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1000字小説まとめ  作者: 八海宵一
9/25

本の番

 あのさ、「本の番」って知ってる?

 簡単にいうと、深夜、図書館の見回りをする仕事なんだけど、べつに侵入者が入ってこないように警備をしたりとかじゃないんだ。どっちかっていうと逆で、「脱獄囚」が出て行かないように見張るのが仕事で……。

 え? 図書館に「脱獄囚」なんていない?

 そっか、これも説明がいるかな。「脱獄囚」ってのは、本に印刷された活字のことなんだ。コイツら昼間は大人しくしてるんだけど、夜になると活動しはじめるやっかいなヤツで、とくに古かったり、堅苦しい本の活字ほど、ジッとしててくれないんだ。『失われた時を求めて』の「を」や、『罪と罰』の「ラ」と「ド」、『教養講座6 言霊信仰とシャーマニズム』の「故」(とくに192ページ3行目のヤツ!)は常習犯で目を離すと、すぐその本から抜け出そうとするから、気をつけて見張らないと大変なんだ。

 油虫みたいにカサカサ動くし、ほとんどのヤツらが黒いから一度本から逃げ出すと、見つけて元に戻すのに、悪いときだと明け方ちかくまでかかったりして。

 え? うん、見つからずに、そのまま、開館するケースだってあるよ。

 どうしても『日本書紀』の「雷」が見つからないから、先輩に相談したら、

「探しても見つからないんなら、“脱字”ってことにしておけば?」

 といわれて、妙に納得したり……。

 あの様子じゃ、絶対、どっかに紛れこんだ“誤字”もあると思うけど……、これは内緒にしといてね。

 まめに燻蒸や、虫干ししてるんだけど、あまり効果がないから、いまだに「本の番」たちが一冊一冊、悪さをしないように活字たちを見張ってるんだ。

 深夜の図書館を、懐中電灯片手に。

 時給は…720円だけどね…。

 よかったら、君もやってみない?

 先輩に口きいてあげるよ。

 あ、それから、市立中央図書館で“誤字脱字”があっても、あまり騒がないでね、こっそり、戻って来るヤツもいるから。

 うわ、そろそろ戻んなきゃ。

 コンビニのバイトも大変でしょ? これで、缶コーヒーでも買いなよ。

 いいって、いいって、深夜バイトの辛さはわかるから。

 ま、お互い頑張ろうよ。

 じゃ、またね。


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