雨と緑
雨が降っていた。
俺はまた、この場所で立ちつくしている。
彼女と、初めて会ったのは原っぱ、ではなく学校だった。
小学校一年生のクラスメイトだったからだが。
原っぱで一人で遊んでいる時だった。
向かいにあった家の窓がふいに開いた。
そして、彼女が顔を出した。
虫捕まえてるん?
ならクワガタいる?
貰う!
俺はそう答えて彼女からクワガタを貰った。
翌日、勉強に誘われて、彼女の家に行くことになった。
そしたら彼女のお祖母さんが居てお茶とお菓子を用意してくれた。
この子が男の子連れてくるなんてね。
お祖母さんはニヤニヤしながら去っていった。
今思えば、子供相手に何言ってんだかって感じだな。
勉強はすぐ疲れたので一時間ぐらいで帰って
それ以降はこの家には立ち寄らなくなった。
クラスで同じ班になったとき、
ちびごりこちゃん、というアニメの話をしたこと、ぐらいしか覚えてないけども
あの子は間違いなく俺と友達だった。
それから4年。
小5の時にまた同じクラスになったが、話すことは一度もなかった。
彼女は小5の冬、この町を離れた。
お別れの話を彼女がしたとき、彼女は泣いた。
この町を離れること、友達のいないとこに引っ越すことへの、悲しみ。
俺には憶測でそう思うことしか出来なかった。
俺は別れの言葉一つ言えず、下校する彼女を見送った。
そして最近知ってしまった。
彼女が住んでいた家が、まだそこにあることを。
表札がくり抜かれ廃墟と化した家屋をみて。
言えれば良かった、という、
後悔と、罪悪感に苛まれながら
俺は幼い頃に別れた友人の家の前で一人静かに泣いた。
涙はなく、声もなく、ただ雨だけが、
静寂の中で響いた。
...
目が覚めると、見覚えのある部屋に俺はいた。
ここは、俺の部屋だ、と思う。
思う、というのはどこか違和感を感じる。
「気がついた?」
少女が僕の顔を覗き込んでいた。
見たところ小学生ぐらいと思う。
「君、誰?」
「ボクはボク」
「いや、君の名前を聞いてるんだ」
「だからボクはボクだよ」
「そういうキミはなんて名前なの」
「俺は俺だ、そうじゃなくてちゃんとした名前があるだろ」
「うん、ボクはボク、キミはキミ」
「キミはキミって、あれ?」
どうしてだ、自分の名前が思い出せない
「ココでは名前なんて意味を持たない」
「何いってんの?」
「ボクの家の前で君は倒れていたんだ」
「いやここ俺の家だし」
「普通、ここに来れるニンゲンなんていないんだけどな」
え?
ますます何をいってるのかわからない?????????
「深く考えないほうがいいよ」
これ以上は、わからないことを考えるのは不毛だ、と少女はいった。
「とりあえずキミはこの部屋を自分の部屋だと思って使うといいよ」
「わかった」
矛盾だらけで納得いかないことが多いが、そう答えた。
あたりをみまわしてみると、やはり何かおかしい
反対だ、全てが反対になってる、本もドアの向き、窓も
今は考えないほうがいい、彼女のそんな言葉が頭に響いた。
雨、まだ降ってたんだ、夜も遅いもう寝よう
「おやすみ」
そういい残して少女は部屋から出て行った。
うん、おやすみ、、、俺は静かに意識を閉じた
・・・
ここで目を覚ますのは二度目だ
あたりには少女はいないようだ
おかしい
時計を見ると時計が0時を指したまま止まっている
この部屋には三つの時計があったが。他のすべての時計もそうだ。
「無駄だよ」
不意に後ろから声をかけられる
「えっ?」
まるですべてを見透かしたような瞳で少女はこちらをみていた。
「ここでは時間の概念なんてあってないようなものだから」
と少女は続けた。
「わからないことが多すぎる」
つい、そんな声を漏らしてしまう、先刻少女に考えないほうがいいと促されたが
俺はどうしても納得できる答えがほしかった。
「窓、覗いてごらん」
「窓?」
言われるまま覗いてみる、外は雨が降っているようだ、街灯は消えているようだった
そこに、奇妙なものが映し出されている、影?
影が動いていて、それがそこらかしこで蠢いている
いや、こんなことが現実にあるのだろうか?
「あれ、ニンゲンなんだよ」
「えっ」
驚いて声が漏れる
「ちなみに、この世界であの影に触ると取り込まれて死ぬから気をつけて」
「この部屋には基本的に影は入ってこないから、一番安全な場所なの」
信じられないようなことを少女は淡々と告げた。
「でも、ここは結構便利なんだ、お腹もすかないしのども渇かないから」
「そのうちどうでもよくなってくるからキミもここの世界にすんじゃいなよ」
「もう一人じゃないならボクだって寂しくないからさ」
そう言った少女は懇願するような目でこちらを見た。
そんな目をしないでくれ、でもちょっと待て
「さっき影に触れたら死ぬっていってたよな?」
「そうまでしてここにとどまるメリットがあるのか」
少女は答える
「そういったこともどうでもよくなる、それがここだから」
なんて理不尽な場所だ!!
「やってられない、俺はもとの場所に帰る」
その時ひとりでにドアが開き影が入ってきた。
「おい、影はここにはこないんじゃなかったのか」
「基本的にはね、でもおかしいな、この部屋いつも誰もいないのに」
「ここは俺の部屋だぞ」
「そうなの?」
「おかしいな?」
「影が入ってこないからボクの部屋にしたんだけどな」
うーん、と少女は唸りながら考える
「ここは俺の部屋だよ、間違いない、家具とか時計の針が反転しているのはここが異世界だからと思うことにする」
やや興奮気味で俺は言った
「その話はあとあと、気をつけて影が近づいてくるよ」
少女に注意をうながされながら、俺は冷静に考えてみた、
ここでテンパってしまうとさっきのように意識を強制的に閉じてしまうことになるからだ
。
考えないじゃない、迷わないことが、この世界で自分を保つ防衛手段だと理解した。
だとすれば、ここが俺の部屋ならあの影はお袋だ。
だったら行動は予想がつく、基本この部屋に立ち寄ることはない、
来るのはゴミの日ぐらいだ、ゴミはいつも自分で捨てにいってるから勝手に部屋に入ってきたんだろう。
とりあえず少女の手を引いて押入れの中に避難する。
「ちょっと」
半ば強引に手を引いたので少女は思わず声を上げた。
しばらくすると影は空になったゴミ箱を残して部屋から出て行った。
「なぁ、ここ時間が流れないんじゃなかったのか?」
「そんな、ハズ、、、」
少女はきょとんとしている、強い動揺をしているようだった。
少し腑に落ちない、今までここで暮らしてきたといっていたのに、なぜ?
だが、
「これで間違いなく時間は流れていることが証明された」
だったら俺は早くここから出たい、ここは気持ちが悪い
あんなわけのわからない影に巻き込まれて死ぬなんてごめんだ
「ここから出る方法を教えてくれないか」
俺は少女に尋ねた。
「わかった、じゃあまずボクの話を聞いてほしい」
俺は静かに頷いた。
・・・
「ボクももともとは向こうから来たニンゲンだったの」
「でも、出口をみつけられなくて戻れなくなった」
「そのうち自分が誰かもわからなくなった」
「年をとることもなくなってしまった時間が動かないからね」
「でも時間が動かないのはここだけで向こうの時間は動いていた」
「これは推測なんだけどボク達の意識だけがこちらの世界に飛んでいる」
「俗に言う幽体離脱みたいなもんだと思う」
「そのベッドから微かにキミと同じ気配がする、たぶんだけど、キミ本体はそこにいると思う、でも、キミの意識がこっちにきているから、だからこっちにキミ本体自身の影が無いのだと思う」
「いや違う」
「ボクは今まで、ずっとここに居た、ここには影が居なかった、つまり」
「キミやボクにはたぶん影が無いんだと思う、そういうヒトじゃないとこっちの世界に来れないんだと思う」
「たぶんここからでるには自分自身を思い出さないと出れない」
「その為にはこの世界で自分の記憶にまつわるものを探さないといけない」
そう静かに言う少女の目は少しかなしげな光を宿していた。
「本当はここでずっとキミといたいけどもキミが望むならボクにも手伝わせてほしい」
確かな意思があった、彼女は心のそこから俺の力になりたいと思ってくれている、だったら
「だったらキミの記憶も探そう」
俺は彼女の手を握ってそういった。
彼女はこくり、と頷いた。
・・・
巨大な塊のようなものが窓の外に見える、みれば影が集まって増大しているようだ。
やがて、軽4ぐらいの大きさになって丸みを帯び、ぐるぐる渦巻いている。
「影はニンゲンの影だろ、どうなっている?」
考えが甘かった、よもやこうまで切迫した状況になるとは思っていなかった。
俺は少女に協力を頼み記憶を取り戻すためのモノを探すことにした。
だが、意識を強く持てば持つほど頭痛が激しくなり、
その痛みを楽にしたいと気を抜くと、記憶が消えていく、
とくに最近の記憶と大昔の記憶がわからない。
俺が思い出せるのは最初に目覚めた場所が自分の家に似ていること、だけ。
ここで俺が知ったことは、この部屋が自分の部屋で、誰もいないから少女が住んでいたこと。
だが、この家に手がかりとなる物はなかった。
写真たてなどがあったが黒塗りになっていてわからない。
何を見落としているのだろうか。
外にでるか?いやきけんだ。
どうにか中で過ごすしか、、、
・・パリン
破滅の鐘が鳴り響いた。
「なんだ!?窓が割れたぞ!!!影が入ってくる!!!」
中にいれば安全だと思っていた、しかし、影は窓のほうに集まってくる
ここからは命を懸けてすすまなければならない。
この世界に詳しいはずのあの少女も、今はいないのだから
急ぐぞ、この部屋からでる
ドアを開けて俺は飛び出した、ここは2階で階段がすぐそばにある。
勇み足で階段から飛び降りた瞬間1階の廊下からも影が集まってきていた。
振り向いて2階の階段を見てみると既に2階の窓から影は侵入してきていた。
その影がゆっくりと階段の上から追いかけてきている。
「くっなんで俺をおいかけるんだ」
近くにあった窓を開けようとしたがどれだけ力をこめても開かない
仕方ない強行突破する
俺は1階の窓を叩き割って廊下から脱出した。
そして気づいた、ここは俺の家だが今はあるはずが無い建物が
たっている。
ひとまずここに逃げるしかない
俺は夢中で駆け出した
命からがら建物に入った。
影は入ってこない。
なぜかはわからない
そしてこの建物には、不思議と懐かしいと思うものがあった。
おもちゃ?だよな。
これ!?
それはクワガタだった確かに。
ただ生き物ではなかった色がありえない。
エメラルドのような光沢の体に金属的な眼。
どうやら置物のようだが、
ちなみにニジクワガタではなかった。
あごの形が違う。
「うん、どうして俺は虫の名前なんかしってるんだ?」
置物のクワガタを手に取った、その瞬間クワガタは消滅してしまった。
そして、、思い出した。
「マジかよ、ここ取り壊した離れやん」
離れは子供のころ秘密基地にしていた場所だった
そしてクワガタ
そうだ俺は
「あの子の家の前に居ったんや」
そして気を失って気がついたらここにいた。
「見つけてしまったんだね」
いつの間にか後ろに少女が、いた
そしてこの離れの周りを取り囲むように影がにじりよってきていた。
「ゆかりちゃん?」
「久しぶりだね」
10年前にひっこしていったあの家の子供
それが当時の姿のままでいる?
ぞっとして、飛びのく、
「よく気づいたね」
「ボクはゆかり、だけど君が知っているゆかりとはちょっと違うんだ」
「用件を言おう、死んでくれないかな」
彼女は笑顔でそういった
「キミを殺す」
「殺してしまえば永遠にボクのものだからね」
影が彼女の周りから離れ俺にじりじり近寄ってくる
「俺は、まだ死ぬわけにはいかん」
未練があるんだ、それだけは残すわけにはいかない
襲いくる影を次々にかわし走り抜ける
「ゆかりっ!!」
懐に飛び込む
「ボクをなめるな!!ここまで突き進んできたことはほめてやる、だが無防備でここまで来たこと、後悔させてやる!!!一撃で終わらせてやる」
影が集まって彼女の手に漆黒の刀が形成されていく、
あれはやばい、くらえば絶命はまぬがれないだろう
だが、きっともう手遅れだ、さっき走った時に足を挫いている、この体制で彼女の攻撃を避けることはできないだろう。
振り下ろされる刃をよけようとはしなかった。だけどせめて一言だけ
「君を、あいしてる!!」
言いたかった言葉はこれだったんだ。
もういいや、影が俺を包んでいく、そして眠りにいざなうのだろう。
「あ、あい?」
ゆかりの動きはとまった。
「きみにあえてよかった。ありがとうゆかりちゃん」
「ボクはキミを殺そうとしたんだぞ、その相手に礼をいうの?たくさん騙した、影が生きている人間だとか、捕まったら死ぬとか」
「え?」
「そうやって勘違いさせて動揺を誘ったの、あの影はニンゲンの死霊と生霊なの、そしてあなたの生霊がゆかりの死霊を私に変えた、そしてあなたの能力になった」
「どういうことだい?」
「今晩はここまでしか言わない、あなたを休めることが今は大事、ほんとうにごめんなさい、もうあなたに危害を加えたりはしない」
そして彼女は消えた。
わたしも愛してる、と言い残して。
いや、消えたんじゃない、もとに戻ったんだ。
この世界が。
雨があがっていた。
俺はゆかりの住んでいた家の前に立っていた。
「フンっ自分の能力に喰われかけるとはな!」
いきなりフードの男が現れた。
「お前の動きは見ていた。俺と来い」
・・・
「俺の、俺だけの彼女」
「聴きましたか奥さん」
「ええはっきり」
「何でもニ-トとかいうのが今はやっているそうですね」
「ええ、何でも政府にサイバー攻撃を仕掛けて交通機関を麻痺させたとか」
「あそこの家の息子さん変じゃありませんか」
「何でももう10年は引きこもっているとか」
「たまにさっきのような叫び声が聞えてくるんですよ」
なんかブツブツ独り言が聞えてきたり
「ああいうのがニートって言うのザマスね」
「ほんまにこの国はどうなるんやろなー。で、何でみんな標準語でしゃべってんの?」
「おばちゃんは世間話するときは標準語で話すもんや」
「ちゃうやろ?漫画好きのおばちゃんらが、合わせてるだけやろ?」
「バレたか、でもおばちゃんも、たまに標準語しゃべるで」
「まぁええけど、そのニートの話詳しく聞かせてくれへん?」
男はニヤリと笑った
・・・
ブルブル・ぶぶる・ぶる
不意にマナーモードにしていた電話が振動していた。
誰だ、と思いながら僕は受話器をとった、非通知
「はい」
「久しぶり雷真」
「八紙?例の能力者の件?」
「ちゃうよ、あいつを見つけてん、あいつなら情報なんてすぐ引き出せるわ」
「わかった八紙、やつは僕が行くよ、引き続きお前は他の能力者の情報を頼むよ」
「了解、こんど飯おごれよな」
八紙から受け取ったデータを元に俺は情報処理能力者の場所を目指した。
電気街、、日本橋か。
・・・
フードの男と青年は対峙していた。
「お前に仕事を依頼したい、ネイツとしてのな、お前にはその資格がある」
ネイツとはニートの集団で国家を混乱させているテロリストだ。
最近は極秘裏の討伐部隊に狩られ数を減らしたと聞いている。
「10年前のことは隠蔽されていた、公式ではある一家が引っ越した、ということになっていたが、実際は、虐殺だった、何でも娘の能力がヤツらにとって厄介だったらしい」
「兄貴どうして隠していた」
男はフードを外した
「フッ俺のことはお見通しか、雨影、知らないほうがいいこともある、だが能力が覚醒したとあっては別だ」
だめだ、怒りが収まらない。
「照光ー!!!!」
・・・
雷真は困惑していた、情報能力者がわけのわからないことを言い出したからだ。
「ゆかりたん萌え~」
「いつまでらりってんだ」
ボカン、とぶん殴る
「ゆかりたんをバカにしたなぁ」
がいつもこの調子だ。
いったんスルーして話を進める
「どうだ?」
今は彼が操作しているPCから例の能力者、緑川兄弟の様子を伺っていた。
能力者を視聴する能力が情報能力者、明正の能力だった。
「あの能力やばいでおじゃるよ、ゆかりたんのほうは即死能力と呪い能力でごじゃる、
あんな能力で攻撃されたらただじゃすまないでござるよ」
「呪いって?」
「能力を弱める力でござる、身体的な能力もボキ達の持つ超能力も半減でござる」
「それは怖いね、仲間にはできそうにないかな」
「そしてあの男の能力がもっと厄介にしているでござる、
あの空間はニンゲンの様々な感情が雨となって流れているでおじゃる、
雨が触れた対象の能力を封印してエネルギーに変える能力でごじゃる、
さらにそのエネルギーを空間にいる能力者に与えることができるので、
ゆかりたんの能力がさらに向上するわけでごじゃる、
ボキは男には興味ないでおじゃるが雨影氏の能力はゆかりたんのための能力でおじゃるなぁ」
・・・
道路標識が反転して雨が降りだした。
「ゆかり頼む」
「わかった」
先ほどと同じ黒い刀身が照光を狙う
すんでのところで照光は攻撃をかわした、が雨と影が彼の能力を奪っていく
「チっ覚醒したてで、この力か、なるほどな、それがお前の能力か、暴走前よりはマシにはなっているな、だが、やられるわけにはいかないんでな」
照光は祈った、そして叫ぶ
「アンチ・フィールド」
その瞬間に雨とゆかりは消えて、もとの世界に戻っていた。
「俺は空間を壊す能力者だ、物理的なものは無理だが、超常的な空間は破壊できる」
「そして、リバース・レインと名づけようか、お前の能力は強すぎる、空間能力者でこれ程の能力など、よっぽどの境遇じゃないとここまでの能力を身につけることなどできなかったろう」
少し間を置いて照光は話を続けた。
「そうなるまでほうっておいたのもすまなかったと思っている、だが次は精神力を鍛えなければまた飲まれるぞ、今回お前は暴走しなかったのは、その少女への想いが一途だったからだろう、次に暴走すればお前を処分しなければならん」
弟を諭すように照光は言う。
「だが安心しろ鍛えればまだまだ強くなれるだろう、仇をとりたくないか?彼女を殺した奴等に」
雨影は無言で頷いた。
「カタリ機関、ヤツラを消さなければこの国に真の平和は訪れん、お前の能力を貸してくれ」
「悪い少し考えさせてくれ」
・・・
「ちなみにボキは最初からゆかりたん目当てでみてたでござるよ、雷真」
「明正は無駄なことに能力を使いすぎだよ」
「でもボキたちは」
「それ以上は言わなくていい」
僕たちのような能力者は一般人から見ればただの変人奇人の類でしかないのだから
「ネイツが絡んでくるとはね、緑雨影か」
雷真は不敵に笑った
「彼なら止められるかもね」
ネイツがカタリを潰してくれるなら願ってもない事だ。
多かれ少なかれネイツには助けられている、だが、共倒れしてくれれば一番いい。
俺たち電波少年にとってはな。
ネイツもカタリもなければ誰も悲しみはしなかったろうに。
「カタリ、ネイツ、駒は揃った、あとは潰しあってもらおうか」
・・・
そして雨影は原っぱに来ていた、小さな石を積み重ねて花を添えている。
そこに彼女の墓を作った。
「リバース・レイン」
そして雨を降らせた。
「今まで悪かった」
「ううんボクのほうこそ君を傷つけてごめん」
「俺はもっと強くなる、そしていつか、カタリの豚どもをひきずり降ろしてやる、そのためにチカラを貸してくれないか?」
「もちろん」
俺はそっとゆかりにキスをした。
今は、今だけは復讐を忘れて彼女に夢中になっていたい。
辺りを雨が優しく包んでいる、二人を祝福するように。
これからはどこまでも二人は一緒だ。