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異世界での喫茶店とハンター ≪ライト・ライフ・ライフィニー≫  作者: GORO
第一章 異世界へやってきた少女
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二重魔法

長文を書いていたんですが、一緒にすると何か誤字だらけになる気がしたので分けてみました。




第三十六話 二重魔法




今まで漂っていた最悪の空気。

それを一歩現れただけで一変させた銃使いのフミカ。

ハウン・ラピアスの受付人である彼女が普段のそれとは違うハンターとしての顔を見せた時、ラヴァの体は強烈な圧迫感を味わった。

簡単に言い現すとそれは殺気に当てられたと言ってもいいのかもしれない。ラヴァの表情に焦りが見え、頬に一筋の汗が流れ落ちる。


(………考えてはダメ…)


ラヴァが焦る理由となったのは、ウェーイクト・ハリケーンにいた頃に耳に挟んだ彼女の噂によるものだった。

緑銃を扱い早打ちを得意とする、都市の中でもっとも上位のハンターだけが付けられるアルバスターという名称を持つフミカ。

だが、その裏では妙な噂があった。

それは彼女が多種による戦法を可能とした多数の武器を所持しているということ。

しかし、別に多種の武器を持っているのはおかしいことではない。

二丁拳銃や隠し武器等、多種を得意とするハンターは指で数える以上にいた。だが、そんな噂を裏で囁かれていたフミカは違った。


何故なら、誰も彼女が多種の武器を使った所を見ていないからだ。


アルバスターという称号を貰うには数百の依頼をこなし依頼人が求める百パーセントの成功を納めなくてはならない。そのため、外に出ることが多かったはず。しかし、それほどまでに外に出ているにも関わらず彼女の詳細は隠れたままだった。


敵と対峙した際、もっとも怖いのはその詳細が全くとして不明という、状況に陥った時だ。


フミカが所持する銃は二丁、もしくはそれ以上という話が密かにハンター達の間で持ち出されていた。

ラヴァも当然、推測で彼女が他に武器を所持していると思っていた。

だが、今に対峙している彼女の腰にはそれに相応した武器が見られない。あるのは、一切の隙を見せない上位としての立ち姿とその手に持つ一丁の銃だけだった。


「……ッ」


焦りと困惑がさらに強く重り合い、それに耐えるように歯を噛み締めるラヴァ。

そんな彼女をもっとも傍で見ていたジェルシカは目を見開き驚いた表情を見せる。


「……ラヴァ」


今までお互いに依頼を何度かこなし共に戦ってきたジェルシカとラヴァ。ジェルシカが特攻と言うなら、ラヴァは冷静と言っても過言ではない。

時々、暴走した自分に対し、いつも冷静で澄ました態度をとっていた彼女。

そんなラヴァが今、目の前に立つフミカに対し怖気づく手前とも言えそうな顔をしている。

それも昨日と同じ。

ペシアに宣戦布告のような事を伝えフミカが立ち去って数時間した後、数ヶ所の怪我を負いつつやっとこさ帰ってきたラヴァ。その顔は、今と同じで、見てはいけない物をみてしまったような顔をしていた。


(今のラヴァにアイツは不味い…)


精神状態でも身体状態でも、現状で一対一は危険だ。

瞬時にそう判断したジェルシカは、手に持つ赤銃をフミカに向けて構え、そのまま躊躇なく発砲しようとした。

だが、その直後。


「ッ!?」


彼女は咄嗟に気づく。

地面から湧き出る、凍えるような冷気。

危険を感じ、反射的に後ろに跳んだ瞬間、その立っていた場所から魔法陣と共に氷の塊が槍のように突き出された。

後方の屋根上に着地したジェルシカは瞬時に今の攻撃が誰のものか理解し、視線をフミカから少し離れた位置に立つ一人の魔法使いに向ける。


「貴方の相手は私です」


青の剣と白の杖を手に持つ、魔法使いアチル。

彼女の持つ剣には水の魔法が覆い被さるように纏われ、片方の手に持つ杖の先からは氷の魔法陣が今も展開されている。


「クソッ……」


余計な邪魔に舌打ちを打つジェルシカは視線をラヴァへと向けた。

隣に自分の味方がいるのさえ気づけないのか周囲の視線すら察知できないラヴァは目の前に立つ強敵を一点に集中し睨みつけている。

彼女が青銃には既に攻防のドラゴンであるザグリートが装填されていた。

だが、それでもまだ足りない。

どんな攻撃をしてくるか、詳細不明の敵に対して、絶対の防御を可能としたドラゴンでも勝機があるかわからない。

一瞬たりとも集中を削いではいけない。

ラヴァの目はそういう目をしていた。


(………………早いとこ、こっちを殺ってあっちに加勢に行くしかないか)


加勢という形で今、彼女の集中を邪魔するわけにはいかない。

一端の感情を押し殺し、ジェルシカは敵であるアチルを睨みつけると、その場から駆け出し屋根から屋根へと距離をとるようにして飛び移って行った。

それが、ジェルシカが判断した答え。

視界の入らない場所に戦いの場を変え、ラヴァの戦いを邪魔しないための行動だった。





「ふーん……………」


フミカは横目でジェルシカが離れていくのを確認し、心の中で感心していた。

戦闘において彼女の判断。

今できる、最大限のことを決断し行動する。

銃の扱いはまだまだでも、銃使いとして戦い方は理解している。

彼女はこれから銃使いとして実力はまだまだ伸びるだろう、とフミカは密かに口元を緩めた。


「さて…」


そして、視線を変えると共にそんな感情を心の隅に置くフミカ。

瞬間、彼女の顔は冷徹で恐ろしく、殺気を醸し出しているかのような重圧を生み出す。

それは、目の前に立つラヴァに対して…。


「じゃあ、アンタの腕を見せてもらおうかしら?」

「………………」


問いに対して、ラヴァによる返答は無い。

フミカは小さく息を吐くと、腕を動かし銃を構え、トリガーに指をかけた。

そして、次の瞬間。


「!!」


ダンダンダンダン!!! と素早い動きでトリガーを引き、連射の早打ちをラヴァに向けて撃つ。

音からして、弾数は四発。

弾の軌道から至って普通のハンターと変わらない発砲にも見える。だが、その四発というそれ自体にフミカ独特の戦法があった。

それは、連射によって迫る銃弾が全くのブレのない一直線の起動を描いていたことだ。

手慣れたハンターでも数ミリと同じ軌道を描けず発砲してしまう所、フミカの撃った弾は全くとしてミスがない。

そして、その撃ち方から考えられる攻撃は一点集中による硬い防壁を貫く貫通攻撃。


(ただ、避けたらいいッ)


武器でのガードを狙った攻撃。

そんなものを態々受ける必要はない、そう判断したラヴァは足を動かしその行動に移ろうとした。

しかし、その直後だった。


「!?」


まるで、何本の槍に背中から突き刺されたような殺気と背筋を凍らす悪寒。

それはコンマ数秒というまさに一瞬の感覚での感知だ。ラヴァは視線を動かし、そこに立つフミカを見る。

彼女は今も銃を構えたまま、こちらを睨んでいる。

加えて、口元を不敵に緩めながら……。


「ッ!?」


ラヴァはその瞬間、理解した。

緑銃を構えるフミカは、弾を避けようとするその行動を狙っていたのだ。

それも、自身の攻撃によって張った罠に掛かった相手を、確実に撃ち殺すために。


「ッアアア!!」


ラヴァは殺気による恐怖で奇声を上げたと共に青銃のトリガーを引いた。

銃口は全くとして定まっていない。

だが、弾とは違う青い光が発砲されたと同時に、フミカのから発砲された死を告げる銃弾を、その光は盾になるようにして防いだ。

そして、光は輪郭をはっきりとさせたドラゴンへと姿を変え、主の身を守るように前に浮く。


「ッチ、咄嗟に感づきやがったか…」


フミカは自身の攻撃が防がれたことに舌打ちを打ち、改めて宙を浮くザグリートを観察する。


「へぇ……それが攻防のドラゴンってわけね」

「はぁ、はぁ、はぁ……」


銃弾は完璧に防いだ。

激戦と言える戦闘すらまだ起きてはいない。

だが、それなのに息使いが荒々しくなることにラヴァは恐怖を覚えた。

それはフミカの銃の腕前といった話ではない。今、攻撃を受けていないにも関わらず、相手を凌駕する強者との対峙。

それがこれほど苦しく恐ろしいものだと、今更だがラヴァは理解したのだ。


「……さて」


こちらからの攻撃の返しに反撃を待っていたフミカだったが、一向に動きを見せないラヴァに溜め息を吐き懐に手を入れ、そこから小さな部品を取り出した。

それは黒の銃身に似たような少し長めのパーツ。

フミカはそれを手に持つ武器である緑銃の銃身に装着させ、それにより元々の長い銃身がさらに長さを増す。


「な、なんですか……それはッ」


一方で視線だけを動かすラヴァはフミカが装着させたソレに困惑と疑問を抱いた。

ウェーイクトには銃の性能を上げるためのカスタムパーツという物が存在する。それはスコープや、音の消失、どれを見ても何のカスタムをしたものなのか理解できる物だった。

だが、今フミカが装着させたカスタムパーツ。

銃身が長くなっただけで、どういった効力を持つものなのか全くわからない。


「は? 何ですか……って、はぁ……。だからアンタもペシアも弱いのよ。武器商人に頼りきり過ぎて」


呆れたようにもう一度溜め息を吐くフミカ。

問われた質問に答える素振りを見せず、彼女は銃口を前へと向けた。

そして、


「じゃあ…………そのドラゴンがどこまでの速さに反応できるか見せてもらうわよ」

「!?」


次の瞬間。

引き金を引いた直後に銃口から眩い光が放たれ、同時に枝分かれするように無数の光弾がラヴァ目がけて雨のように降り注がれた。







ラヴァたちが戦っている頃、そこから離れた場所でアチルは詠唱とともに魔法を放った。


「バスリア!」


詠唱とともに宙から現れた魔法陣。

そこから水の弾丸が数弾と撃ち出され、一直線にジェルシカに迫る。

だが、彼女はその弾を小さな動きでスルりと避け回避を続けた。


「水の魔法って、私たちとそう変わらない戦法なのね」

「相手によって、ですよ!」


水弾が避けられたのを確認したアチルは片手に持つ剣を左右から振り下ろし、刀身に纏っていた水の魔法を斬撃と共に連続で放ち続ける。

攻撃としては高いレベルの魔法だ。

しかし、的が大きい分でのスピードの遅さが欠点であり、ジェルシカはまた同じように避け一向に攻撃は当たらない。


「時間がないから、今度はこっちから行くけど……これは防げるかしら」


あまりそう時間はかけられない。

速攻での勝負を決めていたジェルシカはそう言うと銃口をアチルへと真っ直ぐに向けた。そして、いつもとかわらないようにトリガーを引き、その直後。


「っ!?」


赤き閃光、バーレストブレット。

水の斬撃を一瞬で消し去った光のレーザーが一直線に迫り、突然のことに避けることもできないアチルは、大きく口を開き、


「シアル!!」


瞬間。

アチルの体はレーザーの直線上から消え、その少し離れた場所に転移した。

ジェルシカは舌打ちを打ちながら、眉間に皺を寄せる。


「また転移かっ。……でも、それってつまりこの攻撃は防げないってことよね」

「……………………」

「大層なことほざいてたけど、結局、魔法使いもたいしたことがないのね」


避ける者に対しての暴言。

ジェルシカは再び銃口をアチルに構え、撃つ態勢に入る。

時間を掛けれない、という彼女の理由は今も戦うラヴァにもあったがそれ以外にもう一つの理由があった。

それは、今のバーレスブレットによって出来た戦闘の痕のことだ。

屋根の一部が溶け、数個と瓦が半壊している。

いくら銃声の結界を張って地上の人間に知られないようにしたとしても、その小さな変化に気づく者が現れるかもしれない。

そして、そうなれば地上を歩く皆の視線が集まり、直に戦いに支障が出る事となる。

だからこそ、ジェルシカはそんな結果にならないように速攻で敵を消したかった。


(今度で終いよ……)


銃口を的確に固定し、今度こそ、いや確実に殺す。

ジェルシカは目を細め集中を高めていく。

だが、その時。

顔を伏せていたアチルが、そっと口を動かす。


「………何か、勘違いしてるようなので先に言っておきます」

「あん?」


手に持つ、杖と剣。

アチルはその両方を強く、硬く握り締める。


「私は、これでも怒ってるんです……」

「は? だから? それが何」

「貴方たちが美野里に卑怯なことをしたことにも……、貴方のリーダーが美野里を泣かしたことにも………そして、美野里をあんな目に合わせた事にもっ!!!」


あの時、フミカの指示で特定の位置に美野里を転移させたアチル。

そこで彼女は目を見開き、見てしまった。

四肢を撃ち抜かれ、さらに大量の血を流した一人の少女。

徐々に体の体温が冷たくなり、その光景は以前のバルディアスの一件とも似ていた。


「……また、美野里が一人、傷ついて苦しんで……それを知らず駆けつけられなかった」


絞り出すように口を動かすアチル。

その周囲からは魔力の揺らぎによって漏れ出した冷気がその場の空気を冷たくさせる。

それは、アチルが今も欠点と言われている精神に呼応した魔力の流出。

以前のバルディアスの一件で美野里が傷ついた、その後悔という感情が魔力の揺さぶりをかけているのだ。

だが、今回はそれに付けたすものがあった。


「ッ!」


確かに後悔はある。しかし、それ以上に今にも破裂してしまいそうなまでにアチルの心は怒りに染まっていた。

後、一歩を超えれば、………相手を殺してしまうほどに。


「………………ふーん。でも、そんなの私たちには関係はないし」


平然と、その言葉を伝えるジェルシカ。

対してアチルは、強い怒りを灯した瞳を向け、歯噛みした口を開く。


「ええ、そうですね。あんな事をして、平然とできる貴方たちに同情なんて求めてません」

「だったら」

「でも、ただ言っときたい事があります」


冷静を保ち感情をそのまま力に変える。

フミカが伝えたその言葉をアチルは脳内に思い返し、そして、自身の中で吹き荒れる魔力を扱う。



「それは、私が杖を使ってる時点で……一切の手加減ができないってことですッ!!」



直後。

膨大な冷気がアチルの周囲から渦を作るかのようにして姿を現す。

それは水色の色をした魔力の具現化。

一定の濃度を超え、魔力が一般の人の目で見て取れるほどの桁外れの力が発現されたのだ。


「な、何…何なの、これ…」


突然の現象に焦りを見せるジェルシカ。

だが、アチルはそれで止まることはない。前に構える剣の腹に杖をかざし、叫ぶ。


「ジグル・アル・リヴァイアサン!!!」


詠唱の声。

そして、次の瞬間。

氷が剣を支配する。ただ、覆っているのではなく、氷はある形を目指し進行を早めていく。そして、まるで小型版とも言える竜の頭が柄の上から剣を食ったかのようにして姿を現した。

それは、水と氷。魔法の中でも高等とも言える、二重魔法を使用し膨大な魔力を一点に集中させ生まれた竜剣。


「氷の竜……」

「……もう一度、さっきのを撃ってもかまいませんよ?」


茫然と眼前の光景に立ち尽くすジェルシカ。

対して、アチルはあえて挑発めいた言葉を彼女に向ける。その目は、確実な勝機を予知した瞳をして……

そして、ジェルシカはその眼を一度見たことがあった。

それは、今と同じ、一対一の戦いの中。

衝光という力を使い長髪となった美野里。

圧倒的な力の差を示した彼女。

奥の手を最初から見せず、こちらに勝機を予期させた……、あの時の瞳…。



「……ッ!! …アンタも…………どいつもこいつも………ふざけやがって!!!!!」



あの一戦は彼女にとって屈辱的なものだった。

今まで冷静を保っていたジェルシカはその言葉の目に頭に血を上らせた。それは怒りに我を忘れたと言ってもおかしくない。

ジェルシカは歯噛みと共に銃のトリガーを引いた。

再び、銃口から赤い光が放たれ、真っ直ぐとアチルの顔目がけて迫りくる。命中すれば、確実に彼女の命は終わる。


「…………………」


だが、アチルは怖気なかった。恐怖した顔も、警戒した顔も見せない。

今に迫りくる赤き閃光を睨み、それに向けて彼女は竜剣を構えそれに同調したように竜の口が開き、奥にある剣が姿を見せる。

そして、剣先に氷と水の魔法で形成された高密度の魔力弾が溜められていく。

閃光との距離はもう僅か。

アチルは数センチとなった閃光をまえに、その魔法を口にした。




「レイヴ・ブリザード」




次の瞬間。

竜口の奥、魔力によって溜められた絶対零度に近い魔力弾が閃光を近距離から打消し、直線上にいるジェルシカの体を一瞬にして氷の中へと閉じ込められてしまった。

怒りは同じだった。

思いは多少違っても似ていた。

だが、一つ違ったのは、感情を抱きつつも冷静な判断を行えるかという、些細な違いだけだった。

そして、それが勝敗を分けたのだ。




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