表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆予報 ~「おにいちゃん☆注意報」番外編~
33/85

マサさんの専属育成講座~タオル編~

 改めまして、藤堂家の女中頭のマサでございます。

 この度は貴裕様の専属として葵様に仕込んでおりますが…目に余るほどの失敗ぶり…。

 お恥ずかしいのですが、ついつい金切り声を上げてしまいます。


 先日は脱衣室のタオルの件でございます。

 長年の習慣として貴裕様は毎朝シャワーを使われます。

 濡れたお身体を拭き取るためにご用意しておくモノがあります。

 そう、一般のものとは異なる少し大きめのタオルです。

 ソフトな肌触りにこだわった特別仕様のものでございます。

 こちらは脱衣室に備え付けてある戸棚に数枚は入れております。

 棚から取り出し、カゴに入れておく。

 …ただそれだけのことです。

 もちろん、取り出した後は無くなってしまいますから補充しなければなりません。

 3日おきに1階のリネン室から運ぶように伝えております。

 それなのに何故なんでしょう?

 運ぶ途中の階段につまづいて全てをばら撒きます。

 せっかくのタオルも台無しです。

 仕方なしにまたリネン室に逆戻りしてもらいます。

 何とか無事に運び終えたタオルを棚へと収めてもらいます。

 ホッとしたところでカゴにタオルが用意されてないことに気づきます。

 ご指摘を行なったところ、葵様は慌ててタオルを取り出そうとなさいます。

 ですが何故なんでしょう?

 上から取ればよいものを下の方から掴んでおります。

 そうなればもちろんタオルのバランスが崩れて全てが降ってまいります。

 せっかくのタオルがまたもや台無しです。

 理由をうかがえば前からあるものを取り出そうとなさったとか。

 確かにマサは前に置いてあるものから使うように指導しました。

 ですが補充の際に運んできたものを下に置き、その上に前からのものを重ねておけばすむ問題。

 先入先出法の原理を利用した補充方法でございます。

 とにかく複数枚のタオルをオシャカになさった訳です。

 つい叫びたくなるのも解りますでしょう?


 そしてまた別の日では…。

 毎朝、貴裕様がシャワー後にご使用になるタオル。

 葵様がお忘れになってはいけないと思い、常に脱衣室のタオルの在庫を気にしております。

 だいたい3日おきに補充しておけば多すぎず少なすぎずの枚数。

 こまめに補充するのは貴裕様に少しでも新しいものを使用していただきたいからでございます。

 少しでも快適に過ごしていただけるのであればマサは努力を惜しみません。

 ですがそのお役目を葵様に引き継ぐことになったのです。

 この信念は貫かなければなりません。

 そこで抜き打ちチェックです。

 脱衣室のドアを開け、こっそりと補充中の葵様の様子を窺います。

 空にした戸棚にタオルを収めているご様子。

 これで順序よく取り出せるでしょうとホッと一安心といったところです。

 と、思った矢先、まだタオルを補充しております。

 一体、何枚のタオルを運んできたのでしょうか?

 既につま先立ちにならなければ積み重ねられない高さになっております。

 そうなればいずれは起こってしまう、倒壊の危機!

 声をかけようとした瞬間、予想通りの展開に。

 雪崩の如く舞い散るタオル。

 それを防ごうとする葵様ですが余計に悪化する始末。

 結局棚に収めたものが全て床へと転落です。

 ああ、何ということでしょうか?!

 しかも最悪なことにリネン室にあったタオル全てとおっしゃるじゃありませんか!!

 これではすぐに貴裕様がシャワーを使えないではないですか!!

 これは前代未聞の出来事です!

 36年間お勤めしてきて信じがたいことが起ころうとしております。

 貴裕様の毎朝の習慣が今、絶たれようとしております。

 このマサの憤りをお分かりいただけますか?

 悲鳴に近い声を上げたこと、ご理解いただけるでしょう?

 葵様、ある意味怖いお方です。

 あのような声を上げたせいで貴裕様が脱衣室の方へ顔を覗かせてきました。

 室内の状態を見て何があったか把握なさった様子。

 さすが貴裕様です。勘がよろしくていらっしゃいます。


「今朝はシャワーを浴びれそうにないね?」


 全てのタオルをダメにして申し訳が立たなくて卒倒しそうなマサですのに葵様は、


「大丈夫!充分に使えるよ!」


 と、床に落ちたタオルを拾い差し出します。


「葵様!!床に落ちたものをお渡しするなんて!」


 仮にも藤堂家を背負って立つお方になんてことを!!

 とんでもない! と慌てて奪い取り、床に散らばった全てを拾い集めます。

 貴裕様には清潔なものを使っていただくのがモットーなのです。

 床に落ちたものをお渡しになるなんて考えられません!!

 すると葵様は閃いたように脱衣室を出て行かれます。

 苦笑いをなさる貴裕様を見て胸が痛みます。

 早朝からお騒がせし、習慣さえも絶たれようとしてるこの状態に。


「貴裕様、これどうぞ」


 葵様がお戻りになり、手に持ったタオルを差し出します。

 どこからお持ちになったのか不思議に思っていると、


「今朝あたしが顔を拭いただけだからまだきれいだよ!」


 ……。

 何を思ったのか葵様がお使いになったもののようです。

 …呆れて何も言えません。

 ですが貴裕様は違ってらっしゃいました。

 葵様を見て大笑いなさってます。

 これまで見たことのない、心からの笑顔。

 マサはその光景を見て胸が熱くなりました。

 貴裕様もこのような感情をお持ちなのだと。

 そういえば葵様がいらしてから貴裕様の表情が穏やかになっております。

 失態は許しがたいのですが貴裕様にとっては良い傾向かと思えます。


「今日は気分を変えてお風呂にするよ」


 結局、葵様のご使用になったタオルは没収させていただき、貴裕様にはご足労願って朝から1階の浴室でお風呂に入っていただきました。

 そちらにはバスタオルがございますので何とか無事に切り抜けました。

 本当、葵様には驚かされます。

 ですが憎めないお方です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ