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悪行を働いた女

私は家を抜け出した。

今は夏休み真っ只中。

ここは海沿いに鉄道が走っている。

いいロケーションをしているため、多くの人が訪れる場所でもある。

しかし今日はやけに人が少ない。

これからイオンに行く。

道中は。これでもかというほど長かった。

ああ、いっそのこと寧々に取り憑かれていたら道中は楽しかったんだろうな。

一歩が重たい。

イオンに着いた。

プリクラへ行く。

今日はゴミどもはいないらしい。

結局一度しか見ることのなかった宇宙人の様な盛り盛り顔の女だ。

プリクラの真緒に立ち尽くし、

摺り足で立ち去る。

電車に乗り、帰る。

学校に向かってみる。

夏休みのため、道中はひどく空いていた。

校庭では野球部やサッカー部が練習をしている。

今はまだ昼頃だ。

ゴミどもの姿が見える。

奴らは昼に部活が終わったらしい。

空は快晴だ。

しかしひどく濁っている様に見える。

濁っているのは私の目かも知れない。

また摺り足で踏切へ向かう。

脳内であの光景が反響する。

しかしもう何も思わない。

今から寧々のところに行くのだ。

しかしなぜこんなにも静かなのだろう。

誰もいない。いつもなら聞こえる騒がしい観光君のはしゃぎ声も、謎の言語も、撮り鉄の罵声も。

心音だけが聞こえる様な感覚がする。

ゆっくりと、落ち着いた様に鼓動する。

おそらくそれは、落ち着いてるというよりも、全てを手放し、諦めた様子と言ったほうが合っているだろうか。

もうなんでもいいや。

この道だっただろうか。

もうわからない。

でもまぁ、いいと思う。

私はあれから何をしていただろうか。

ここ半年、何も覚えていない。

行事は何があったかとか、何も覚えていない。


あれ、行き止まりだ。引き返そう。

歩いて歩いて、でもなぜか空の色は青いまま。

そう思ってるだけなのかも知れない。

いつまで経っても喧騒は聞こえない。

そう思ってるだけなのかも知れない。

ようやく踏切に着いた。

ああ、長かった。

踏切に入る。

電車が来る気配すらない。

私は踏切に立ち尽くす。

なぜだろうか。

もう一歩も動きたくないのだ。

電車はしばらく来ないらしい。

遠くを見つめる。

信号があった。

その信号はただただ赤色を示している。

太陽が真上にある。

12時らしい。



踏切が鳴き出す。

出なくては轢かれる。

しかし動く気にはなれなかった。

踏切の警報音が、ただ耳の中に響く。

遮断機が気だるげに降りる。

足元が振動している。

まだ警報音が鳴っている。

心拍数が上がる。

私は線路内で、ただ真っ直ぐ、前を見つめていた。

寧々がいる。

制服を着たままの私と、制服を着た寧々が立ち尽くし。

不揃いのスカートが揺れる。

透明な君はただ私を指さしている。

後ろからけたたましい警笛の音が聞こえる。

ブレーキを入れる音も。

警報音が遠のいていく。

やがて意識を手放した。






遮断機の赤い灯りと、紅い椿と、地に広がった

電車の下に敷かれた紅いカーペット。

その紅の中で、信号だけは

青を示していた。

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