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第十話:激動の流れにて、始まり

シリアス編、完・全・始・動!?


 …あぁ、待って引き返さないでぇ!!



 大学を出て、親父と同じ警官の道を選び進んで約五年…。曲がり形にもそれなりにやってきたつもりだ。


 これでも手柄は大きい物から小さい物まで数々取ってきた。


 …まぁ、同じ数だけのヘマもやらかしきたので未だに平巡査なのだが。


 しかし、これまで培ってきた足で稼ぐ捜査や直感による事件解決といった刑事に必要とされる能力は、どんな刑事にだろうと負けはしない。


 そして、今まさに俺の直感は冴えに冴えわたり…この場から逃げ出す事を提案してきている。




「七号。あなたは、このような場所で何をしているのですか?件の任務は果たしたのですか?」



 七号…。どうやら、このコロッケ少女の事を差しているようだ。


「…予定、早く終わった。だから…コロッケ」


 俺が先程この少女にコロッケを買い与えたのだ。仕事で食い逃げ犯を捕まえるため商店街をウロウロしていた所、少女が俺にコロッケを買うよう懇願してきたからだ。


「良くわかりませんが…そちらの方は、お知り合いですか?」



「いや、俺はただ、この少女を補導した警官だ」


 迂濶だっただろうか?この黒服の男は、銃を所持していたコロッケ少女の仲間だ。そして、何より『任務』と言う所から何やら危険な匂いがする。

 もし、俺の勘が当たっていればこの手の手合いは警官に対し良い印象を持っていないはずだ。

 不気味な程に静けさが際立ち、俺の全身から汗が吹き出す。日中にて30℃前後、だが、そういう訳じゃない。



 目の前にいる一人の男。この黒服の男、この男からの異様な威圧感が俺を襲っているのだ。


 異様な空間に俺の全感覚が麻痺をする。

 男は俺を見据えたまま、不気味な笑みを浮かべる。だが、それが上辺だけだと感覚が麻痺している俺にもわかる。笑みを浮かべている筈の男、しかし、彼からは俺に対する敵意しか感じられないのだ…。



「ふふふっ、まぁ、そう固くならずに…」


 彼が口を開いたと同時に麻痺していた感覚は戻り、先程まで金縛りにでもあったかのようにがちがちだった体は力が抜け今にも倒れそうになった…。




 一体、何が起きたのだろうか…。俺には全くわからない。


 彼は最初から同じ笑みを浮かべていたというのにさっきは、体がこわばり汗が吹きだした。そして、頭がぼーっとし、俺は…死をも連想させられた。


 ふらふらっ、と体が揺れる。足下がおぼつかない。



「しかし、あなたも運が…無かった。これから、始まる新世界を見られないとは…」



 新世界?この男は何を言っているのだろう。思考が追い付かない…。今度は、酔っぱらった様な感覚が俺を襲う。


「まぁ、しかし、多大な犠牲の上に成り立つこの作戦ですから…さようなら異国の人よ」


 あぁ、そうか。冴えに冴え渡る直感が俺に告げる…お前はここで死ぬのだと。黒服の男が鈍い光を放つナイフを取り出し段々と近付いてくる。まるで、殺し慣れた殺戮者のように、いや、正にこの男がそうなのだろう…。



 27年…。27年間も生きた筈なのに俺にはこの殺戮者に対しての対処法を知らない。ただただ、死を受け入れる。それしか無い。


 男の間合いに俺が入ったのか彼は一瞬にして消える。この殺戮者は左下から鈍く光るナイフで俺の喉を掻っ切るつもりだ。


 ヒュン!!



 風切り音が妙に耳に付く。痛みは無い…プロとはこういうものなのだろうか、あまりにも巧く相手に痛みすら感じさせず殺すのだろうか…?





 否…否、否、否!!



 27年間、何も無かった?…ざけんな!!俺の人生を甘く見て貰っては困る。殺戮者に対する対処法を知らない?あぁ、知らないさ。知らないが何だ?…俺には、もっと格上の相手と戦った経験がある。それに、俺は死ぬ訳にはいかない。だから、だから!!



「馬鹿な?このタイミングで、避ける!?」



 一瞬だが死を受け入れた俺は男の攻撃に対し数秒のタイムラグがある。つまり、出遅れたという事だ、が…俺は奴のナイフを避け、更には奴の腕をも掴んだ。



「これは…よろしくないですね」



「だぁはっ!!やべぇ、お前の術にやられる所だった…」


 一級の殺戮者は、その眼光、仕草、喋りを以って相手を惑わし、そして、死を受け入れさせるという。つまりは、一種の催眠術。そして、今まさに俺も同じ事をされたのだ。



「がぁぁっ!!何か頭きた!!この俺に死を受け入れさせようとしやがって、喰らいやがれ!!」



 死ぬ事を連想させられ、死ぬ事を受け入れさせられた…頭にくる。俺は怒りに任せて男の顔面をおもいっきり殴り飛ばした。



 ドスン、と奴は宙を舞い地面に叩き付けられる。俺の渾身の一発、人間さえもブッ飛ばす!!



「ぶふぅっ、ぐふぁっ!?」



 殴り飛ばされ、地面に叩き付けられ、奴は悶絶する。妙な威圧感も今となっては皆無に等しい…ていうか、もう慣れた。



「くっ。くっ、くっ」


 クソか?コノヤロウか?まぁ、どちらでも良いが、言った瞬間さらにブッ飛ばす!!


 切れた俺はいつにも増して凶悪だ。妹達の前では良い?兄を演じているため、最近では穏やかな性格が板に付いてきたが…。


 実際は、どちらかというと粗暴に近い。


「くはははっ、ははははははははははははははははっ!!」


「!?」



 不気味。口から血をダラダラと流し、犬歯を剥き出しに、目を見開き俺を凝視し笑う。先程の冷静さの欠片も無い黒服の殺戮者…。



「面白い。実に興味深い人物だ…」



 いや、冷静は保っている。あれだけの大声で笑っていた男と同じ男とは思えないぐらいに冷静だ。ゆっくりと立ち上がり、今度は静かな瞳で俺を凝視する。


「素晴らしい!!いや、本当に素晴らしい!!是非、貴方に見て貰いたい…。これから始まる新世界を!!」


「新世界、ねぇ…」


 先程から繰り返し、この男が言っている『新世界』という言葉…。



 …心あたりが無くも無い。3年前のエントランスビル事件。



 階にして60階の大型ビルが爆破された事件。その犯人が何度も繰り返して言っていた言葉…それが『私は新世界を創成する』という言葉だった。


「何を…するつもりだ?」



 模倣犯…。また、あの悪夢を繰り返すというのか?そんな事は許さない、絶対に…だ!!



「ふふっ。貴方は頭も良いようで…。新世界というフレーズ、気になりますか?」



 どうやら、俺の心が奴に見透かされたようだ…。



「よろしい!!では…始めましょう。新世界へのカウントダウンです。さぁ、耳を澄ませて…」



 何がよろしい、だ。こっちは全然良くないんだよ。だが、そんな俺の思いに反し、男はカウントダウンを始める。


「…五、…四、…三、…二、…一、…」


 一体、何が始まるというのか?全く見当もつかない。そして、黒服の男が『零』とカウントダウンを終えた。




 瞬間!!ドォォオンと爆音が辺りに木霊する…。



「!?、テメェ…何しやがった?」



 男に聞くが俺は理解している。この状況でこの爆音…模倣犯。まさに、あの悪夢がまた繰り返されるというのだ…。



「くくくっ、いや何。ビルをね、ちょっと…爆破させて貰ったんです」



 予想通りというか、何と言うか…許せねぇ、本当に許せねぇ。何の罪も無い人達を傷付ける行為。例え、それが、神だとしても、俺は…許せない!!



「さて、私達はまだやる事が沢山あります。貴方ばかりに付き合ってはいられない。さぁ、七号。行きますよ」


 先程から俺達のやりとりを静観していたコロッケ少女。


 俺に至っては、目の前の黒服男に気を取られ存在すら忘れていた…。が、彼女を一緒に連れて行かせる訳にはいかない。そして何より、この男を今逃がしては、大変な事になる。だから、俺は立ちはだかった。


「俺が行かせると…思っているのか?」



 少女を抱き寄せ、男に銃を向ける。忘れているかもしれないが俺は刑事なのだ。だから拳銃を所持していても変ではない。


 コルト デティクティブ38口径・回転式拳銃。使い勝手は良いとは言えないが、殺傷能力は充分にある。


「止められますか?この偽りの平和に毒された、愚国の民の貴方に…」



 眼光が鈍く光る。これが殺戮者の瞳。全てを破壊し消しさるテロリストの瞳だ。だが、引き下がらない、理由が無い。逆に止める理由ならば沢山ある。だから、俺は戦う。この国を戦場にする訳にはいかないから…。



 誰でも無い、俺の大切な家族のために!!


「止めてみせるさ」



 戦後、平和を貫いて来たこの国で…戦争から最も遠いこの国で…。世界の全てを巻き込んで事件が始まる…。


 運命と言うには、あまりにも酷で…必然と言うにはあまりにも突然の出来事。


 どうやら世界は、俺が思っている以上に激動に流れつつあるようだ…。




 こんにちは。

 …前書き不要!?(笑)

 まぁ、さて置き。大分、書くのに時間がかかりました。しかし、私的には優・良・可の内…良、に入る出来栄えかと?


 ていうか、小心者なのでいくら自信があろうが口が裂けても優とは言いません!!大体、他の作者さんと自分を比べたら…ぎゃあっ!!


 と、半日もしくは三日間はヘコみますよ、えぇ。



 さらに、さて置き(笑)


 第10話目です。完全に『葉月君』に圧勝ですが。コメディ路線が見えません。シリアス路線まっしぐら…。


 今回は、話に深く入り込みましたね。兄の職業紹介が遂には、テロリストとの対決に。


 普段は妹達に優しく、お馬鹿な兄ですが…やはり、刑事といった所でしょうか。ただ、兄に何かダークな一面が…?



 それでは今回はこの辺で失礼致します。ありがとうございました。



 まだまだ、続くシリアス編!!

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