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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報
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救いの神様、現る?!

 堀川葵ほりかわ あおい、最近16歳になった高校1年生。

 骨太でがっちりとした体格って事で中学の時勧められるがままバレー部に入部。

 ところが誰もが予想もしなかった不器用さで万年補欠。

 まあ、中学の3年間でどうにかバレーらしきものになったんだけどね。

 小さな頃から健康優良児で大きな病気なんてしたことがない。

 体力だけが取り柄で勉強の方や女の子らしいことはからっきしダメ。

 …いや、やろうと心がけてるんだけど何故か失敗しちゃう。

 そんなあたしがお父ちゃんのため、何が出来る?

 あっさり切れた電話の後教室に戻り、午後の授業を受けている。

 英語なんて上の空。

 …もっとも得意じゃないんだけどね。

 午後からの授業はいつもなら眠たくてしょうがない。

 だけど、今はお父ちゃんのことで頭がいっぱいでギンギンしてる。


「それでは68ページを開いて」


 ビリ!

 ページをめくる音とともに教室に響き渡る音で大注目。

 勢い余って教科書の見開きを5センチほど破ってしまった…。

 ホント、あたしってば逞しい…。

 こんな風だから繊細さに欠けてるっていうのよね。

 例えば几帳面でしっかりしてたらきっと役に立つんだろうけども。

 こんな図太いだけの女が働く羽目になったら工事現場?

 体力しか自信がないからもし働くんだったらそれぐらいしか出来なさそう。

 こんな娘でゴメンね、お父ちゃん。

 さっきの電話口での開き直ったかのような意外にも陽気な声。

 あれはあたしに心配させまいとしてるに違いない。

 学校終わったらすぐに帰れってことは電話で話せない大事なコトがあるんだ。

 ああ~っ、一刻も早く家に帰りたい~~!


「真琴ちゃん、急用で部活お休みするから先輩に伝えといて!」


 帰りのSHLが終わるや否や猛ダッシュ。

 階段の途中、同じクラスのバスケ部男子から笑われてるのが見えたけど、無視。

 とにかくとにかく急いで家へと走った。



「おっ、思ったより早かったな」


 呼吸も荒々しく玄関のドアを開けたらガムテープ片手のお父ちゃんが目に入った。

 真新しいダンボールを組立、箱作りの真っ最中ってとこ。

 運送業で慣れているのでダンボール作りは楽勝って感じ。


「…何してるの?」


 作り始めて間もないのか部屋には2~3個の箱が転がっていた。


「何って荷物をまとめようと思ってな」


 …ま、まさか! 夜逃げ?

 急いで帰って来いって言ってたのはそのため?

 荷物をまとめて今日の夜のうちにどこかへ逃げるの?

 覚悟しろ…ってこういうこと?


「えっと、お父ちゃん。何から手伝えばいい?」


 靴を脱ぎながら周囲を見渡した。

 所詮1DKの安アパートなので大したものは置いてないけど逃げるとなれば別。

 家具なんて持っていけないし、大荷物じゃ動きづらい。

 大事なものを中心に最低限のものを持っていかなくちゃ!


「う~ん? とりあえず、タンスの中身かな?」


 言いながらタンスの引き出しを開けかけた。


「おい葵、何してる? すぐに出かけるぞ」


「えっ? 何で?」


「葵を待ってたんだから」


「は?」


 お父ちゃんは何も言わず、あたしを外へと導いた。

 アパートの入り口まで行くと黒い大きな車が一台近づいてきた。

 そういえばさっき近くに停まってたのを見たかも。

 黒光りのボディにぼんやりしていたら横から白い手袋がぬっ。


「どうぞ、お乗りください」


 見れば黒いスーツに身を固め、白い手袋をした男の人が車のドアを開けていた。


「ええぇ?」


 訳も解らず、突っ立っていると、


「葵、早く乗りなさい。話は後だ」


 急かしながらお父ちゃんが乗るように促がした。

 車内に入って腰掛けると何とも言えない座り心地の良いクッション性。

 おまけにゆったりって感じで後から乗り込んだお父ちゃんが横でも広々。


「それでは発車致します」


 さっきドアを開けてくれた男の人が運転席から声をかけた。

 それと同時に運転席と後部座席との間からぬぅ~と仕切りが出てきた。


「うわぁっ、なにこれぇ?」


 初めて見るモノに驚いている内に車は走り出していた。


「…今日は本当、大変だったんだよ」


 興奮も冷め止まぬまま、お父ちゃんは話を切り出した。

 例の荷物はすごく有名な人の作品で世界に一つしかない壷だとか。

 なので金額がつけられないほど貴重なモノ。

 その壷に欠けと亀裂が入ってたんだって。

 同じものは作れないし、かといって買い取ることも出来ない。

 そんな風に受取人の代理人が説明に来て社長は倒産だと泣き叫んで青木さんは自暴自棄になりかけて大変だったんだって。

 で、お父ちゃんが全ての責任は自分って言い張ってとりあえず代理人と2人で受取人に謝罪に行った。


「そこですごい奇跡が起こったんだよ」


 お父ちゃんは信じられないといった顔で言った。


「葵も驚くぞ」


 すごく気になるって聞きだそうとしたらこれから分かると返された。

 そうこうしている内に目的地に到着したらしく、車が停まった。

 ドアを開けられて外へ促され、踏み出した先が大きな扉が目の前に。

 そしてすぐに観音開きのように開かれた。

 中からはロマンスグレーのやっぱり黒いスーツを着た男の人。


「お待ちしておりました、こちらでございます」


 お父ちゃんとあたしは案内されるがままに室内を歩き出す。

 何なの? ホテルみたいなここは?

 ふかふかの絨毯、吊り下げられたシャンデリア、いたるところに壷や絵画。

 キョロキョロしながら広い廊下を歩き、ようやく部屋に。

 見たことのない別世界に落ち着かないまま、ソファに座ること数分。

 パタンとドアの音がしたかと思うと男の人の声が聞こえてきた。


「久しぶりだね、葵」 


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