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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報3 ~兄妹のち恋人!?~
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エピローグ

 いつも怒ってばかりで怖い印象のお母さんが泣いている。

 あたしには今まで見せたことのないそんな姿。

 ただおにいちゃんが藤堂家を離れた事実を知ったことによって。

 

「葵、もう行こう」


 おにいちゃんが繋いだ手を引っ張る。本当にお母さんのことなんかどうでもいいような感じで。

 だけど言わなきゃいけないんだ。

 さっきはちゃんとできなかったから伝えないといけないあたしの気持ちを。


「あたしはおにいちゃんが好きなの。男の人として好きになったの! だからおにいちゃんと一緒にいたかった。だから藤堂家の一員になったの。だからもう離れるのは嫌なの。だからね、お母さんがダメだってどんなに言ってもそれはできないから!」


「…知ってたわ。判ってたわよ。だから高倉さんにしたのよ。だけど結局無駄だったわけね。この人が味方になったなら私は太刀打ちできない。もう勝手にしたらいいわ」


 知ってたってどういうこと?

 もしかしておにいちゃんに似ていたから雅紀さんと婚約したってことなの?


「ああ、そうさせてもらう。俺は金輪際、()()と関わるつもりはない。さあ行こう葵」


 おにいちゃんが肩を抱き、部屋を出ようと促す。お母さんは目を逸らしたまま項垂れていた。


「待ちなさい。貴裕、葵は藤堂家の娘だ。私が養う必要がある。だから預からせてくれないか」


「ですが()()()がいては…」


「息子しか縁がなかった私にとっては初めての娘だからね。悪いようにはしない、大丈夫だ」


 そう話がついてお母さんたちは部屋から出て行ってしまった。

 さっきまでの騒動が嘘みたいに静かな空間になって、二人きり。


「葵、ずっとずっと待たせてばかりでごめん」


 おにいちゃんはあたしを見つめた後、ギュッと抱きしめた。


「俺はもう堀川に籍を移して藤堂家とは何の関係もない。やっと自由になれたんだ。もっと早くこうするべきだった。だけど複雑な感情があって完全に離れる決断ができなかった。それが葵を傷つけてしまった。本当にごめん」


「おにいちゃん、あたしこそごめんなさい。不安になって勝手なことをしたのに」


「葵は悪くない。俺が意気地がなかったせいだ。もともと話す必要はないと思ってたが…」


 言っておにいちゃんはこれまでのいきさつを教えてくれた。

 突然のおにいちゃんの手術は藤堂氏の費用提供があって実現できたこと。

 恩義を感じておにいちゃんを連れ、お母さんが離婚を選んだこと。

 リハビリを経て健康になってからあたしたちに会おうとしてたこと。

 何故か会えないように妨害があったこと。それがずっとお母さんの仕業だったってこと。

 強行してあたしたちと再会し、あたしに恋愛感情を持つようになったこと。

 認めてもらおうとお母さんを説得しようとしたけど猛反対されたこと。

 お母さんがあたしを蔑ろにしておにいちゃんに対して酷く執着していることが判ったこと。

 それはお姉さんであったおにいちゃんのお母さんに育ててもらった恩義があることが原因らしいこと。


「あの人は幸せになってはいけないと葵を否定することで自分への戒めとしているつもりらしい」 


 完全な八つ当たりなのにとおにいちゃんはさらに力強く抱きしめた。


「だからもう俺は葵だけを守ると決めた。父さんにも認めてもらって堀川貴裕になった。もう一度、葵と家族になるために、もう離れることがないように結婚してくれないか、葵」


 全身が震える。ずっとずっと会いたかったおにいちゃん。

 ただそばにいるだけでいいと近づこうとすると何故か離れ離れになってしまう。

 もうだめかもしれないと追い詰められても諦めきれなかった思い。

 ようやく叶いそうな瞬間に、涙が溢れた。


「落ち着いたら婚約しよう。だけど今は兄妹ではなく恋人として過ごしていこう」


 あたしはおにいちゃんが好き。ずっとずっとそばにいたい。

 もう何も邪魔をするものは無いんだ。顔を上げてあたしらしく大きく返事する。


「はい! あたしと恋人になってください!」


 おにいちゃんは小さく笑ってあたしの両頬を包むと優しく口づけた。



 

「貴裕、後は頼んだぞ」


 あれから報告を兼ねて久しぶりに会ったのにお父ちゃんとお別れすることになった。

 あたしが藤堂家に行ってから独立する青木さんの運送会社を手伝うために地方へ行くことを決意してたらしかった。 


「お父ちゃん、元気でね!」


「葵もしっかりやれよ!」


 手を上げていつものようにガハハと笑うとタクシーに乗り込んだ。これで3度目となるお別れ。

 寂しい気もするけど変わらない距離感といい、築いてきた関係性はきっとこれからも続くんだろうな。

 おにいちゃんはお父ちゃんの住んでいたアパートを棟ごと買い取って全面リフォームを計画中。

 それまでは藤堂家の別館に住むことになり、会いたい時に会いに行けるようになった。

 明人さんもお父さんが近くにいることで将来のことをいろいろと考えている様子。

 少しづつ、何かが変わり始めて前に進んでいる。

 おバカなあたしがもっと成長できるよう、頑張っていこうと思うから。


これにて完結です。読んでくださり、ありがとうございました。<(_ _)>


次ページはあとがきですので本編ではありません。(例によって裏話的な)

興味があれば(だらだらと綴ってますが)よろしければどうぞ!

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