第十三話:暫しの休息にて、再びコロッケ少女…
んんっ…。んー。うー…うっ!?
「起きた…」
あん?何だっけ?あー、何か体中が痛いんですけど。
「うー。変?…頭打った?」
頭は打ってないと思うけど。…あぁ、コロッケ少女か。
「にぃ、起きる」
『にぃ』とは?てか、何で倒れて…
「痛だだだだっだ!?何だぁ!?」
ガムテープ?何でか知らないが、ガムテープが俺の体をグルグル巻きにしている。…そういや、銃で何回も撃たれたんだっけ。
「…で、何でガムテープ?」
「…にぃ。撃たれた。血が…ドドババ?…包帯ない…ガムテープ!!」
長いセリフを言い終えたからなのか、包帯の代わりにガムテープを代用した事が自分自信で良いアイディアだったと思ったのか…コロッケ少女は、エッヘンとその小さな胸を前につき出す。
「あぁ、にぃって俺の事か…」
「ひぃう…。良い、アイディア…。包帯…ガムテープ。包帯…ガム…」
やはり、彼女は包帯の代わりにガムテープを使った事に対しエッヘンとしたらしい。…が、俺が気にせず『にぃ』という言葉の方に気をやったため…もの凄く落ち込んでいる。
「ガムガムガムガムガムガムガムガムガムガム…」
うぉっ!?壊れた?何かガムガム言ってるよ…でも、怖いと言うより…可愛い。
「…あぁ、うん。ガムテープとは良いアイディアだ。包帯が無い中でこんな止血の仕方があったなんて…、うん、君は頭が良いな…」
…駄目?やっぱ、こんな取って付けた様なもんじゃ…。
「みふぅー」
あ、効いたみたい。何かスゲェ恍惚な表情してるよ…。
「…てか、何で君がここに?」
当然の疑問であろう。彼女はテロリストの仲間だ。まぁ、このビルに居てもおかしくないが…何故、このフロアに居るのだろうか?しかも、敵である筈の俺を助けるなんて。
「イシュ…44階で…にぃと戦うって言った…にぃ、傷付く…私嫌」
…なんだろう。この事件で黒くなりつつある俺の心が、浄化されていく気がする。心が…。
「あれ?でも、良いの?君の仲間だろ?月影とか、その…イシュ?とかいう奴は…」
「月影…恩人…でも、仲間違う…一緒にこの国…来ただけ」
「…そうなんだ」
良かった…。俺はこの娘を敵にしなくてよくなったのだ。安堵の溜め息が出る。
「ふー…」
「みふぅー」
どうやら彼女は普段あまり喋らないらしく、沢山喋って疲れたらしい。俺と同時に溜め息をつきコテッと俺の体にもたれ掛った。
「みゅう…にぃ、良い匂い」
「ぶっ!?匂い?いやいやいや、こんなおじさん捕まえて何を…」
「にぃ…おじさん、違う」
…うぉぉっ!?おじさん違う?だぁぁっ!?妹に、桜子に『オジン、オジン』と言われ続けて、自分でも『俺って、オジンなのか?』って、思い始めてたのに『にぃ…おじさん、違う』?
あぁ、可愛い。何て良い子なんだ?あぁ、良かった、良かったよぉ。本当に敵にならず良かったぁー!!
「みふー…みふー…」
あれ?寝ちゃった?…可愛い。寝顔とか本当に可愛いらしい。あぁ、生きているって素晴らしい!!
「みふー…みふー…」
「……」
「みふー…みふー…」
「………」
「みゅぅー…」
「…………」
あぁっ、デラ可愛いぃっ!!ナマラ可愛いぃっ!!ホンマ可愛いぃっ!!ホンナコツ可愛いぃっ!!
「…あれ?…何か大事な事を忘れて…あっ!!」
しまった!?俺は一体どれくらい気絶していた?残り時間はどれくらいなんだ!?
「君、君!!起きてくれ!!一体、今どうなっているんだ!?」
可愛い寝顔のコロッケ少女を無理矢理に起こす。そんなコロッケ少女は『ふゃぁ?』と目を擦りながら俺を見る。
「爆破まで、残りどれくらいなんだ!?」
マズイマズイマズイ!!
「にぃ…大丈夫だよ…後30分ある…」
30分!?ギリギリだろ!?残り21階も上なんだ。いや、しかも、俺は怪我をしている…クソォッ!!
「…にぃ…エベレーター…使える…大丈夫!!」
ガンッ!!と床を握り拳で叩いた俺に対し、彼女はニコッと笑い俺の強打して赤くなった手を優しく包む。
「エベレーター?…エレベーター!!本当に?本当にエレベーターが使えるのか?」
「うん…にぃのため…私…頑張った」
あぁぁ、何て良い娘なんだ…。どうしてここまで俺に優しくしてくれるんだ?うぅっ、なんか胸がドキドキする。…はっ!!何を考えた今?馬鹿か俺は?まだ、少女だぞ?いかんいかん。
「君はエレベーターで下に行くんだ。ほら、俺の警察手帳…これを見せればヤクザ顔の人が保護してくれる」
急がねばならない。彼女を下まで送っていく事さえも出来ないくらいに…。
「でも…にぃ…月影強い…私…にぃと一緒に…」
「駄目だっ!!」
激しく吠える俺。彼女はビクッと体を強張らせ泣きそうな顔になる。だが、彼女を連れてはいけない。月影が強いなら尚更!!爆破を止められるか、わからない。爆発に彼女を巻き込む訳には…。
「大丈夫…だから、ね?下で待っていてくれ」
「…ふゅ…」
コクンと彼女は頷く。瞳に涙をいっぱいに溜めながらも素直に下行きのエレベーターに乗る。彼女の真っ白な頬に指で触れ涙を拭ってあげる。
「終わったら…また、コロッケ…買ってあげるね」
彼女を乗せたエレベーターは1階へと向かい降下していく。俺のいる44階はとても静かだ。精神を研ぎ澄ます。深呼吸を繰り返す。
チーン!!
どうやら、コロッケ少女を乗せたエレベーターとは別のもう一つのエレベーターが44階に着いたようだ…。
「よっしゃぁあっ!!」
バッチィィイン!!と両頬を叩く。目が覚める。気合いだ。これから、俺は本当に死ぬかもしれない。体か震える。足がガクガクだ。だから、気合いだ!!
再び、バチィィイン!!と静けさを保つ44階のエレベーターホールで痛いたしい音が木霊する…。
…さぁ、決戦だ!!
こんにちは。
やぁー、コロッケ少女がやっと出てきました。出したいなぁ、と思っていたんですが出すタイミングが無く、こういった形で出る事になりました。
コロッケ少女は、いたく兄を気に入っている様で…もぉ、ラブラブですね(笑)
さて、次話にて再び月影登場!!決戦ですね。でも、兄は根性無しです。しかも、コロッケ少女が言った通り月影は強いです。…さて、どういう事になるのでしょうか…?
次話、『シリアス編』改め『エントランスビル事件編』…クライマックス予定!!
では、今回はこの辺りで失礼致します。ありがとうございました。
クライマックス…小学校にて『話の山場』って習いました。でも、山場って…何?(笑)