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おにいちゃん☆注意報  作者: おりのめぐむ
おにいちゃん☆注意報
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胸騒ぎの金曜日

「それじゃあ、行って来るからな」


 暗い表情をしたお父ちゃんが重そうな足取りで家を出た。

 日が明けて翌日、金曜日。おまけに13日。

 13日の金曜日なんて、ホラー映画じゃないんだから!!

 カレンダーを見てますます暗い気分になってしまう。

 とはいえ、お父ちゃんもお仕事に行ったことだし、あたしも学校へ行かなきゃ。

 気持ちの切り替えとブンブンと頭を振り、制服に着替えようとハンガーを見る。

 あれ? 制服がない…。

 いつもなら壁にかかってるハンガーに掛けてるはずの制服一式が無い。

 何で? どうして?! と探し回ること数分。

 そういえば昨日、部活の途中で飛び出したんだっけ?

 ジャージ姿のままだったことを思い出し、仕方無しにそれに着替える。

 おまけにカバンも部室のロッカーに入れたままだ…。

 ジャージに手ぶらの格好でこれじゃあ何しに学校に行くの?

 幸先の悪いスタートにとほほとなっているとさらにダメ押し。

 家を出ようと玄関に置かれたモノを見てため息。

 あたしってば、体育館シューズのままで外、出てたよ…。



「おはよう! 葵。…今日、朝練あったの?」


 ジャージ姿で登校していたあたしにクラスメートの咲ちゃんが声を掛ける。


「…え」


「…の割にはローファー?」


 咲ちゃんはあたしの足元を見ながら不思議そうに問う。


「いや、その…」


「おまけにもう時間ギリギリだし?」


 容赦ない突っ込みにちゃんと返答できないまま、靴箱に辿り着く。


「あっ、おはよう! 咲ちゃん、…葵?」


 同じバレーボール部でクラスメートの真琴ちゃんがあたしの姿を見てぎょっとした。


「あれぇ? 今日、朝練あったっけ?」


「やっぱり? こんな時間に登校だったら練習って変だなぁって」


 咲ちゃんと真琴ちゃんで不思議そうに見つめられる。


「…ち、違うの!」


 ちゃんと説明しようとして言いかけた時、予鈴が鳴った。


「やばい~! 教室に行かなきゃ!!」


 真琴ちゃんのダッシュをきっかけに教室へ駆け込んだ。

 とりあえず、席に着いて一呼吸。

 SHLが終わってからダッシュで部室へ行こう。

 そう思っていると本鈴が鳴り、担任が入ってきた。

 あれ? 先生ってばおでこどうしたんだろ?

 教壇に立つ担任の額には大きな絆創膏が貼ってあった。

 昨日会った時には無かったのになぁ?

 なんてぼんやり思ってたら一瞬目が合って怯えた顔になった。

 それは一瞬だったから気にも留めず、ただただ部室に行かなきゃって事で頭がいっぱいだった。

 SHRが終わり、猛ダッシュで部室に向かって教室にUターン。

 短い休み時間だからさすがに制服に着替えられなかったんだけど、授業はきちんと受けますぞ。

 カバンを持って教室に入った時、いや~~に注目されていることに気づく。

 …だから、制服まで間に合わなかったんだってば!!

 ジャージ姿だから見られてるんだなって気にも留めずに愛想笑い。

 席に着いて1限目の準備をしていると後ろの席の藍子ちゃんがトントンと背中を突付く。


「昨日さあ、部活中ボールで頭、ぶつけたんだって?」


「…えっ、な、何で?」


 思い出して顔が真っ赤になる。


「だって担任のあの額の怪我、葵が押し倒してドアの角にぶつけたって噂になってるよ」


 え? うそ?


「何でもボールぶつけた直後に担任を押し倒して発狂して外に飛び出した! って」


 は、発狂? …何でそうなってるの?


「バスケ部の男子が見てたって言ってたもん」


 ぎゃふん! やっぱり朝からついてないよ…。



 昼休み。

 ちゃんと制服にも着替えたし、ご飯も食べたしって事でひと段落。

 咲ちゃんと真琴ちゃんにはジャージ事件の説明も出来たし。

 担任押し倒し事件については尾ひれがついちゃってるから収拾つかない状態。

 バスケ部め、面白おかしくあたしのことを言いふらしたんだなぁ、もう!

 只でさえ、バレー部内で笑われてるのに~~!!


「まぁまぁ、葵はバレー部にとってムードメーカーだからねぇ」


 真琴ちゃんがにっこり笑ってフォローする。


「そうそう、部活どころかクラスでもね」


 咲ちゃんもクスクスと笑いながら言う。


「葵を見てると笑えるっていうか、元気になるし」


「ズレてるけど一生懸命で頑張ろうって気になるし」


「…それって褒められてるのかな?」


 どうも負に落ちないと思っていると校内放送が入った。


「1年A組の堀川さん、堀川葵さん。至急、事務室までお越しください」


 ちょっぴり落ち着きモードだったあたしは急に胸がドキドキした。

 頭の片隅にあったお父ちゃんの事故による責任の所在。

 覚悟はしておいてくれって言ってたけど、どうしていいのか分からないよ。

 不安が募り、胸騒ぎを抱えて事務室に到着。

 お父ちゃんからの電話ってことで受話器を受け取り、震えそうになる声を必死で抑えた。


「も、もしもし…?」


「おっ、葵か?」


 予想もしてなかった陽気な声が受話器から聞こえてきた。

 もしかしてどうしようもなくなって開き直ってるのかな?


「…お父ちゃん、大丈夫? …もしもし?」


「あのな、葵。今日は学校が終わったらすぐに帰って来い。いいか、すぐだぞ!」


 それだけ言うと電話が切れてしまった。

 え? お父ちゃん?

 ただただ胸騒ぎが高鳴るばかりだよ~~っ!


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