぃぃぃいっ!?」



 あっははははっ!!日頃の行いの賜だなぁ、黒田さぁーん?



 本当にメロンを黒田さんにぶち当てようとしている、俺…。しかし、今まさに、といった所で…




「病院内はお静かにぃぃぃーっ!!」




 と、先程の看護師さんが乱入してきたため…。



 ガンッ!!



「ぎゃあああああっ!?」



 いや、やっぱり勢いが止められず…メロンは黒田さんにぶち当たった…。



「ぎゃああっ、看護婦さーん。血が、頭から血がぁぁっ!!」




  黒田さんは看護師の女性にすがるように頭から血がでていると訴える。


「大丈夫です。血なんか出てません。丈夫な石頭です!!」



 しかし、看護師の彼女はそう言って一蹴する。黒田さんは『そんなぁぁあっ?』と叫ぶのだが、やはり『お静かに』と一蹴するのだった…。



「空海さーん!?どんな理由があろうと他人にメロンを投げるのは感心しませんねぇ…!?」



 うわっ、とばっちりがっ!?ズンズンと俺の方に近づいてくる看護師さん。



「えっと…その…はっ、はははっ?俺とした事が…。いや、すいません。こんな美しい看護師さんを困らせるなんて…どうですか?一度、お食事でも…?」



 …だぁぁっ!?何を言ってんだ、俺はぁっ!?てか、これじゃ、黒田さんの二の舞にぃぃっ!?



「おい、高橋。アイツ馬鹿だぞ?しかも、真性の馬鹿…」



「く、黒田先輩!!」



 クソーッ!!黒田さんの奴、好き勝手言いやがって。大体、アンタにだけは言われたくねぇよっ!!アンタも同じ事をしただろうがっ!!



「えっと…。その…」


 あぁー!?看護師さん引いてるよー?うわー、俺も黒田さんの様に…


「や、夜勤が無い日なら…いつでも…」



 ほらーっ!!やっぱ、俺も同じく…




「「「えっ!?」」」




 ……その後、俺が黒田さんにボコボコにされたのは言うまでもない…。

 こんにちは。

 番外編を一気に載せて、今日はもう良いかなっと思ったのですが…。


 でも、まぁ、書き上げたのだから、さっさと載せておこうかなっという訳で…本編です(笑)




 さて、第十七話目です。奇跡的生還の兄!!退屈な病院生活を満喫中かと思いきや同僚がやって来て…(笑)



 黒田秋人…結構、好きなキャラです。兄とは違う勤務場所なのですが仲が良い?同僚のようですね。高橋君と三人で三馬鹿トリオかな…?



 では、この辺りで失礼致します。ありがとうございました。


 …兄は、意外とモテる!?

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