27.ダリオン
笑顔で部屋を見回していたロザリモンドがいきなり真っ青な顔で崩れ落ちた。
咄嗟に手を差し伸ばすダリオンにロザリモンドは力なく首を振った。
「駄目だわ。運命は変えられない。こうなったら、婚約を解除するより他はないわ。」
震えながらつぶやくロザリモンドをダリオンは呆然と見つめた。
この婚約は政略だ。だから安泰なのだとあぐらをかいていたのは自分だ。
彼女に面と向かって一度でも会いたいと言ったことがあっただろうか?一刻も早く結婚したいと、離れたくないと、ずっとそばにいたいと本音をさらけ出して彼女と腹を割って話したことがあっただろうか。
そう、ロザリモンドとダリオンの関係は未だ、ただの政略上の婚約者に過ぎないのだった。
「ローザ、今、なにか言ったのかな?ごめんね。よく聞こえなかったよ。」
自分の心を自覚した途端に彼女に見捨てられるなんて、聞きたくないのに聞き返す自分が嫌だ。
聞くな。政略結婚なのだから、このまま知らん顔で押し通せば良い。
何も聞かずに無理矢理彼女を自分のものにしてしまえば良い。俺は笑えているか?
そんな俺を見る彼女の瞳にはいつもの笑顔はない。どことなく怯えたようなその表情に衝撃を受ける。
「解除」
彼女の口から出た、その二言に再び胸をえぐられる。
「一体何を解除する気なのかな?ローザ?」
お願いだ。俺を捨てないでくれ。
答えないロザリモンドに、ダリオンは心の奥底でどろどろとマグマのようにたぎる恋情に焦がされた。
もう駄目だ。俺のローザがどこにも行かないように捕まえるしかない。
警戒されないように精一杯の笑顔で近付く俺にロザリモンドが怯えるように後ずさりする。
どうしてなんだろう、ずっと敵わないと思っていたロザリモンドがやけにちいさく見えた。
ロザリモンドを捕らえるまで、あと一歩。
その時
『我が封印を解除したのはお前か?小娘。供物は何を寄越す?お前の魂如きでは足らんぞ。』
地を這うような恐ろしげな声が聞こえる。うるさい、邪魔するな。
しかし、その一瞬の隙にロザリモンドが召喚の呪文を唱える。
「我が元に召喚せよ、魔王。対価はそなたの花嫁。欲しければ今すぐここで跪け!」
バーン
強大な魔力を持つ美しい男がそこにいた。
ローザ、俺の次はこの男なのか?俺は現れたライバルを睨みつけた。




