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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報
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平穏な時間と嵐の前触れ

 気がつけば春休みの真っ只中。

 休みに入ったとはいえ、規則正しく起きてお仕事に出かけるおにいちゃんのお見送り。

 それから家でおにいちゃんがらみの専属に関係するお仕事をお手伝い。

 普段は学校に通ってる間にマサさんが全部やってたみたいなんだけどね。

 おにいちゃんの部屋の掃除やベッドメイキング。

 シャワー室やトイレの掃除。

 それに加えてあたしの部屋も。

 毎日毎日大変だろうなって実感しちゃった。

 けれど手伝うことによって余計な心配をかけてるのも事実。

 あたしの不器用ぶりはマサさんを青くしてる。

 ええ、大事な美術品を壊さないように気をつけてますから!

 そんな風に割と忙しく過ごしている日々。

 朝から出勤してるおにいちゃんは学校がある日より早めに帰宅していた。

 危機感を感じてその行動をとってるのには訳がある。

 実はたくさん出ている春休みの課題から目を逸らしてるのがばれちゃった。

 ほら、おバカなあたしには分からないよってことで逃避。

 そこで夕食後、あたしの家庭教師へ早変わり。

 休みが明ければ高校2年生。

 総合学科という単位制の学校に通う身ですからがんばらないとかなりヤバイ。

 そんな訳でみっちりとお勉強させられてます、わ~ん。

 いつもよりおにいちゃんと過ごす時間が増えて何だか変な気持ち。

 時々視線を感じると妙にドキドキしたり、ソワソワしたり。

 そのことによって失態を冒してしまって笑われる始末。

 おにいちゃん曰く、面白い葵から目が離せないんだって!

 普段から笑われるのには慣れてるけど余計に失敗してる。

 でも笑ってるおにいちゃんの顔を見れるからいい。

 落ち着くというか和むというかそんな感じ。

 そう、そんな感じ、…だよね?



 ぽかぽか陽気になった4月。

 春休みもとうとう最終日、新学期はいよいよ明日。

 外ではすっかり桜が咲き乱れてお花見シーズン真っ盛り。

 何だかあたし、幸せだなぁ…って感じる。

 おにいちゃんとの日々を取り戻して平穏で楽しい生活。

 そして春休みということもあって普段よりも身近にいる存在。

 ゆったりと時間が流れてこんな日がずっと続いて欲しいなんて贅沢かな?

 学校が始まれば慌ただしい毎日になっちゃうんだろうけど。

 貴重な時間だからこそ、幸せを感じるのかもしれないな。

 だから最後の一日を大事に過ごさなきゃね?

 そんな休日のブランチ中、おにいちゃんが桜を見に行こうと誘ってくれた。


「ま、葵は花より団子だろうけど?」


 クスクスと笑いながらいつものようにからかう。


「今はお腹いっぱいだからそんなことありません」


 ちょっぴり脹れながらおにいちゃんを睨む。


「出店を見かけてもこれ食べたい! …なんて思うなよ?」


 ドキッ! そんな予感があるかも!


「わ、分かってます~ぅ!!」


 すっかりお見通しなんだとあたしはしぶしぶ答える。


「ははは、嘘だよ。せっかく花見に行くんだから満喫していいから」


 にっこり微笑むおにいちゃん。


「もぉ~! 食べません!!」


 半分ヤケになりながら顔を赤らめる。


「じゃ、そうと決まれば着替えて来い」


 メイド服姿のあたしに指示を下す。


「は~い」


 部屋を出ると階下から揉める様な声が聞こえてきた。

 気になって階段に近づき、玄関の方を見下ろす。

 すると永井さんと黒髪の若い男の人がいた。

 誰だろう? そんな風に思ってるとその人と目が合った気がした。

 慌ててその場から離れ、着替えるために部屋へと戻る。

 ワンピースを脱ぎ、ジーパンを履いて薄手のタートルネックを着ている途中、ドアの開く気配がした。


「もう~、まだだよ」


 支度の遅いあたしにおにいちゃんが様子を見に来たんだと思った。


「あんた、誰?」


 聞きなれない声が響き、ようやく首から顔を出したら見知らぬ姿が。


「え?」


 こ、この人、さっき下で永井さんと揉めていた男の人だ!

 顔を隠すように長めの前髪をたらして表情は見えないけど唇をとがらかして不審そうな感じ。


「…あ、明人様、こちらにいらしたのですか!」


 半開きのドアから慌てた様子で永井さんが顔を覗かせる。


「お呼びするまでお待ちくださいとお伝えしたはずです。さ、こちらへ」


 部屋からその人を力尽くで引っ張り出す永井さん。


「葵様、申し訳ございません」


 申し訳なさそうに会釈をするとドアが閉じられた。

 突然の出来事にしばらく金縛りにあったように動けなかった。


「葵、まだ準備は出来ないのか?」


 クローゼットにワンピースをかけているとおにいちゃんの声がした。


「う、ううん。もう行けるよ」


 おにいちゃんに駆け寄ると部屋を後にした。


「食べ過ぎて洋服が入らなかったとか?」


 廊下を歩きながらおにいちゃんがクスクスと笑いながらからかい口調。


「ち、違うよ! ちょっとしたハプニングが!!」


 階段を下りながら必死で否定するあたし。

 相変わらず笑ったままのおにいちゃん。


「ねぇ、どこかへお出かけ? ボクも一緒に連れてってよ」


 不意に下の方から声が響いてきた。

 視線を移すと階下の手すりに両手をもたれさせて見上げる顔がある。

 あ、さっきの!


「明人!!」


 突然現れた人物におにいちゃんは驚いた様子で顔を強張らせた。


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