10-03
しばらくして修練生たちと、続いてアイシャが会議室から出てきた。
子供たちは全員満面の笑顔。それに比べてアイシャはどんよりと曇り顔をしていた。
「よーしっ、明日から楽しみになってきた!」
「なんだかすごいことになってきちゃったわね」
「こうなったらあたし、全力でお姉さまをサポートさせていただくわ!」
「僕もだよ。皆で力を合わせてがんばろう!」
「ありがとう! ビビ、カイト」
「それではアイシャさん、明日からお世話になります。あたしたちをこれからもどうかよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いしまーす!」
「お、おう。じゃあ明日の朝、寮でな。寝坊すんなよ」
「師匠……。その、お疲れさま」
すべてを聞かされたあとで、アイシャの心情を察した弟子のティノは彼女を気遣おうとしたが、大丈夫だ、と力なく手を振って返されるだけだった。本当に大丈夫なんだろうか。
* * *
子供たちの退室を見送った学院長リノーは複雑な心境だった。
執務室の自席に腰を落ち着けるとひとつため息をついた。
本当にこれでよかったのだろうか。既に下した決断にいつまでも自問しているようだった。
「今やるべき最善の手はうちました。まだまだこれからも課題は残っておりますぞ」
魔導師長ロッドが彼女を気遣うように言葉を投げかけた。リノーはうなずくが、弱々しくこうもらした。
「今日、私は一線を越えてしまった。どのような形を取り繕おうとも、あの子たちを戦いの場に追いやるのに変わりはない。それどころか、子どもたちの無垢な良心に付け込んで、利用しようとしている。私は教育者として失格どころか、大悪人に成り果てたようです」
ロッドは黙って窓の外を見つめている。
「学院長様」
副院長のブラッセオが静かに口を開いた。
「こういうことを言うと卑怯かもしれないが、大昔はむしろあの子たちのような年頃の子どもたちが大人よりもずっと活躍していた時代もありました。今から見ればそれはけっして恵まれた時代だったとはいえないでしょう。しかし彼らもきっと誇りをもって務めを果たしていたに違いない」
ロッドもまた外を見つめたまま、静かにこうもらした。
「我らもまた、自分の務めを果たすのみ。最悪の結末を回避するために。それが失敗したときは……、地獄の業火に焼かれるだけだ」
厳然とした口調でそれを言い切った。




