星のない丘と二人
―その夜。 二人は互いにいつもの場所で並んで空を見ていた。
これからメトロに足を踏み込むわけだ、冒険気分がほとんどで死ぬなんてそう簡単に・・・。
「募る不安はいつまでたっても解消出来やしないなんてずっと思っていたけど、本当だった」
と一人勝手に思っていたサイは、一つつぶやいた。
「ごめんね」
シアンは、「あら、どうしたの急に」みたいな顔をして顔を覗き込んできた。
「なんか、どうも言葉になってくれないみたいだ」
「良いんだよ別に不安があったって。今すぐにでも逃げ出したいと思えば思うほど恐くなるけど、その分強くなれるから」
「そっか、ありがとうシアン」
「っ///」
サイオンはそっと肩を寄せた。
(僕はいつも新しいものが迫ってくると、僕にはない温もりを求めたくなるんだ。だから、今夜は少しだけ、さ)
二人のいる丘は、本当だったら目の前に月が見えるくらいの、秘密にでもしたいくらいのところ。
全く星の見えない無辺の空は目印がないから寂しい。
それでも、ミューラテンアルプがあったから。
いや、そうじゃないな。
―翌日、それぞれ研究室に行って荷造りをはじめた。
肩書きとしては中退だが、そんなことは将来どうなるかといったら気にすることでもない。
さて出ようかといったときに、博士が入ってきた。
「お前たち、何も持たずにいくのか」
「地下で生活するには充分なはずですが」
サイがバッグの中身を見せた。
「違う、スローターの対策だ。ただ、強い防具だけでは埒が明かない」
スローターとはメトロに生息している強い毒をもったさそりのような虫のことである。
刺されれば大抵死ぬ。血清の薬もまだ不十分だったため、防具では足りないというのだ。
「これをもって行きたまえ」
二人の前に出されたのは二本の剣だった。
「武器ですか」
シアンは尋ねた。
「うむ。これは、電導剣と熱導剣と言って、高圧電流と高温を発生させることの出来るものだ。
サイオンは電導剣。シアンは熱導剣。そんなに重くないから使いやすいだろう」
「ありがとうございます」
二人は、お礼を言うとある紙切れを渡した。
「これ、私たちからのお礼の気持ちです」
ミューラテンアルプの入場券だった。
常に研究室にいるウルオス博士の為にとっておいたものだ。
「本当は、僕たちが行くはずだったんですけどね」
「ありがとう、二人とも」
この上ない笑顔だった、気がした。
「では、いってきます」
「ありがとうございました」
二人は手を振って、研究所を去っていった。
二人の姿が見えなくなると、もう一度入場券を見た。
「お?」
三枚?
「あいつら・・・」