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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報
24/85

激しい攻防戦

 授業開始のチャイムとともに収まったかにみえた騒ぎ。

 だけど事態は水面下で広がっていた。

 教室内でチラリと見られること多々。

 はぁ、また取り囲まれて質問攻めになるのかな?


「堀川さん、ちょっとよろしいかしら?」


 授業終了後、あっという間にクルクル乙女コンビに取り囲まれる。


「明人様が仰るとおり、メイドだなんてホントですの?」


 あたしは否定する理由も無く、こっくりと頷く。


「まあぁ、使用人の分際でワタクシたちと同じ学校に通ってらっしゃるの?」


「それにワタクシたちとご学友的な態度をおとりになって酷い方だわ!!」


 お上品な顔立ちが般若のように変化する乙女1号2号。

 でもお友達だという態度、とった覚えは無いんだけどな?


「しかも貴裕様や明人様にも随分と厚かましい態度で接してらっしゃるし?」


「使用人としてなら絶対に許されない行為ですわ!!」


 興奮している二人に攻められるのみ。

 こんな騒ぎになるなんて思いもしなかった。

 だからおにいちゃんは黙ってろって言ってたんだと実感。


「あのさぁ~、もういいかなぁ?」


 移動のため空っぽになりつつある教室にまだ居た明人さんが割って入る。


「アイツの方は知らないけど、ボクはちょっと気に入ってんだよね。だからぁ、構わないでくれる?」


 乙女コンビの肩を抱き、二人の耳元に甘ったらしい声を出して交互に囁いている。

 すると顔を赤らめてスゴスゴと引っ込んでいく二人の姿。

 ニヤリと笑う明人さんの口元に何だかちょっと恐怖を感じた。


「で、次の授業、何取ってんの? 葵?」


 そう言いながらカバンを持てとばかりに差し出す明人さん。

 思わず受け取ってしまう悲しい性。

 そんな明人さんがばらしたメイド騒動は知らないところでもあっという間に広まっていたらしい。

 しかもクルクル乙女たちを騙してたと変な中傷まで加算されて。

 そのおかげで周りのあたしを見る目が変わったのが確か。

 馴れ馴れしくなくなって距離ができたから良かったものの、代わりに明人さんがあたしに付きまとう始末。

 それもあたしの行動に「何でそうなるかな?」と苦笑気味に呆れられながら。

 そんな中、昼休みがやってきた。

 おにいちゃんと待ち合わせの場所へと行かなくてはならない。

 院を卒業したおにいちゃんだけど引継ぎが残ってるとか何だとかで学校に来る用事があるらしい。


「どこに行くんだよ?」


 限られた時間で焦るあたしに明人さんはのんびりと問いかける。


「お、お昼ご飯の準備だよ!」


 急いで校舎を出るあたしに相変わらず付きまといながら噴水前に近づく。

 だけどすぐに回れ右。

 だってそこにはおにいちゃんがいたから。

 数メートルってところで判ったみたいで気がつくと姿を消していた、いつの間にか。


「あ、あれぇ?」


 おにいちゃんも明人さんの存在に気づいてた様子。


「葵、大丈夫か? 明人が迷惑かけてるみたいだな」


 近づくと少しムッとした口調でため息をつく。


「早めに何とかしないと…」


 おにいちゃんは独り言のように小さく呟くと何事も無かったかのようにランチ指示を出した。

 それから普段通りの時間を過ごし、午後の授業に戻るとふて腐れた態度の明人さんが目の前に。

 で、アイツと会うなら事前に言えって怒ったように命令口調。

 意味が分からないんですけどぉ?

 結局、何だかんだ言いつつも一緒に過ごしていた午後の授業。

 そんな風に新学期の初日は終わり、放課後になっていた。

 帰ろうと迎えに来た中川さんの車のドアが開いた瞬間、どこからともなく明人さんが現れる。


「いいから、出せ。中川!」


 驚くあたしたちにお構いなしに一緒に乗り込み、帰宅。

 明人さん専用の別の送迎用ベンツを後ろに付けさせてだよ、わざわざ。

 車内では中川さんをからかうように仕切りを開け閉めしたり、身を乗り出したりで大変だった。

 あたしはそれを止めようとして必死だったのにも関わらず、


「アンタ、ボクを殺す気?」


 真剣に訴えられてさらに危険な目に合わせてたみたい…。

 どうにか家に戻ることが出来てホッと一安心したのもつかの間。

 しばらくしておにいちゃんがいないのをいいことに別館をウロウロしだす明人さん。

 永井さんやマサさんに見つからずに忍び込むのが楽しいんだって。

 マサさんが運んでくれた飲み物を味わっているといつの間にかあたしの部屋に居た!

 驚くあたしから飲み物を取り上げて、きれいにメイキングされたベッドへゴロン。


「あ、あ…」


 あっという間に飲み干してベッドはぐちゃぐちゃ。

 放置されたグラスの回収としわくちゃのシーツを整える間、部屋の中を探索。


「ちょ、ちょっと明人さん!」


 クローゼットや引き出しを開けたり、ぬいぐるみを投げ飛ばしたりとやりたい放題。

 さすがのあたしもこれには頭がくる。


「いいかげんにしてよ~~!!」 


 力任せに突き倒してしまい、部屋で尻もちをつく明人さん。

 長めの前髪が乱れ、驚いた表情をみせる。


「イテェ、油断した…」


 髪の毛を直しながらあたしを見上げる。


「すげえバカ力。…あんたってやっぱり、…変だ」


 そう言うと急に大笑いを始めた。

 あたしは初めて顔をぐちゃぐちゃにした本当の笑顔を見た気がした。

 出会ってから今までの明人さんは掴みどころの無い人だなって感じてたけど、こんな一面もあるんだって思えた。

 でもそれはほんの一瞬だったけどね。

 笑ってる途中でグラスを片付けに来たマサさんが現れたから。

 逃げ惑う明人さんとマサさんの追いかけっこ。

 最後には金切り声で引っ張り出されて本館へ連れ戻されるパターンで決着。

 ああ、これから先が思いやられる予感。


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