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大嫌い  作者: ゆや
5/8

05

双眼鏡で、友達らしき女と話している出は実に可愛い。なんて可愛さだ。アホ面でグ○コポーズやっているその姿でさえ可愛い。

「恋は盲目ッスね!」

隣で、スナック菓子を食べている百合沢が、僕の行動を見てそんな事を言った。遠回しに、あんな人恋愛視出来る方が難しいと言われている気がしてならない。

「ところで、百合沢」

「はいッス!」

「君、僕を差し置いて出とお喋りしたらしいね」

「いやぁ自分、真柴さんと同じクラスなもんで、今週は真柴さんと週番ッスから」

色々と探りいれられますと言われ、出の情報は一つでも多くほしいからなんとか我慢する。本当は百合沢をタコ殴りしたいが、出が百合沢に無駄な心配を掛けるかもしれない。そこから始まる恋愛だってある。なんとしても阻止したいものだ。

「それじゃあ、一先ず、誕生日と家族構成を聞いてきてください」

「わかったッス!」

素直な百合沢は、放課後になるとクラスに戻って行った。…後を追い掛けて、こっそりと廊下から会話を盗み聞く。

こんなストーカーみたいな行動は初めてだ。だがしかし、少しの間だけでも出の声が聞こえると思えば幸福な時間だ。

「真柴さん、真柴さん!」

「ヘイ!カストニーニョ!」

「相変わらず意味がわからないッス!」

カストニーニョってなんだ。どういう意味だ。これは勘でしかないが、適当に言ったんだろう。そんなアホな出も可愛いぞ。

「真柴さんの誕生日っていつッスか?」

「え?んー…8月の2日」

よく考えてみれば、出は入と双子なんだから、誕生日が一緒だ。知ってたよ俺、…おっと僕。そういえば、あの双子はあまりに似ていない。二卵性といえど似るはずなんだが…。きっと良いとこの遺伝子全部、入に行ったんだろうな。

「あ、自分と誕生日近いッスね!自分も8月の7日が誕生日ッス!」

「おぉ。近い」

「自分の誕生日って忘れちゃうんスよねぇ」

忘れんな。

「わかるわかる!」

出もか。一人暮らしらしいから、きっと日にちの感覚とかなくなるんだろうな。暑かったら夏。寒かったら冬。ちょうどいい気温が、秋か春かのどっちか。とかアバウト過ぎるか…。

「そういえばさぁ、百合沢ってハーフなの?」

「えっと、アメリカ人の血が八分の一入ってるッスけど、もうほぼ日本人ッスね」

「へぇー。茶色い髪って天然?」

「天然ッス。自分もお気に入りの髪ッスよ」

「ところで百合沢さぁ、隣のクラスの七倉さん知ってる?」

「知ってるッス!なかなか可愛い子ッスよね」

どうでもいいから早く日誌に手を付けろよ。なんで二人でお喋りして時間潰してんだよ。思わず百合沢に嫉妬の籠った殺気を放つが、天然で鈍感な百合沢は気付く事はない。

「メアド交換しよーって言ってた」

「え、マジッスか。自分にも春が来たんスね!」

「百合沢君の脳内は年中満開の桜が咲き誇ってると思うよ」

それは遠回しに、百合沢をバカにしてる。

「そうッスかね?自分の頭の中は常にひまわりが咲いてるッス!」

自分がバカだという事を肯定しやがった!

「ちょっと隣のクラス行ってくるッス!」

「あ、うん」

百合沢は教室を出る時、こっちを見もしないで隣のクラスに行ってしまった。七倉という女がまだ居たのか、微かに笑い声が聞こえてくる。

多分、今週百合沢と週番に当たっていた出に、「百合沢と仲良くなりたい」とでも言ったのだろう。まさか百合沢がすぐに行動に移すと思っていなかったのか、一人残された出は茫然としていた。

「…………………マジか」

あり得ない物を見たといった感じの声を絞り出した出は、一人で日誌を書き始めたようだ。

カリカリと一定のリズムで書いている出は、急に手を止めたらしい。らしいというのは音だけしか聞いていないからだ。廊下に居る僕は、出が居る教室のドアに耳を当てて聞いていた。たまに通り掛かる人間には奇怪な目で見られるが、そこは自前の睨みを利かせればすぐにどっか行った。

「………実家、帰りたくないなぁ……」

実家?

出の実家というのは入が居るはずだ。一度だけ、あの親友達と一緒に入を送りに行った時に行った、あの家か。

「実家帰ったら、まぁた見合い写真見せられるんだー」

きっと両親は出の嫁ぎ遅れが心配なんだろうが、そんなのはまず僕が許さない。

しょうがない。外堀から埋めていって、出が逃げられないように雁字搦めにするか。とりあえず、非常に嫌だが入から攻略するとしよう。










その日、入に連絡を取って会う約束をした。それには三人の親友達も付いてきたが、いつもの事なので気にしない。

「入に話があります。あなたの双子の妹の事なのですが…」

「………」

「………」

「………」

「………」

だんまりを決め込む四人は、驚きのあまり目を見開いて僕を見入る。

その反応は、予想の範囲以内なのでこっちは驚く事はない。

「聞いてますか?」

こくりと同時に頷く四人は、指を差してくる。それに対しても無視して話を進める。

「僕は彼女を愛してますので、僕の事をこれから義兄さんと呼んでください」

「いやああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」

近所に入の雄叫びがこだました。


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