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1000字小説まとめ  作者: 八海宵一
22/25

茶柱

 リビングのパソコンで就活をしていたら、お袋が熱い日本茶を淹れてくれた。

 のぞいてみると、茶柱が立っていた。

 こりゃあ、幸先がいい。

 オレが内心喜んでいると、むかいのソファーでテレビを見ていた親父が湯呑みを見つめ、

「ワシ、長澤まさみと、どうにかなるかもしれん……」

 と呟いた。

 茶柱だった。

 そしたら、お袋も、

「あらあら、わたしもクイズの懸賞に当たるのかしら」

 とそわそわしだした。

 言わずもがな茶柱。

 それぞれが、それぞれの夢を膨らませていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。

「ちはー、宅配便ですー。お荷物お届けにまいりましたー」

 札幌の叔父からだった。

 クール便で届いた発泡スチロールの箱をお袋が開けると、大きなカニがぎっしり詰まっていた。

「……カニか」

 即座に、長澤まさみとカニを天秤にかけた親父が、残念そうに天を仰いだ。

「あらあら、茶柱はカニだったのね」

 シュールなセリフをお袋が吐く。

 茶柱=カニ。湯飲みの中に浮いているのは、カニである。

 嘘である。

 と、バカなことを考えているうちに、3人の茶柱は、すべて叔父のカニということになってしまった。

 いやいや困る。それは困る。

 オレは日本茶を一気に飲み干し、すぐにおかわりをした。

 茶柱が立っていた。

 お袋は茶柱名人か!?

 湯飲みとお袋を交互に見ながら、その茶柱率の高さに戦慄していると、新聞受けになにかが配達された。

 封筒だった。朱書きで内定通知とある。

 茶柱、フライング。

 面接受けてないのに、内定出してどうするよ?

 一応、封筒にプリントされた社名を確認してみたが、まったく見覚えがなかった。だが内定通知には、たしかにオレの名前が書かれていた。

 複雑な顔でにらめっこをしていると、親父が脳天気な声でいった。

「めでたいじゃないか。茶柱のおかげだな」

「本当ね。茶柱からの素敵なプレゼントね」

 いやいや、いくらなんでもおかしいだろう……。

「オレ、こんな会社知らないよ」

「……」

 さすがに黙りこむふたり。だが、親父は切りかえが早かった。

「面接受ける手間が、はぶけたじゃないか」

「なるほど……って、あのねぇ」

 オレは慣れないノリツッコミのあと、たっぷり親父を非難したが結局、その会社に入社した。泣く子と不景気には勝てぬ。こうなったら、手違いだろうがなんだろうが利用しない手はない。そう思って入社した。

 で、わかったことが一つある。


 茶柱はカニだった。

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