表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報3 ~兄妹のち恋人!?~
77/85

戒めの婚約者

 しばらくしてノック音が響き渡る。

 お母さんが部屋を出てからすぐに鍵がかけられ、窓のカーテンもブラインドに変わっていて逃げ出せないようになっていた。

 あたしは閉じ込められてドアを背にもたれてたまま座り込んでいた時だった。


「葵、いるんだろ? 待ってろ。開けてやるから!」


 おにいちゃんだ!

 ノブをガチャガチャと回す音が聞こえ、やがてドンッと激しく打ち付ける音に変わり、振動が伝わる。


「おにいちゃん、止めて! ケガしちゃうよ」


 鍵でドアが開かず、体当たりで壊そうとしているのがわかり、おにいちゃんの体が心配になった。


「貴裕さま、お止めください!」


 少し遠くでマリさんの声がした。


「マリ、ここを開けるんだ。鍵を持っているんだろう」


「申し訳ありません。奥様のご指示ですのでそれはできません。…あ、貴裕さま」


 頑丈なドアの向こうでは物音もしなくなった。

 どうやら誰もいなくなったみたい。

 残されたあたしは立ち上がれない。

 せっかくおにいちゃんと会えたと思ったのにどうしてこんなことになったの?

 まだ少し頬がヒリヒリする。

 どうしてお母さんはあたしを認めてくれないんだろう。

 ポロポロと涙が溢れてくる。

 しんと静まり返った空間であたしはもう動けずにいた。

 藤堂家の一員として頑張ったらお母さんに認められておにいちゃんのそばに居られると思ってた。

 なのに頑張っても頑張ってもおにいちゃんとは会えずじまいで閉じ込められていたことに気付いた。

 だから初めておかしいと思った。それにおにいちゃんにも会いたかった。

 けど、そんなにおにいちゃんと会うことがいけなかったことなの?

 だったら何でお母さんがあたしを藤堂家の一員にしたのか分からない。

 成長したあたしに期待したから受け入れて認めてくれるのかと思ってた。

 結局は変わらない。10年前に置いていった時と同じ感覚なんだ。

 そう、何年経ってもお母さんにとってあたしは必要のない扱い。

 何をやっても受け入れてもらえない存在ならもういなくなった方がいい。

 それに一緒に住んでいるのに会えない関係を保つより、離れた方が諦めもつく。

 例えおにいちゃんに会えなくなってもお父ちゃんの元に帰れば解決すると思ったのに。


 

「…葵ちゃん、大丈夫かい?」


 不意に穏やかな声がドア越しに聞こえた。


「今、ここを開けてあげるね」


 鍵の音が聞こえ、開いたドアの向こうには雅紀さんと鍵を持ったマリさんが立っていた。


「…どうして雅紀さんが?」


 ここは3階で藤堂家にとってプライベートに当たる区間。

 いるはずもない人物の登場に戸惑う。

 雅紀さんはいつもの儚そうな微笑みを浮かべるとあたしの手を取った。


「じゃ、行こうか」


「どこへ?」


 何も答えない雅紀さんに連れられてそのまま応接室の前へと移動した。

 マリさんがドアを開けるとそこにはお母さんとおにいちゃん、そして綺麗な女の人の姿が目に入る。

 あれはいつか婚約者だと名乗っていた美佳子さんだ! 何で美佳子さんまでいるの?

 おにいちゃんが向かい合う形で3人とも立っていてこっちの様子に気づいたみたい。


「ああ、ようやくそろったわね」


 お母さんは毅然とした態度で雅紀さんに近づきながら微笑んだ。


「…最初からそのつもりだったんだな」


 おにいちゃんがお母さんを睨みながら聞いたことのないような低い声を発した。

 だけどそれを遮るように雅紀さんがおにいちゃんの前に立ち、右手を差し出す。


「初めまして。高倉雅紀と言います。僕はあなたのことを昔からよく伺ってました。葵ちゃんの、病弱なお兄さんとしてね」


 おにいちゃんと雅紀さんが立ち並ぶ姿はやっぱり似ている気がした。

 でもあの頃と違って儚げじゃない。

 おぼろげだった記憶が二人とも健康的な肉体でしっかり身体を支えている男性に見える。


「まあ、高倉さん。私から紹介するはずでしたのに」


 お母さんは握手を無視するおにいちゃんを誤魔化すように割って入る。


「いえ、以前からお会いしたかったんですよ。葵ちゃんが自慢していたお兄さんに。なるほど、これでしたら本当に僕も弟として周囲からも間違われるでしょうね。お会いできて嬉しいですよ。お兄さん」


「ねえ、この方とはどういうご関係かしら?」


 立ち尽くしたまま様子を窺っていた美佳子さんがおにいちゃんに近づく。

 

「あら、申し訳ないわ、美佳子さん。改めてご紹介させていただくわね」


 お母さんはあたしの腕を引っ張ると雅紀さんの横へと並べた。

 美佳子さんとおにいちゃん、あたしと雅紀さんが向かい合う。


「こちらは葵の婚約者。今度のお披露目で貴方たちの婚約式も兼ねてこちらも発表する手筈よ」

  

「まあ、そうでしたの! それで早急の召集でしたのね」


「えっ?」


 初めて耳にする内容にあたしは驚く。雅紀さんが婚約者?!

 でもお母さんははっきりとそう言った。嘘なんてつくはずない。


「ええ、事前に顔合わせぐらいはしておいた方がいいと思って」


「そうですわね。…お久しぶりね、葵さん。この度はおめでとう。お幸せに」


 美佳子さんはじっと見つめて優雅に微笑む。

 言葉を吞み込めないあたしは呆然として進んでいく会話に取り残された。


年内無理かと思ってたけれども何故か打ち込むことができました!

2023年ギリ更新できて嬉しいです! (੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

ふっ、2年越しの更新か。本当に遅筆ですいません。

なかなか進みませんが終わらせようとは思っていることが伝わればっ!

貴重なブクマの方々♡そんな訳で良いお年を~っ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ