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異世界での喫茶店とハンター ≪ライト・ライフ・ライフィニー≫  作者: GORO
第一章 異世界へやってきた少女
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始まりの元凶

新年、あけましておめでとうございます。

今年もまた小説、更新していきたいと思いますので、また見に来てください。




第四十四話 始まりの元凶



月光の光が届く地上とは違う、音のない暗闇の空間。

そこはまるで光も届かず誰にも侵入されないような場所だった。だが、そこに一人。上半身の服を脱ぎ白い肌を露わにする一人の少女が両膝をつけ床に手をついた状態で俯いている。

彼女の背中には薄光に光る赤黒の魔法陣が深く刻みこまれ、肉を焼いたような不気味な音に続き陣周囲の皮膚が黒く変色していく。

それは高温の熱さが全身を駆け巡っていることを示していた。

肉だけではなく、骨にまで届く痛み。

何とか声を押し殺す少女の顔には尋常でない大量の汗が溜まり下に落ちていた。


「ぐっ、あっ!!」


だが、どれだけ押し殺そうとしても荒い息と共に声が漏れる。

悶え苦しむ彼女に対し、そんな姿を遠く離れた場所で観察する一人の男がいた。魔法陣によって映し出されたそれを見続けるローブの男。

男は口元を緩め、少女……ワバルの声を耳にする。



「許さない…………ゆるさない…、絶対に………ゆるさない……ッ!!」



痛みで精神がおかしくなっても不思議ではなかった。

だが、ワバルは目の端に涙を溜め、歯噛みした憤怒の表情を露わにする。

怒りで痛みを振り払おうとする。


「…はは」


自身の計画が順調に進んでいる。

夜空がその世界を支配する中で、男は高らかな笑い声をその場に残した……。









夜が明け、早朝の陽が昇る。

地上では宿から出た一般の客たちが祭りを楽しむべく動きだす時間となった。

だが、そんな人だかりの中。

ギシガシ、と硬い鎧を音を鳴らしながら歩く男たちの列が闘技場付近にあった。その数は数十人にも上る。

彼らが集まる理由、それは……闘技場主催の大会、グラメッスに出場するため。

インデール・フレイムに住む強豪を名乗るハンターたちが共に競い勝ち抜き、最強を決めるための大会であり、騎士団長アーサーが鍛冶師ルーサーに持ちかけたものでもある。



周りが騒つきが広がる。

雲一つない青空を見上げ、鍛冶師ルーサーは大きく溜め息を吐き後ろに振り返りながら尋ねた。


「で? 態々来てやったんだ。目的を話せ」

「いやいや、僕は本当に君と戦いたかっただけだよ」


そう笑みと共に言葉を返すのは彼の目の前に立つ騎士団長のアーサーだ。

真面目に答えていないと雰囲気に対し、ルーサーは眉間に皺を寄せながら頬を引きつらせ機嫌をさらに悪くする。

というのも機嫌が悪いというのは、深夜の一件で巻き添えという形で二人同時に噴水に真っ逆さまに落とされたのが原因だ。

あの後、ルーサーは濡れた服で風邪をひかないようにと早々に家に帰り、アーサーも近くの宿屋に潜りこみ何とか泊まった。

一夜経っても尚のこと、美野里に誤解されたままのルーサーに至っては怒りが収まらない。


「もともと、お前がちゃんとルアの奴に説明しなかったのが原因だろうが」

「あー、無理無理。あの状態のルアに説明したってどのみち魔法でお仕置き決定だったから」

「…………じゃあ、何で俺を巻き込んだ」

「うーん…………たまたま?」


直後。

ガキィン!! と甲高い音がその場に響き渡る。

それは瞬時に抜き下ろしたルーサーのハンマーが金色の剣と打ち合った際に発生した音だ。

そして、対して金色の剣の持ち主であるアーサーは苦笑いを浮かべながら口を開く。


「と、とりあえず……ここでは止めよう、ルーサー」

「俺は別にここでもいいと思ってる」


ルーサーの言葉に冷や汗を浮かべながら視線を周囲に向けるアーサー。

というのも、彼らがいる場所に一つの問題があった。

そこはグラメッスが行われる闘技場の内部、まさに先日のウェーイクトとの一件があった敷地内なのだ。

さらに言えば、既に数十人ほどのハンターたちが集まり、そんな中での乱闘。

多くの視線がアーサーたちに突き刺さる。


「はぁ……」


アーサーの意図していることが分からないルーサーではない。

大きく溜め息を吐きながらハンマーを下ろし、背中に背負い直す。

対してアーサーも金色の剣を腰に納め、苦笑いを浮かべた。


「ルーサー………………久々に、衝光使ってみるのはどうだい?」

「馬鹿言うな。ここで使ったら目立つだろ」

「そうかな? こんなに人がいたら早々バレないと思うけど」


辺りを見渡すに、そこには強者揃いのハンターたちが数人といる。

一瞬の動きで衝光を使い分けることが出来れば不可能ということはない。

だが、一方でルーサーはその言葉に呆れた表情浮かべ、言った。




「………どうせ、俺らが最後に残るんだ。………分かりきったこと言ってんじゃねえよ」




それはここに集まったハンターたちへの挑発とも言える言葉だった。

近くにいた者たちはその言葉に殺気を醸し出す。

だが、当のルーサーは目の前に立つ彼にそう言い残すと付近にいた彼らの視線を無視して一度距離を取るべくその場から離れて行った。


「……………………」


その後ろ姿は気弱な雰囲気ではない。

この場所で、誰よりも強い、強者の威圧が確かにあったとアーサーは思った。

そして、離れて行く彼に対し口元を緩ませ、



「待ってるよ」



辺りの視線を気にすることなく。

カチャ、と腰に携える金色の剣を揺らすのだった。










グラメッスが始まろうとする頃、都市内では祭りを皆が多大な賑いを見せていた。

通りを歩く人々たちが共に笑いながら、その祭りを充実し楽しむ。

だが、そんな中。

上空の上、魔法陣を足場に浮くローブの男はそんな彼らを見つめ、告げた。



「さぁ、始めようか……」



男は手の平サイズの黒い球体を地面へ落とす。

重力に従い、宙を落ちる球は地面に近づくにつれ次第に形を変える。それは、まるで獣、いや狼のように変わっていく。

そして、それが事の始まりだった。

インデール・フレイムで今まで一度も起きた事のない。

かつてない、大災害への………。













時間は同時刻。

グラメッスが始まる闘技場へと続く大通り。

そこに、二人の少女たちが大会を見るため足を動かしていた。


「はぁ…」

「気を治してください、美野里」


ハンター衣装の町早美野里は頭を項垂れ、重い溜め息を吐く。隣に歩く魔法使いのアチルは心配そうにそんな彼女を励まそうとする。

だが、彼女が溜め息はつきない。

原因が分からないわけではない。それは、昨日の夜の出来事。風呂場で自身の裸体を彼、ルーサーに目視されたことに理由があった。


「だって、裸見られたし……」

「……………そ、それはその…」


あの後、悲鳴に駆け付けたアチルが変態男二人を転移で噴水に突き落としたのだが、時間が経っても尚、当の美野里は今だ落ち込んだ状態のままだった。

心中でも、羞恥と怒りが両者渦巻いている。


「どうします、やっぱりルーサーさんの応援やめときます?」

「ぅぅ、でも……」

「顔合わせるのはアレですけど、離れた所にいればバレないですよ?」

「……………そ、そう?」


はい、と弱気な表情を見せる美野里に笑顔で答えるアチル。

うじうじとする彼女を励まそうとするアチルだが、当初、闘技場へ行こうと初めに誘ったのは何を隠そう彼女自身だった。

理由は簡単で、美野里が本心ではルーサーが気になって仕方がないことを知っていたからだ。


(ルーサーさんと美野里、どっちも素直じゃないからなぁ……)


美野里には大丈夫と言ったが、多分ルーサーには確実にバレるだろう。

とはいえ、こう後押ししないとあまり関係が進まない二人。

頬を赤くさせる美野里を横目で見つつ、アチルはただ苦笑いを浮かべるしかできなかった。

だが、そんな時だ。

前の列。込み入った人だかりの中、目の前から一人の少女が美野里たちに気づき駆け寄ってきた。


「あ、お姉ちゃん!」


その言葉を向けるのは、アチルではなく喫茶店の店長である美野里。その少女は、よくマチバヤ喫茶店に家族で食べにくるチユという名前の女の子だった。

美野里立の前で止まったチユは首を傾げながら、頬を赤らめる彼女に尋ねる。


「あれ、お姉ちゃん? 顔赤いよ?」

「ぅえ!? ちち、違うよ! こ、これはその」

「……やっぱり……………今日、お店お休みなの?」

「え?」

「だって、さっきお店行ったけど開いてなかったから………もしかして、風邪でもひいたのかなって思って」

「あー……。か、風邪じゃないよ……うん、大丈夫。今日は、夕方になったら店開けようと思ってて」

「ホント! じゃあ、また食べに行ってもいい?」

「………うん、いいよ」


やった! と笑顔を見せ、そのまま急ぎ足で元いた列に走り去っていく。

視線を列に向けると、そこにはよく喫茶店にチユと共に来る一人の女性があり手を振って立っており、どうやらチユは今日の夕方に喫茶店が開くことを伝えに行ったらしい。

美野里は視界から離れて行くチユを見つめながら、何かを思い出すように小さく呟く。


「お姉ちゃん………か…」

「え、今何か言いました?」

「あ、……な、何も言ってないよ! 何も」


あはは、と苦笑いを浮かべる美野里。

アチルは知る由もないが、美野里には元の世界に一人の妹を残していた。歳は三歳ほど離れており今だと高校二年生ぐらいになっただろう。とはいえ、そんな妹に彼女は何も言えず、この世界に連れてこられてしまった。

だからか、その特定の言葉を聞くと、どうしても妹の事を考えてしまうのだ。

アチルの疑う視線を反らしつつ、美野里は再び前方に見える人だかりを見つめ、一歩と歩き出そうとした。

だが、それはほんの一時。




次の瞬間だった。





「え?」




………まるでコマ送りのように。

人々の塊が、真上から落ちてきた存在によって辺り一帯に吹き飛ばされた。

地面が砕け、悲鳴が轟く。

そして、その直後。

美野里の全身に悪寒が突き抜け、同時に二つの瞳が衝光の光を灯す。





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