表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報2 ~恋愛確率80%~
39/85

最高の贈り物

 5月8日。あたし、堀川葵の17回目の誕生日。

 朝からお父ちゃんが顔を見るなり意気込んで言った。


「葵、今日は寿司をとってやるからな。楽しみにしてろよ」


「ホントに?」


「当たり前だ! 今日は特別の日だからな、任せておけ」


 お父ちゃんは力強く自分の胸をドンと叩くと仕事へと出かけていった。

 お寿司なんて久しぶり。ここ1ヶ月ぐらいはご無沙汰してる。

 そう、おにいちゃんと外で食べて以来だから。

 …おにいちゃん、と。

 一人残された部屋で想い出してしまうのはすごく切ない。

 誰かがそばにいればこんなに寂しくはないのに。

 無理してでも笑ってられるのに。

 感傷的になりそうな自分に喝を入れ、学校に行く準備をし始めた。

 落ち込みそうになるあたしを励ますような五月晴れ。

 いつまでもウジウジとしてられないよと気合を入れて登校。


「おはよう、葵!」


 教室に入ると咲ちゃんが満面の笑みを浮かべて近づいてきた。

 あたしもおはようと返すと目の前に差し出されたロゴの入った紙袋。

 表面がつるりとして光る材質は高級そうな印象。


「はい。二人からの葵へのバースディプレゼント!」


 咲ちゃんは得意気に渡す。


「うわぁ、ありがとう!…開けていい?」


 登校早々受け取った贈り物に嬉しくなり、許可を得て開封。

 中を覗くと袋全体の面積を占めているモノが存在する。

 取り出してみると帽子だと判る。

 キャスケットだって説明された。


「…なんか、大人っぽい。でもとっても素敵!」


「そうだよ。食い気の多い葵にも多少色気が必要だと思ってさ。葵も17歳なんだから少しは大人っぽくならないとね? ホントは洋服を贈りたかったけどサイズが微妙でしょ? この間の食べっぷりからまた大きくなってるんじゃないのかな、って」


 からかい気味に咲ちゃんが笑う。

 うう、そんなことないってばっ! ちゃんと運動してるから変わってないのにっ!!


「酷いよ~っ! 確かにあの日はスペシャルバーガー3種類にポテトのLサイズを食べたけど…!」


 否定するために大声を張り上げた途端、葵のバカと咲ちゃん。

 何でよ? 本当のことだよって主張しようとしていると、


「堀川はそんなに食べるのか?」


 いつのまにか教室に入ってきた担任から驚きの声が上がる。

 ふと気づけばクラス内の視線を受けていて注目されていたことに気づく。


「え、ええっとぉ…、食べちゃいました。…それ以外にも」


 しどろもどろになるあたしを包み込むように大爆笑が起こっていた。

 顔を赤くした咲ちゃんが再び小さくバカと呟いた。

 …誕生日に笑われるのってあたしぐらいかな?

 笑いの渦の中、SHRが始まっていた。



「葵のクラス、朝、何だか楽しそうだったけど?」


 放課後、部室で着替えていると真琴ちゃんが入ってきた。


「え、っと、あれは…」


 今朝の出来事を思い出し、ポツリポツリと説明する。


「わはは~、葵それ、マジ?」


 背後から先輩の笑い声。

 真琴ちゃんに話してたのに先輩にも聞かれてしまったらしく部室内は大爆笑。

 あっという間に体育館中のネタになり、相変わらずバスケ部の男子には笑われる始末。

 17歳になったのにもかかわらずあたしってば笑いの下に生まれてきてるのかも?

 でもその反面、おめでとうって声が掛かるのは嬉しかった。

 おまけに残り物のお菓子という貢物もたくさん貰えたしね。

 いろんな人に祝ってもらってる誕生日。

 …一番望む人はいないけど。

 熱の入った部活は終わりを向かえ、片付けているとレギュラーだけが召集される。

 いつもは一緒に帰っている真琴ちゃんにも当然呼び出しが。


「ゴメン、葵。長引きそうだから先に帰ってて」


 着替え終わったあたしが部室から出てくると真琴ちゃんが言った。

 照明のついた体育館でボールのはじく音が聞こえる。

 日曜日にまた試合があるからのってる時に調整したいのかもしれない。


「それに今日はお寿司が待ってるんでしょ?」


 お父ちゃんとの約束のお寿司。帰宅まで待っているのも確か。


「うん、分かった。ゴメンね。バイバイ」


 真琴ちゃんに手を振ると部室を後にする。

 さっきまでいた後輩たちの姿は既にない。

 ひと気の無いシンと静まり返った校舎を横切り、足早に校門を目指す。

 徐々に日が長くなってきたとはいえ、この時間ともなると暗くなるのは確か。

 いつもより多い手荷物を抱え、照明を頼りに学校を出る。

 待たせてるお父ちゃんに悪いから少しでも早く帰ろうと走り出そうとした。


「…葵」


 不意に名前を呼ばれた気がして立ち止まる。

 確認しようと振り返るけど、辺りは暗くてよく分からない。

 すると薄暗い視界の中、うっすらと現れる人影。

 徐々に明かりのそばに近づいたその姿にあたしは目を疑う。

 スーツを身に纏った華奢な体型、栗色の髪に切れ長の瞳。

 一目見ればその姿が誰だか分かる。


「…おにい、ちゃん?」


 薄明かりに照らされてあたしのそばで立っている人物。

 目の前に現れたのは紛れも無くおにいちゃん、だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ