番外:夢現(ゆめうつつ)
…あ、れ?どこでしょう、ここ…?
「…むむむっ、何だ?」
目が覚めてみたら、そこは知らない場所だった。
「紫の壁?…いや、クリスタル?」
どうやら、洞窟のような、そうじゃないような所のようだ…。壁はクリスタル調で紫色。どこかの洞窟のように見えるのだが…。
「扉だよな、これ?」
洞窟にして扉…。あっれぇ?何か訳が分からなくなってきた…。
「…おっ邪魔しまーす」
とりあえず、俺はガチャリと扉を開けた。この扉以外に出口が無さそうだったため、躊躇いは無い。
「………あっ、こんにちは」
「…こんにちは…」
…人が居たよ?…何だこの展開は?
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「へぇ、妹さんがいるんですか。しかも、2人」
「そうなんだよ。いやー、2人とも可愛いくてねぇ…」
見知らぬ土地にいつの間にか来てしまった俺。扉向こうのこの男の子も同じようで、この見知らぬ土地に来てしまったらしい…。
とりあえず、仲良くなった俺達。お互いの境遇を話す事になったのだ。
「俺は、一人っ子でして。羨ましいなぁ…」
少年は、高校性ぐらいだろうか…。背は俺よりやや小さいが…どことなく俺と雰囲気が似ているような気がする。
「まぁ、居候がいるんですけど…そいつがまた…」
「へぇ、居候?」
『えぇ』と、その居候の話をする少年。何やら居候の人に対して不満が多多あるらしく。
「たく、それでですよ?最初に会った時は、玄関を爆破しやがったんですよ?…信じられます?爆破ですよ?」
と、凄い勢いで語り始めた…。しかし、玄関爆破ねぇ…凄いな!?
「ことある事に銃を乱射するし…。何を考えてんですかね!?」
…何考えてんだろうねぇ…。銃の乱射かぁ…。
爆破に、銃の乱射…。あれ?何か…頭をよぎった?
「痛っ!?」
「えっ?どうしたんですか?」
痛い。何だ?急に脇腹とか背中とかが…!?
「あれ?何だ?俺の体が…消えて?」
「!?」
な、何だよこれ!?俺達の体が透明になって…
「…な、何か、消えてしまう…みたいですね」
「痛たたっ、みたいだね。…名前、言ってなかったね、そういえば…」
「あ、確に」
良く分からないが、どうやら時間らしい…。もう、彼とは会えない。その事だけがはっきりと頭にあった。何故だろうか、そう思っているのだ…。そして、たぶん彼も…
「俺の名前は、夏樹…。空海夏樹て言うんだ…君は?」
もう、俺の体は肩から下が無い。そのため、脇腹と背中の痛みも消えていた。ただ、もうすぐ残りの体も消えてしまう、その前に彼の名前を聞きたい。どことなく俺に似ている少年…。一体、君は誰なんだ…?
「なっ!?は、ははっ…。そうか…、すいません。何で俺達がここにいるのか分かりましたよ…」
「?」
少年は笑う。俺の名前を聞いた事で俺達がここにいる理由が分かったと笑う。
「俺が貴方を呼んだんだ…。俺が一番会ってみたいと思ってた人…」
「君が、俺を呼んだ?」
どういう事だろうか。彼の言葉が理解出来ない。てか、顔だけになって…
「あっ!!待って、聞いて下さい!!俺の名前!!俺のなま…は…」
駄目だ…。もう彼の声が聞き取れない…。消えていくと同時に、意識も…
「…の名前…うつ…そ…ま…です」
混濁の意識の中…結局、俺は彼の名前を聞き取れなかった…。
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あ、れ?どこでしょうか、ここ…?
白塗りの壁…。なんか、病院のベッドみたいな…ベッド?…匂いとかモロに病院だし…。
「きゃぁぁあっ!!」
…おい、おい。人を見るなり叫び声をあげるとは…何て看護婦さんなのかな?
「せんせぇー!!307号の空海さんが目を…目を覚ましましたー!!」
…看護婦さんよ、病院はお静かに…。て、本当に病院かよ…。
「あぁ、そっか…。いっぱい、撃たれたんだっけ。脇腹もグッサリと…」
外はまだ暗い…。しかし、夜ではないと思う。まぁ、なんだ…朝早くからテンションの高い看護婦さんだったな。
うぅーっと、体を伸ばす…。帰ってきた…。何か良く分からん世界だった…。一体、何だったのだろうか…?
「少年の名前…。うつ、そ、ま?」
断片的に聞き取れた声。…うつ、うつ、うつ…うつみ?
不意に俺の頭に自分の名前が浮かんだ…。いや、いやと否定はしてみるものの…どこか自分に似ていた少年。
「…まさか、ね」
こんにちは。
番外編を一気に載せていきました。まだ少し残っているのですが…とりあえず、今回はこれで終了。
次からは本編です。こちらは、まだ書けていないので頑張って早めに完成させたいと思います。
番外編では兄の補足って事で兄の過去の話を2つ書きました。だいぶ、兄のキャラ設定が固まってきたのではっと思います。
さて、この番外の話では謎の少年が出てきました。…いや、少年は謎のままですよ?しかも、本編にも登場しません。とりあえず、兄の妄想って事で…(笑)
では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。
兄、生きてました。…あっ、この番外編…本編に繋がってます。