23.アホーダ男爵がいない世界線
ロザリモンドはご機嫌だった。
あの事件の後、ダリオンの目覚ましい活躍で事件が解決した。
しかも、今回はアホーダ男爵の屋敷が燃えなかった為に証拠書類も押収できた。
すでに人身売買組織に売られてしまっていた少女たちも戻ってきた。
心の傷は治らないだろうが、『ツクヨミ』が見せた映像では、故郷に帰ることもままならず客死せざるを得なかった事を思えば最善であったと言わざるを得ない。
当然、アホーダ男爵は捕まったが、芋づる式にガランジ宰相とバトラー騎士団長も捕まった。当然ダリオンのお友達のふたりも。
事件自体も無くなったことを思えば、ダリオンとコリンヌの出逢いも無くなったということだ。
無事ふたりの出逢いを阻止したロザリモンドは達成感に浸っていた。
「ふふふ、勝ったわ。」
ロザリモンドは勝利を噛み締めた。ダリオンの幸せの為に、そしてロザリモンドの断罪防止の為に大きな一歩と言えよう。
今日は、なにかと忙しかったダリオンとの一ヶ月ぶりのお茶会だ。
迎えに来たダリオンが眩しい。
「ローザ、俺の女神、会いたかった。」
ギュッと抱きとめられた。ダリオン、近いわ。普通はここまでしないと思うんだけど。
この間、抱きしめられてからドキドキが止まらないのに。
コホン
「ダリオン殿下、婚約者とはいえ、いささか距離感がおかしいのでは?」
兄アズランが小言を言う。家族にこんなの見られるなんて。めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「アズラン殿、すまない。来週からは気をつける。今日は久しぶりだったのだ。大目に見てくれ?」
ん?来週?
「月一回のお茶会を週一回にしてあげたんだ。妹に変なことをしたらすぐに月一回に戻すからね。って、いつまで引っ付いているんだ?」
兄の頭に青筋が立つ。でも、どうしてなんだろう?彼らは仲良しだ。
「では、そろそろ出かけますか。」
ダリオンの手が私を抱えあげる。ん?
「ちょっと、ダリオン殿下。妹をお姫様抱っこはダメだろう?触りすぎだ。」
「アズラン殿、可愛いローザが転んだらどうするんです?」
「ぐっ」
いたって真剣なダリオンにあの兄が言葉に詰まる。まさしくぐうの音もでないとはこのことね。
「馬車が揺れるといけないから、この前みたいにこのまま乗ろうね。」
ロザリモンドはドキドキと高鳴る胸のせいでろくにしゃべれないまま、抵抗むなしく抱っこされたまま、王宮に連れ去られていったのだった。




