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彼女は手段を選ばない〜婚約破棄?NO!推し活&ヒロインを魔王の生贄にするのでご心配なく〜  作者: 降魔 鬼灯


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ダリオン殿下のコンプレックス

 婚約者が決まった。ロザリモンド・バルタイン公爵令嬢。

 その名を聞いた途端、俺は頭を抱えた。


 ロザリモンド・バルタインだけは駄目だと、彼女以外なら誰でも良いと言っていたのに。

 結局、押し切られてしまった。あの女一体どんな手を使ったんだ。


 俺は、あいつが嫌いだ。奇しくも同じ日に産まれたせいで、首が座る早さからハイハイ、伝い歩きに至るまで赤ちゃんの頃から比べられまくって、連戦連敗を期してきた。

 その上魔力量、学力、権謀術数、全てにおいて俺より遥かに優秀ときたものだ。


 くっそう、この婚約もどうせ汚い手を使ったに違いない。


 あいつさえいなければ。何度思った事か。それが政略結婚の相手?


 俺のコンプレックスの元凶が今日やって来るらしい。


 絶対に会いたくないし顔も見たくない。俺は策を巡らせた。



☆☆☆☆


 気位の高い令嬢であれば、怒って帰るだろうと指定した小汚くホコリまみれの執務室横の物置。

 椅子もなく茶の一つもない。そんな所に小一時間ばかり放置してやった。

 もう帰っているに違いないと思いながらドアを開くとそこに妖精がいた。

 

 社交界の貴婦人たちのようなきついメイクも香水の香りもなく、微かに薫るやわらかな花の薫り。


 若草色のゆったりとしたドレスにくるくると綺麗な巻き毛の髪を結い上げることもなくそのまま流したお人形のような可愛らしい少女が優しく微笑む。


 なんだこれは、くそ可愛い。子供の頃から何度も夢に見る理想の少女がそのまま大きくなったような姿。いや、俺の理想以上に美しさと愛らしさが強烈に増している気がする。

 これはいかん。ただでさえ高すぎる俺の理想が一気に引き上がる。

 理想を遥かに超越した存在に目が釘付けになった。


 しかし、完璧なカーテシーに鈴を転がすような声 

「ダリオン殿下、ロザリモンド・バルタインでございます。」


 何だと。貴様があのロザリモンドなのか。ふんっ。それが例のマナー教師たち絶賛のスキルか。


 残念だな。いくら、妖精のようにくそ可愛くてもあの悪女ロザリモンドなど、好きになれるわけなどない。俺は騙されるものか。


 比べられ煮え湯を飲ませられてきた屈辱を思い出せ、俺。そうだ貴様なぞ、大嫌いだ。


 俺は大丈夫だ。この女が、死ぬほど嫌いなんだ。思い出せ、俺。あの屈辱の日々を。冷静になるんだ。


「ダリオンだ。」

 仏頂面でぼそりと呟いてやった。


 ふんっ。どうせ俺は貴様に無様に負け続けるんだ。マナーがなんだ。さっさと憤慨して帰れば良い。


「まあ、ダリオンとお呼びしてもよろしいのかしら?ありがとうございます。私のことは、どうぞローザと呼んでくださいませ。」


 しかし怒るどころか、彼女は頬を薔薇色に紅潮させて、潤んだ碧の瞳で俺を見上げてきた。  

 その瞳から目が離せない。ロザリモンドは俺の敵だ。何度も比べられてきた屈辱を思い出せ。

 理性を総動員する。しかしなんでこんなに、きれいな肌なんだ?透明感があって、透き通るようだし。いかん。目を逸らせ。

 胸の谷間が……。ダメだ。もっと下を。腰細いな。コルセットを使わないエンパイアドレスなのに。いやだからこそ。ダメだ。こいつはあのロザリモンドだ。

 なんでこんなにクソ可愛いんだ。


 心臓がバクバク音を立てる俺は、ローザと呼ぶ事しか出来なかった。


 負けてなんかいないぞ。国一の権力者の令嬢を一時間立たせた挙句、呼び捨てにしてやったんだからな。


 それにしてもダリオンか、なんだか新鮮な響きだな。ローザ、なんて可愛い。

 いやいや、見た目に絆されるな。こいつの今までの所業を思い出せ。

 こいつの目的のためならば手段を選ばないやり口に何度煮え湯を飲まされた?


 この婚約だってそうだ。気がつけば巧妙に外堀を埋められての結果だろう。正気に戻るんだ俺。

 他の誰もがこの女を崇めても、俺だけはこの女を崇めたりなんかしないんだからな。名前なんて愛称で呼び捨てなんだからな。


「ダリオン、私以外の女性を愛称呼びしたら、メッですわよ。約束を破ったら、ハリセンボンノーマス。」


 ローザのちいさな白い小指が俺の小指を絡め取った。くるんとしたまつげに縁取られた潤んだ瞳で見つめられて。


 なにやら可愛すぎる呪文を唱えるピンクの唇がふっくら艷やかで。さくらんぼみたいだ。


 真っ白なほっそりとした指。長いまつげ。うるうるの瞳。唇が耳元に触れそうに近い。

 耳元で囁かれる甘い吐息混じりの声。

 

 全身がカアーッと熱くなる。


 ローザの全てが可愛すぎて、それからあとの事は覚えていない。





 正気に戻ったのは明け方。大量に溜まっていた書類を処理し終えた後だった。


 そのまま鍛錬に向かい、精神を整え身体を鍛えあげた。次回面会は2週間後。


 少しでも精悍に見えるよう、鍛えるぞ。


 だが、言っておくが。ローザの事が好きになったわけではないからな。ヤツのような悪女は俺の監視下に置かねばならないだけだからな。

 他の貴族に嫁がせるなんて危険だ。俺が責任を持って引き受けねば。


 次は一ヶ月後か、うんざりするほど長いな。


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