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プロローグ
「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!」
走らなきゃ。
逃げなきゃ。
その意思だけで走り続ける。
足の感覚はとっくになくなっている。
「いた…っ!」
ズキッとした足の痛みにうずくまる。
裸足の足の裏には硝子の破片が突き刺さっていた。
それでも、走らなきゃ。
捕まったら死ぬ。
足を引きずるように走る。
遅い。
あと少しで廊下を抜ける。
やっとこの地獄から出られる。
廊下の突き当たりの扉を開けた──
「みおちゃん、久しぶりー」
目の前に、
先に、鬼が、喰われる
鬼が、鬼、
視界が、赤く染まった。