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異世界での喫茶店とハンター ≪ライト・ライフ・ライフィニー≫  作者: GORO
第二章 [劫略されし真名] be isolated - 災厄の剣姫
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再会と偵察

今回、少し短めです。



第六十九話 再開と偵察



黒狼の住処へと向かったセリアたちと別れ、アチルとブロの二人は黒狼を作り出したとされる都市『ウェーイクト・ハリケーン』別名で銃都市と呼ばれた銃を主体としたハンターたちが住む大都市に訪れていた。

以前までは大嵐によって外部からの干渉が難しいとされていた都市だが、二年前のある一時を境に嵐は止み、外部との接触が可能となった。原因は定かではないがハンターたちの間では嵐を引き起こしいたモンスターの消失ためだと言われている。

ウェーイクトは嵐から解放されたと同時に他都市との連携に力を注ぎ、二年経った今では外部からの交流も増え、観光名所とまで言われるほどの有名な都市へと成長をしていたのだった。



都市関連で言えば、他都市と同じように外壁で囲まれるウェーイクトだが、壁の下に作られた大門を抜けるとそこは以前のインデールを思い出すような人々で賑わう光景が広がっていた。通りに並ぶ飲食店や道具屋、それに武器屋といった店が数々と並び、険悪とした雰囲気が一切見られない平穏な空気でその場は充満していた。


「……ここも変わりましたね」


人通りの横端で、店外でも食事ができるようテーブルとイスが数個と置かれるとされた一風変わった店構えを見せる飲食店。

そんな店の外で、客と同じようにイスに腰掛ける青いコートに加え、腰には魔法剣を帯刀する魔法使いのアチルは、ひっそりと呟きながら目の前を行き交う人々を見つめている。彼女の目の前には木製で作られた丸いテーブルがあり、その上には二つのコップと水の入った中ぐらいの容器が置かれている。

アチルは自身の手前にあるコップを手に取り、中に入った水を一口と飲み込むも、味はそこそこで、美味しいかと聞かれれば微妙な味だった。

今一な味に眉間を皺めるアチルは、再び横を行き交う永遠と続くような人の道が眺め、かつての光景を思い出しながらそっと息をつく、そんな中、


「ねぇ、魔法使い」


アチルとは対極なほどに、対面してイスに座る絶賛とばかりに不機嫌状態な双剣使いの称号を持つブロが声を掛けてきた。


「はい、何ですか?」

「いや、何ですかって、…アンタとウェーイクトに来てどれだけ経ったと思ってるのよ。いい加減、次どうするか教えてくれてもいいと思うんだけど?」


実は言うと、彼女たちがこのウェーイクトに着いてから、かれこれ三日と時間が過ぎていた。

というのも、着いた一日目は都市全体を歩き周るが一向に情報が掴めないままその日は終わり、その次の日にはアチルが何かしらの魔法で紙を飛ばすからと紙飛行機を折り百枚ほど風に乗せて外に飛ばす作業が続いた、もちろんブロも一緒に紙を折られる羽目となった。そして、三日目の今日はといえば、アチルの提案で今いる飲食店前に出されたテーブル前の椅子に座り、朝食を取る状態になっている。

こうも時間を無駄にした三日間。普段から暴れたいなどの衝動に従い動くブロにとって、これほど退屈なものはない。

歯ぎしりを立てながらイライラを募らせるブロに対し、アチルはというと一度は視線を向けるもすぐに呆れたような表情を浮かべ、深く溜め息を吐きつつ手に持つコップの水を再び飲む作業へ戻ってしまった。


「って、聞きなさいよ! こっちはずっとここ来てから無償にイライラが堪って爆発寸前なのよ!」

「そうですか、それは大変ですね」

「人事だと思ってんでしょ!!」


ダン! とテーブルに手を叩きつけブロはイスから立ち上がる。周囲にいた客たちはその音に驚き、それらの視線がアチルたちに尚のこと集中する。


「………はぁ。大丈夫です。後、もう少しすれば来るそうなので」

「はあッ? 来るって誰が…」


この三日間、誰とも交流を交わさなかったアチルの事を知っているブロにとっては、一瞬からかわれているのかと思いそう問い返してしまう。

だが、そんな時だった。

ブロの視界では、アチルの背後には今まで誰もいなかった。しかし、一瞬の瞬きをした突如、そこに軽装のハンター着を身に纏う女の姿が幽霊のように現れ、無防備となるアチルの後頭部に赤い装飾が施された銃の銃口を突きつけていた。

ブロは目を見開き、すかさず帯刀する双剣に手を伸ばし、その柄を掴む。だが、対してアチルはというと、危機的な状況にも関わらず気にする素振りすら見せないまま、今にも飛びかかろうとする彼女に対し、


「大丈夫ですよ」


後数秒あればその剣で背後に立つ女の首を跳ねていただろう距離で、ブロは双剣の動きを止める。

アチルの言動で攻撃の姿勢を止めたが、ブロは警戒を解かず、今も銃を構える女を睨み続けた。突然の緊迫とした状況に周囲にいた客たちも言葉をなくし、ただ見守ることしかできない。

と、そんな状況下にもかかわらず、先に銃を持つ女が手を下ろしながら小さな笑い声を上げ、銃のトリガーから指を外し攻撃の姿勢がない事を示す。

そして、ブロが顔を顰める一方で女は口元を緩ませながらゆっくりと振り返るアチルに対し、その口を開いた。


「久しぶりね、アチル」

「はい、そうですね。……………できれば、その手に持った物騒な物をしまって貰えれば嬉しかったのですが」

「ハッ、そう言うアンタもその手に持った物騒な物とか下ろしたらどう?」


女の言葉と溜め息をつくアチルは、懐に伸ばしていた手から羽の装飾が施された杖を取り出し、ソレをテーブルの上へと置く。

女は共に抗戦の意思がないことを確認させ、ブロに対し自身の首元にある剣を退けと顎であしらい、渋々と双剣も同じように鞘へと戻っていく。

ようやくしっかりとした話ができる状況になったことに女は不適な笑みを浮かべる。

アチルも呆れながら軽装なハンター装備を着込む銃使いの女を見つめ、そこで初めて二人は名前を呼び合った。


「会うのは二年ぶりですね、ジェルシカさん」

「そうね、魔法剣使いのアチルさん」


かつて、一人の少女を守るために死闘を広げた二人が時を経て、場所の違うウェーイクト・ハリケーンでその再会を果たすこととなる。





飲食店での騒動によって店を追われた彼女たちは場所から移し、今ジェルシカが住まいとして借りている宿の一室に居座っていた。

テーブル上には三人分のカップが置かれ、中には香ばしい匂いが漂う液体が入れられている。ブロはそのカップの一つを手に取り、口に含みながら視線を目の前で話し込むアチルとジェルシカへ向け、静かにその光景を眺めていた。

とはいえ、会話の内容はというと、


「という事で、何か知りませんか?」

「黒狼か……うーん、聞いたことないわね、そんなの」

「はぁ………………まぁ、貴方程度では知らなくても仕方がないですね」

「……ね、ねぇ、今の間って何? もしかして喧嘩売ってるの? え? 買ってもいいわけ?」

「またやられたいなら、いくらでも受けてあげますよ?」


共に対抗心剥き出しの何とも締まらない会話だ。

どちらも負けを譲らない視線をぶつけ合うアチルとジェルシカ。その光景だけを見ても、手紙のやりとりをした仲とは到底思えない雰囲気だ。しかし、ジェルシカも全く話を聞こうとしないわけでもなく答えが見えないことに対し溜め息を尽きながら、椅子の背もたれに体重を乗せた。

アチルもまたカップに手を伸ばし、気持ちを落ち着かせる。

そして、ふと頭に浮かんだ疑問を、今固まった体を伸ばすジェルシカに問い掛けた。


「ところで、貴方以外のあの二人はどうしたんですか?」

「………それ、アンタが聞くわけ?」


その言葉が口にされた直後。

一瞬、ジェルシカの雰囲気が鋭い物へと変わると同時に、その場一体の空気も刺々しいものへと変化する。だが、アチルは至っては全く気にしていないといった態度でそんな彼女を見つめ返している。

数秒と重い沈黙がその場に漂うも、しばらくして先にジェルシカが威圧と解き、場の空気を元に戻っていく。


「ッチ。……ペシアの野郎はあの後も傷が中々治らなくてね。今でも治療関係が盛んな都に行って治療中だそうよ。まぁ、全身の骨がボロボロだって聞いてたから、治るのにも相当な時間が掛かるみたいだけど。で、後…ラヴァはハンターを止めたわ」

「やめた?」

「ええ、そうよ。元々あの子は責任感が強かったから、自分の失態を気にしてハンターを止めることにしたみたい。その後はこの都市を出て行って、それからは私もラヴァがどこにいるかはわかっていないのよ」

「………………」


ペシアとラヴァ。

その名はかつてインデールに来た銃使いのハンターたちの名前だ。

ペシアという男はルーサーとの死闘の末で全身の各骨を粉々に粉砕されるという重傷を負い、ラヴァという女もまた元ウェーイクト出身のフミカにより大火傷の傷を負う事となった。

どちらも一人の少女を傷つけた張本人な為、今さら負い目など気にするつもりもないアチルだったが、特にラヴァと親しかったジェルシカに対しては、どこか心に小さな罪悪感を抱きそうになった。結果として、一緒にいるはずの友を別れさせることになってしまったからだ。


「…………」


今では冷徹とまで噂されるアチル。そんな彼女の小さな感情の揺れを察したジェルシカは、小さく笑いながら、


「何、もしかして気にしてるの?」

「……………いいえ、別に私には関係ないので」

「はん、偉く堅くなったもんね。まぁ…………こっちもこっちなら、逆としてアンタがどうなろうと私には関係ないんだけどね」


それが彼女なりの励ましの言葉だったのかは定かではない。

だが、ジェルシカはそう言いながら、かつての友であるラヴァの事を考えながら手に持つカップを口に付け、再び口を閉ざす。

妙な静けさを残したまま、静寂がその場に落ちる。そんな中、今まで蚊帳の外だったブロがアチルに声を掛けた。


「ねぇ、魔法使い」

「はい、何ですか?」

「さっきから話は聞いてたんけど、アンタ何か隠してるでしょ? 昨日飛ばした手紙についてもそうだけど、私も手伝って飛ばした量は軽くても百枚はあったじゃない。それなのに、その女に届いたのが一枚だけっていうのは、どう考えてもおかしいわよね?」


アチルとジェルシカが再会したのは、何も偶然というわけではない。

この都市に来て二日目に魔法で飛ばした紙飛行機を模した手紙の一枚が彼女の手に渡り、そこに書かれていた指定の場所で集合したというのが実際の事実なのだ。

しかし、そうなると残りの紙飛行機はどこにいったのかという事が疑問に残る。さら言えば、その事を今まで隠していた事も含めブロはアチルのことが気に入らなかったのだ。

突然の介入によって明るみに出た内容に目を瞬かせるジェルシカ。対してブロに睨まれるアチルは肩を竦めながら深い溜め息を吐くと、懐から自身の杖を取り出した。


「まぁ、粗方の情報は取れた頃でしょう」

「?」


眉を潜めるブロを余所に、アチルは直ぐ側にあった小窓に手を伸ばし、窓を全開にする。そして、そこから見える青空に向かって杖を軽く振りながら一単語と魔法を唱えた。


「ヴァダホウム」


何かしらの魔法だということは分かる。

たが、直ぐとは言わないでも、何故かその現象が一向に起きない。

数秒ほど沈黙が落ち、固まるブロとジェルシカ。しかし、そんな中でブロは微かに紙等がかさばった際に鳴る音が聞こえてくることに気づいた。

それも徐々に大きく、近く―――――


「ッ!?」


次の瞬間。小窓目掛けて何束にもなる紙の大群が鳥のように枠を通り抜け室内に入り込んできた。

その数はジェルシカの分を覗いた百に近い数。白い鳥の大群を思わせるような紙の束はアチルの周囲をグルグルと囲むように周ると、やがてテーブルの上に一枚一枚、狂いなく正確に山積みされるように集まっていく。

そして、最終的に紙全てそこに収まり、テーブルの上に一つの資料が集結され出来上がっていた。


「こ、これって…」

「この都市全体に手紙に模した偵察魔法を飛ばしていたんです。こういった厚さの薄い素材の方が何分調査するのにも便利ですので」


アチルはそう言って書類に手に取り、一枚一枚紙をめくりながら、その中身を調べていく。

確かにアチルの言ったように大きな物体を偵察として飛ばすのは隠密としても直ぐに感づかれてしまうだろう。

しかし、百という数と、それらを飛ばしたという事実を聞いたジェルシカにとっては、例え偵察として紙を飛ばしたとしても誰かが怪しみ、少しぐらい噂になってもおかしくはないのではないかと考えていた。

だが、そんな噂など一向に耳に入った覚えがない。

なら一体どこに…、とジェルシカは眉を潜めながら今も書類に目を通すアチルに彼女は問い掛ける。


「ね、ねぇ…その偵察魔法って…」

「………言ってしまえば目につきにくい場所ですよ。貴方の話を聞いた限りでは視界に映る場所にはこれといった手がかりはないことはわかりました。まぁ、さっきのはただの確認で聞いてみただけなので、貴方が気にすることではないと思いますが」

「……………」

「でも、確認したことで確証はしっかりと得られました。これを見ても、私の推測通りこの紙たちを貴方たちウェーイクトに住むハンターたちが知らない指定の場所に送り込んだのは正解だったみたいです」

「…………知るよしもないって、それってどういうことよ」


思いも寄らない言葉に戸惑うジェルシカを余所に、書類を大体読み上げたアチルは顔を上げる。

目の前ではこちらの返事を待つジェルシカと今も険しい表情を向けるブロの姿がある。アチルはそんな二人を静かに見据えながら、書類を膝の上に置き、改めて彼女たちに向き合った。

そして、その場が静けさで包まれる中でアチルは偵察魔法によって知ることが出来た、その場所に名を口にする。



「どうやらウェーイクト・ハリケーンには、地下内部で人工的に作られた場所があるようですね。そして、そこが都市ウェーイクトの表に決して出ない闇を知る為の場所と見ていいでしょう」



アチルが目を付けた場所は、都市の秘密。

光の当たらない、隠くされた闇の宝庫への道だった…。




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