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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報2 ~恋愛確率80%~
59/85

恋愛成就の予感

「あたしもおにいちゃんのことが好き。だけど…」


 血の繋がりのある禁断の恋。

 決して結ばれることのない叶わない恋。

 気持ちが通じ合っても報われない恋。 

 せっかくおにいちゃんに想いを伝えられたのに。

 せっかくおにいちゃんの気持ちが分かったのに。

 あんなに切ない想いを隠して一緒に居ることが幸せだったのに。

 こんなに離れることが嫌で打ち明けてしまった気持ちだったのに。

 そう、あたしたちは、兄妹、なんだ。

 それなのにお互い同じ想いを抱いていた。

 でもおにいちゃんはそれをずっと隠していた。

 あたしが伝えたばかりにおにいちゃんも黙っていられなくなったんだ。

 あたしの一方的な感情の高鳴りに巻き込んで。

 おにいちゃんを留めることばかりが先行して。

 去っていこうとすることよりもっと複雑なことを持ち込んでいた。

 あんなに高ぶっていた気持ちが急に静まる。

 あたしはおにいちゃんから目を逸らすと顔を伏せた。

 胸の奥がズキズキと痛み出し、苦しくなる。

 収まっていた涙が再びこぼれ始めていた。

 今更ながらに現状に気がつくあたしって本当にバカ。

 幸せな時間がやってくると思い込んでいたんだ。

 想いが通じ合えたらきっと幸せになれるんだって。

 ずっとずっとそばに居られるんだろうって。

 でも実際はそうじゃなかった。  

 一瞬の幸せを噛み締めて現実を目の当たりにしていた。

 10年間離れていたおにいちゃんを好きになったなんてお父ちゃんに言えるはずもない。

 勝手に盛り上がって、もしかしたらと期待して…。

 好きで通じ合っても悲しいだけじゃない。

 誰からも祝福されない恋。

 …咲ちゃんの言うとおり。

 泣きを見るってこういうことだったんだと思い知る。


「葵?」


 泣き出したあたしに気づいたおにいちゃんが顔を覗きこむ。

 想い人の眼差しにもっと胸が苦しくなる。

 好きで好きで仕方なかった。

 日々蓄積されていく気持ちが切なかった。

 恋することでいろんな感情に気づけた。

 あたしも一人前に好きになることができるんだって。

 けど、その相手がおにいちゃんだった。


「まだ、信じられない?」


 おにいちゃんは泣き出した原因がおにいちゃんからの気持ちのことだと思ってる。

 そうじゃない、そうじゃないよ、おにいちゃん。

 あたしが地雷踏んじゃったんだよね。

 おにいちゃんの想いまでも告白させてしまった。

 根本的に好きって伝えちゃダメだったんだよ。

 おにいちゃんはその気持ちを押さえてたのに。

 どうして今まで黙ってたのかという理由も考えないで。

 どうしようもない恋の行方に途方に暮れる。

 通じ合っても意味がない。

 あたしは言葉に出来ず、首を振る。

 兄妹って現実は消えはしないんだから。

 おにいちゃんがあたしを伺うように見つめている。

 そして頬に伝った涙をそっと指先で拭う。

 優しくされればされるほど積み重なった想いの重圧が掛かる。

 これ以上どうしようもないのに。

 切なさと苦しさの狭間で見つめていたおにいちゃんがゆっくり頷く。


「もうこのままにしていられない」


 その瞳は何か決意したような光があった。


「…ダメだよ」


 何かを言いかけたおにいちゃんにあたしは静止する。

 もうこれ以上、何も出来ない。

 変えられない事情はどうしようもないんだって。


「あたし、好きって言っちゃいけなかったの!」


「…葵」


「だって…だって、あたしたち、兄妹だもん、…血が繋がってるんだもん」


 あたしは見たくもない現実を突き放すように叫んだ。

 おにいちゃんを求めてはいけない。

 諦めなきゃいけない。


「確かに、血は繋がってる」


 おにいちゃんはあたしの顔を両手で覆う。

 目を逸らさずに真っ直ぐ見つめる瞳が注がれる。

 そしてゆっくりと衝撃の事実を口にした。


「…だけど直接じゃないんだ、オレたち」


「え?」


「オレと葵は実の兄妹じゃない」


「ウソ…」


 そんなこと、知らない。聞いたことがなかった。

 だってあたしが生まれた時からおにいちゃんは存在していた。

 ずっとずっとそばに居たんだよ?

 戸惑うあたしにおにいちゃんは言葉を続ける。


「オレはもともと堀川家で生まれてないんだ」


「そんな、じゃあ、おにいちゃんは…?」


 おにいちゃんの瞳が一瞬曇る。だけど何かを振り払うように告げた。


「母方の、姉の息子なんだ」


 母方って、お母さんのこと?

 おにいちゃんがお母さんのお姉さんの子どもってこと?!


「だから直接葵とは血が繋がってない。血縁関係で言うと従兄妹に当たる」


 従兄妹! おにいちゃんとあたしが?!

 兄妹として育ってきたのに本当は従兄妹だった?


「従兄妹同士の場合だと世間的にも結婚は認められている。だから何の問題はないんだ、葵」


「本当、なの、…兄妹、じゃないって?」


「ああ」


 頭の中が真っ白。身体にも力が入らない。

 あまりにも信じられない事実が今まで隠されていたなんて。


「葵、大丈夫か?」


 気が抜けて倒れ込みそうになるあたしをおにいちゃんが抱きとめる。

 大丈夫な訳ないよ。あたしだけが何も知らないで生きてきた。


「葵の気持ちが分かった以上、オレはこのままじゃいられない」


 おにいちゃんは呆然とするあたしをしっかりと抱き締めながらはっきり言った。 


「もう逃げも隠れもしない。藤堂家とケリをつけてやる!」

  

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